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第41話 英雄の帰路(中級筋力ポーション)

 三人分のポーションをコップに入れて乾杯する。このコップも不純物が混じらないようにちゃんとカバーをかけて持ち運んだのだが、そこまできれいに保ったコップの中身がこんな色をしていると何とも言えない気持ちになってくるな……。


 皆で防御力ポーションを飲みほして、皆で一緒にポーション痛に苦しんだ。


「まだ慣れないなーこれ。痛《いたたた》……。」


「やめとく?……中級筋力ポーション。」


「やめないけど!」


「痛いのが嫌だからとポーションを飲まず、結果攻撃力が足りなくて幻生生物に殺されたんじゃあ笑い話にもならんな。」


 とのことなので引き続きつくっていく。


 中級筋力ポーションの素材は、カゼンボ、トレント、バロメッツの蕾。バロメッツに関しては先ほどと同じく丁寧に選別する必要がある。さっき筋力ポーションの分まで終わらせてあるので問題なしだ。トレントは枝を丸ごと使うので、余分な葉を取り除けばOK。問題はカゼンボだ。


 カゼンボの素材はこの小さな足、に生えた細い毛。しかもかなり透明度が高くて光に照らさないと見えない。これを一本一本ぬきとって、規定量たまるまで集めなきゃいけない。


「こちらがその作業をしたあとの素材です。」


 私は瓶を取り出す。もちろんこれは大量のカゼンボを捕まえる必要があるので、生息地のそばで作業するのがベスト。すでにここに来るまでに終えている。帰り道がこんなに時間かかってるのは半分これのせいかもしれない。黙々と作業に没頭していたせいで泥団子の光にも気が付かず、フリーダがもう一度カメレオンラプトルに連れて行かれそうになったのは、……まあ、素材と肉が手に入ったから良しということにする。


 そんな思い出深い素材をこれまたすり鉢でつぶしてペースト状に。蒸留水に溶かせば、茶色に濁った緑、みたいな色合いのポーションが完成した。防御力ポーションとどちらが食欲をそそるか小一時間議論したいところだが、早く帰りたいのでとりあえず飲む。


 やがて予想通りに激痛が走った。今までの中で一番痛いかもしれない。なんというか、体の芯に来る痛みだ。工程を間違えて劇薬でも作ったのではないかと疑いたくなるほどの痛みに三人そろって身悶え、それが収まるころには汗でびちゃびちゃだった。


 ちなみに三人そろって、というのは言葉の綾だ。ポーション痛のときに襲われたらひとたまりもないのでちゃんと一人ずつ飲んでる。


 最後に飲んだケンジーの痛みが収まったのを確認して、フリーダが少年のような笑顔で言う。


「じゃあ、試してみよっか。」


「え、なにを――」


 フリーダは止める間もなくてくてくと歩いていき、一本の木の前で止まった。それは腕を回しても届かないくらい太い、大樹と言って差し支えない木。


「えい。」


 フリーダが気の抜けた声をあげてこぶしを振りぬくと、すさまじい破裂音が鳴り響く。はじけ飛んだ樹皮のかけらがほかの木々に突き刺さり、破壊された木がゆっくりと倒れ始めた。――こっちに。


「あ、やべ。」


 上を見上げ、巨木の影に暗くなっていくフリーダにケンジーが素早く割り込む。その速度はプラズマドラゴン戦の時とは比べ物にならないくらいに速く、盾で受け止めた木をそのまま弾き飛ばしてしまった。


「すごい!怪我してないよ!」


「まずいぞシアン。フリーダは私に助けられたことを認識していない。副作用で脳が……。」


「違ぃがうって!殴ったのに手が痛くないの!」


「シアン、君もためしてみるといい。このポンコツもたたけば治るかもしれん。」


「助けてくれてありがとう!それは勘弁して。」


「私たちって漫才トリオ組むために集まったんだっけ……。」


 それはそれとして私も試したくなったので、倒れた木を上から殴ってみた。普通に壊せたし手が痛くない。いよいよ私たちは人間の領域から足を踏み外してしまったらしい。


 これで用事はだいたい済んだ。あとは目の前にある木で編まれた巨大な籠――ケンジー曰く、精霊王が手をかざしたら地面から生えてきたとのこと――からプラズマドラゴンを取り出して、持ち帰るだけだ。精霊王曰くこれも世界樹の朝露を採取した時とおなじように『右腕から生えてきた精神世界の新芽生態認証』で開けることができるらしいので、そのようにする。


 当初は公園から人手を集めて持ち帰ろうという話をしていたが、今の私たちなら――持てた。三人がかりで、ずるずるとでかいドラゴンを引きずって帰ることにしよう。


「拠点の皆を驚かせてあげよー!」


 フリーダの声は絶対にさっきの件で懲りた人間の出せるものじゃない。私はその嫌な予感にふたをしてあるく。なんせドラゴンは重いのだ。

[カゼンボ]

 空中を自在に滑る虫。その浮遊には足に生えた無数の細かい毛が関係していると思われているが、その詳細は不明。

 その素材採取の面倒さから、慣れたエリクシアのプレイヤーは完全な中級筋力ポーションをつくらないという人もいる。アメハナクサだけ固定してほか二つを中級の素材にしたポーションをつくり、そのままのステータスで上級ポーションの素材を集めてしまう。


[筋力ポーション(中級)]

 ・カゼンボの脚細毛

 ・トレントの枝

 ・バロメッツの蕾


[防御力ポーション(初級)]

 ・風柳の樹皮

 ・契り花の花弁

 ・オトリトカゲの尻尾


[防御力ポーション(中級)]

 ・狂獣蔦

 ・クラガリ藻

 ・バロメッツの蕾

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