お誘いと、お誘い。
「夏祭り?」
「そそ。夏祭り。どう?いつもの四人で行こうよ!ね?」
最近、少し暖かくなってきたなと思っていたが、もうそんな時期だったのか。
「いいねー……ね、速水さんと徹もいくだろ?」
それに真中も乗ってくる。
「あーごめん。俺その日バイトだわ。」
真っ先に断ったのは湯川くんだ。湯川くんは申し訳なさそうに顔の前に手を合わせている。
「むー……まあ、しかたないよね。千聖は?」
梓はニコニコしながら聞いてくる。梓は、いい子だ。だから本気で誘ってくれているのがわかる。でも、協力するって約束した手前、素直にうん。なんて言えない。
「あー……ごめん。今年は城田君誘ってみようと思う。」
「あっそうだよねー……じゃあ今年は残念だけどやめ……」
「二人で行けばいいじゃん!ね?真中くんと、梓で!」
自分からチャンスを逃そうとした梓を咄嗟に止める。そこで梓も意図を汲み取ったらしく嬉しそうに笑った。
「それも、そうだね。いいかな?悠陽?」
真中は少し悩んで私をチラリと見た。
「あーうん。そうだね。」
私は目をそらす。その先にいた梓が幸せそうに笑っていた。だから、間違ってない。絶対、間違ってなんかいない。痛む胸を無視しながらそう、自分に言い聞かせた。
結局、城田くんを誘ったもののその日はバイトだと断られた。メールで、たった一文"ごめんその日バイト"と書かれていた。絵文字も顔文字も無くて挙句の果てには句読点すらなかった。恋人同士ってこんなものか…と、思う。それとも、男の人のメールってこんなものなのだろうか。あまり男の人とメールをしないからわからなかった。
「千聖!!さっきありがとね!」
梓が嬉しそうに、幸せそうに、言う。私も少し嬉しくなった。
「うん。」
「千聖も城田くんと楽しんでね!」
悪気なんて微塵もない笑顔。でも時にそれはとても残酷でもある。
「…うん。」
そう、言うしかなかった。行けなくなったことを知ったら、きっと梓は私を誘うんだろう。それじゃ駄目だ。それじゃ駄目なんだ。ふと、真中を見やるとしっかり目があった。今度は目をそらせなかった。しばらくして、真中がふわりと笑った。その目元が、口元が、アダ名をつけあったあの日、私が最後に見た少し悲しい睦月くんの笑顔にそっくりだった。