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ダジャクなニンゲン

誰か、教えてください。

教えてください。

なぜ、僕たちは一人なのか?

僕はドコから来て、僕は何処に行くのですか?

あなたは知っていますか?









突如。

再び僕に襲い掛かる巨大な虫達。

噛み砕く

刺し貫く

圧殺

絞殺

自殺

他殺


― ココデハコロスコトシカデキナイ

― ココデハコロサレルコトシカナイ


蠢き、轟き、響く

僕は、未だ世界から覆い隠されていた。









▼▲▼▲▼▲▼▲


なあ、アンタ。そこのアンタだよ。

暇そうにこの辺りぷらついてるってコトは、アンタ暇なんだな?

奇遇なことに僕も暇なんだよ、余暇なんて潰し合いっこしようぜ?

じゃあ先ずは僕からな?


これは中学生のときの話さ。

まだ何もしらないハナタレ坊やは世界が巧妙に作られてると勘違いしていた。

それは高校生のときの話さ

唯の聞きかじりでしかない坊やは世界が巧妙に嘘をついていたと勘違いしていた。

それは大学生のときの話さ。

未だスネカジリでしかない坊やは世界の巧妙な手口に踊らされていると勘違いしていた。


― あるいは言われたとおりにしておけば

― あるいは周りに合わせて頷いておけば

― あるいは自分を信じて発言しておけば


それでも切っ掛けがあれば世界に劇的な変化をもたらすことが出来ると未だ勘違いしていた。



あれから社会に摘み出されたときのことさ。

世界を知らぬ素人は未だ功名に作られたのだと勘違いしていた。

明日を知らぬ凡人は未だ巧妙な嘘をつけるのだと勘違いしていた。

自身を知らぬ奇人は未だ高名の木登りの言うことを勘違いしていた。


― お前らがしっかり出来ていれば問題はなかった。

― お前らが邪魔にならなければ問題はなかった。

― お前らと巡り合わなければ問題はなかった。


あるいは一条の光明さえあれば昨日をも変えられるのだと勘違いしていた。



そして社会から摘み出されたときのことさ。

初めから世界は未だ作られていないことを知った。

初めから世界には真も嘘も存在しないことを知った。

初めから自分だけが無様に踊っていただけだと知った。


― もっと扇動されなければ気づけたことだ。

― もっと放任されなければ気づけたことだ。

― もっと信頼されなければ気づけたことだ。


もしかして初めから理過ぎていたのかも知れない。


最早嘆くべき真価も虚栄のための対価も存在しない。

さて、昔話を続けようか?


▲▼▲▼▲▼▲▼









― 痛み痛み痛み痛み痛み痛み痛み痛み痛み


どれだけもがいても、否もがこうとしても本能の厳命を妨げることはない。


― 食らい食らい食らい食らい食らい食らい食らい食らい


どれだけ頭が命じても体は行動をやめず、周囲を埋め尽くすハチを食らい、あるいは食らわれ続ける。

ココは肉体という名の牢獄。

身じろぎ一つ取れない空間で環境情報を五感に直接入力され続けてるかのようだ。


― コロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセ


― これは一体何なのだ?

絶えず認識される敵の情報と攻撃命令が体を支配しまわりの虫達を攻撃する。

ノイズのように混じるブツ切れの思考から複眼が捉えたのは同じように殺しあう虫達の姿。

その光景に理解など及ぶはずもない。

必要なものは敵を排除するための命令と獲物のみ。

長らくの間、ただひたすら互いで互いを消し去る時間のみが続く。






あれからどれだけの時間が流れていたのか。

再び僕の意識が表層に浮かびあがったとき、目にしたものはあれだけ憎たらしかった虫達の死骸だらけ。

時が違えば素晴らしき光景に感涙していたに違いない。

ただ機械的に入出力される感情のシーケンスに心がついていかず、その余韻か暫く何も考えず、何も感じなかった。


― このまま死ぬまで怠惰に身を任せたい。


心を動かさず仙人と化してしまいたい僕に突然巨大な影が射す。


―ブチブチ


何かが踏み潰される音とともに自身の意識も消え往く

なんの感慨もなく僕は世界から消え去った。












































筈だった。


―ん?

思考を放棄していた僕の脳みそはまたしても混乱に飲み込まれる。


地面に手をついている僕。


ふわふわの手の僕。


黒っぽい僕。


ハチの死骸を踏み潰している僕。




―んんん?




















・・・ ク マ に な っ て る ?!







それからは君もご存知の通り森のクマさん生活だったな。

幾度となく朝を迎えては生きるために食事を貪り、

いや、違うな。

唯朝日を感じて体は起床して空腹に従い餌を確保して食らい、

眠気に準じて身をたえて命を温存する。


それは来るべき時のためか?

あるいは未だ希望を捨てなかったためか?


いずれにせよ僕は雌グマでチョメチョメはしたくない。

なれば来るべき命などありはせず強く縄張りを意識して同族を避ける毎日。

機械的なルーチンライフがここに誕生した。


餌を狩る

食べる

寝る

餌を狩る

食べる

寝る

冬が来る

食っちゃ寝して太っている。

春まで眠る

春が来る

腹が減っているので餌を狩る

食べ

やっぱり寝



そんな生活が遂に幕を下ろした。

もしかしたら切望の明日を迎えたときの話かもしれない。

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