協力
あれから、まるまる一週間が経った。いつも2番だったのに最近は朝教室に着いても誰もいない。授業が始まっても私の右隣は空いたまま。代わりに別の場所が埋まる。あぁ、そうか。私はこんなに真中に依存していたのか。と、今更ながらに気づかされた。
ガチャっと教室の戸が空く。反射でドアの方を見る。真中ではなかった。
「おはよっ千聖。相変わらず早いねぇ。」
「おはよ。」
彼女は木本梓いつも一緒にいる女友達だ。少し前まではこれに、真中ともう一人、湯川徹の四人で行動していた。でも最近は私と、梓と、湯川くんの三人で行動している。湯川くん曰く、悠陽は今、傷心中だからそっとしてやれ。とのことだった。湯川くんはどこまで知っているのか、少しだけ気になっていたが、怖くて聞けなかった。
「最近、悠陽どうしちゃったんだろー?前はこの時間には居たのにねー。」
不思議に思うのは当然だ。だって本当にここに居ることがあたりまえだったから。
「そう、だね。」
「ねぇ、千聖。なんとか出来ないの?あの、近寄るなオーラっていうの?前みたいに普通に話せる環境にならないかなぁ?」
「なんで、私に言うのさ。梓の方が仲良いでしょー?」
元気なふりして問いかける。私が話せる訳ない。だって私があんなんにしちゃったんだから。
「なに言ってるのさ!千聖と悠陽って高校も一緒だったんでしょー?かなわないよー。」
「一緒だったって言っても私一度も同じクラスになってないんだよ?スタートラインはほぼ同じだよ。」
「もーじゃあ、ハッキリ言うね。」
梓は少し意気込んで小さな声で言った。
「私、悠陽が好きなの。だから…仲を、取り持って欲しいの。」
ズキン胸がまた、痛くなった。なんで、そんなこと私に言うの?
「お願いだよー千聖。千聖も好きだったら勝ち目無いなーって思ってたけど、彼氏出来たって聞いて。だから、ね?お願い!この通り!!」
ズキンズキン、胸の痛みは消えない。目の前で手を合わせて懇願する梓を見て、断るなんて出来なかった。
「うん、わかったよ。」
押しに弱い自分がとても憎く感じた。真中のことを、真中と梓が一緒に居ることを、考えただけでも胸が苦しくて辛かった。