01.異世界転生
誰だろう。
誰かが僕を呼んでいる気がする。
だけど、あまりうまく聞き取れない。
僕は、妹がトラックに轢かれそうになったのを、助けて代わりに僕が轢かれた。
そうだよ。僕はトラックに轢かれたんだ。
なのに、なぜ声が聞こえる。
そうか。ここは、病院なんだ。
それで、安否を確認してるんだ。
声が聞こえるという事は、僕はまだ生きているはずだ。
腕には感覚はない、足にもない。
だが、顔の感覚はある。
僕は重たい瞼をゆっくり開けた。
だが、そこにあるはずだと思っていたものがなく、その代わりに、僕を覗き込んでいる、金髪の美少女がいた。
僕は、唯一動く頭を動かし、辺りをみた。
僕には足も腕もなかった。
「今日から君は私のパートナーになるんだよ。」
金髪の美少女が意味のわからない事を言っていた。
僕は口が動く事を確認し、こう言った。
「誰が、あなたのパートナーなんですか?」と。そしたら、
「喋った!」
「当たり前じゃないですか。人間なんですから。」
「何言ってるの?君はスライムじゃないですか。」
えっ。どうなってるの。これ。
「鏡見せてくれる?」
「わかった。はい。鏡。」
僕は渡された鏡を、見た。
そこに写っていたのは間違いなく、スライムだった。
まさか、これは、異世界転生ってやつなのでは。
異世界転生には、憧れたことはある。
人間なら、一度はね。
異世界転生するなら人間のままで、良かったのに、まさかのスライム。
俺がそう思っていると、
「スライムが喋るとこ見るなんて、生まれて初めて。」
「本当だよ。スライムが喋るなんてありえないですよ。」
「でも、君は喋ってる。」
「そういえば、僕があなたのパートナーってなんの話?」
「そうだ。私、君と契約したんだった。あのね、この近くの街の学校の生徒なんだけど、そこの学校で大会があるの。その競技祭はね、契約したモンスターとモンスターを競い合わせ、最後まで勝ち続けたモンスターが優勝というものなの。でね、私は君と契約したからその大会に出るの。」
「そんなの、無理ゲーだよ。君、勝つ気あるの?」
「むりげー?なんの事?でも、勝つ気はあるよ。」
勝つ気はあるらしい。
「そうだ。君の名前決めなきゃね。名前何がいいと思う?」
「僕が決めるのはおかしいとおもうから、あなたが決めたらいいと思うよ。」
「そうだなー。スライムだから。スラ、いや、ライ。ライ!君の名前はライ!」
スライムだからライなのね。わかりやすいな。
「僕の名前は決まったけど、あなたの名前は?」
「私の名前はね、エマ・シルヴィ。ライ。これからよろしくね。」
「よろしく。エマ。」
そう言って、エマは僕を持ち上げ頭に乗せて歩いて言った。