プロローグ
ーあなたが、好きです。
体育館裏、よく少女漫画とかで見かける光景。私は今、まさにその光景を目の当たりにしているわけだけど、他人のそれを見ているとかそんなんじゃなくて、私自身がその光景の一部となっているんだから驚きだ。
私に好きだと言った男のことはよく知っているが、よく知らない。というのも、彼はうちの学年ではよく知られているからだ。彼の名前は真中悠陽。私が知っていると言ったのは、もちろんいい意味ではない。金髪の髪に、何個も空いたワイシャツのボタン。所謂、不良というやつだ。そんなひとがなぜ私なんかに告白してきたのか、そんなの分かりきったことだ。どうせなにかの賭け事の罰ゲーム。そんなことに他人を巻き込まないで欲しいけど、たちの悪い彼らはしばしばそういうことをするのだ。
「ごめん、私、好きな人が居るから。」
よくある決まり文句。でも嘘ではない。私には、好きな人がいる。だから、これでいい。
「そっか、そうなんだ…そうか…。」
予想外にも潮らしい反応をする。なんて演技がうまいのか、危うく騙される寸前だった。
「でも、諦めたくないから。…せめて好きでいるのは許して。」
そんな、そんなの許せるわけはない。
「ごめん…金髪でワイシャツのボタンそんなに開けてるようなチャラチャラした人は無理。」
ばっさり。好きでいられても困るだけだから。黙り込んでしまったのを見て、私はその場を後にしたのだった。
今、考えてみたら、怖い存在でしか無かったのによくもまぁこんな振り方ができたものだ。後々に考えてサーっと頭の血が引いていく。きっと、あと三ヶ月足らずで卒業だからだ。少しだけ怖いもの知らずになっていたのかもしれない。白い息を空に吐き出しながら思う、こんなに寒いのに外に呼び出すなよな、と。
これが、キミとの出逢い。