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シロ
「そっか…悠陽から全部聞いちゃったんだ。」
目の前の城田くんは動揺するわけでもなく、静かにそうつぶやく。
「いいよ。別れよう。」
悪びれる風でもなく、呆気ない終わり方。
「うん。ありがとう。」
モヤモヤも哀しさも何もなかった。所詮私もその程度だったってことだ。過去の思い出に恋をして城田くん自身を見ようともしなかった最低な奴だ。でも謝るのは癪なのでお礼を。城田くんとの思い出は少ないけど楽しくなかったといえば嘘になる。
「じゃあ俺行くね。」
「うん。バイバイ。」
私達は静かに逆方向に歩き出す。
「ちぃちゃん!」
少し歩いたところで声が聞こえる。真中だ。
「真中くん。今帰り?」
「うん。ちぃちゃんもだよね?」
「うん。」
「一緒に帰ろう。」
ふわっと笑う。あぁ、好きだなぁと思う。
周りなんて見えてなかったんだと思う。急に真中が近づいてくる。真中も驚いていて、なぜか全てがスローに見えた。後ろに壁がない。そういえば私の後ろは階段だ。気がついたら天井が見えていた。
「なんで……。」
最後に見えたのは驚いた顔。
「城田くん………。」
目の前が、真っ白になった。




