さんかく
「姉ちゃんはさーいつ作るの?」
「何を?」
「彼氏だよ。」
「真聖こそ。いつ彼女紹介してくれるの?」
「姉ちゃんには怖くて紹介できねーよ。」
「ふーん真聖もちゃんと居るんじゃん。」
「俺、も?」
「うん。私にも彼氏、いるよ。」
ツキン。また、胸が痛んだ。
だって思い出すのは真中のことばかり。
「仮定の話をしただけで俺には彼女は居ないよ。もしかして今日、気使わせた?」
真聖は少し悲しそうにする。
「ううん。今日はバイトだって断られちゃった。」
「そっか。それなら良かった。」
そこで少ししんみりとしていることに気がつく。
「真聖、せっかくのお祭りなんだから楽しも!」
私が笑いかけるとつられて真聖も笑った。
「そうだ!金魚すくいやろうよ!」
「おう。姉ちゃんには負けねー。」
「望むところ……うそ………。」
金魚すくいの屋台の前に居たのは紛れもない城田くんだ。私はそちらに向かう足を止めた。彼はこっちに気づいてない。だけど真聖は何かに気がついたらしい。
「姉ちゃん、行こう。金魚すくいの気分じゃなくなった。」
そういって手を引いてくれる。こんなとき空気が読めて気が使える、私には勿体無い程のできた弟だと思う。だけど前に進めなかった。進みたくないわけじゃない。ただ、もう片方の手が誰かに引かれていた。振り返るとそこには、
「うそ………。」
なぜか、真中がいた。