等活地獄
私とハクアは等活地獄の獄卒として働くことになった。
等活地獄とは動物やアリや蚊などの小さな虫に至るまで生きている存在を殺しておいて反省していないと落とされる地獄である。
生前争いが好きだった者や反乱で死んだ者もここに落ちると言われている。この中の罪人たちは互いに敵愾心を持ち、体から生えて来た鉄の爪や刀剣で殺し合うという。
その爪は、怒り狂って暴力をふるうごとに長く鋭く伸びる。
同じ地獄に堕ちた者同士で憎しみ合い、傷つけ合おうとして、その爪でもってつかみかかる。互いに憎しみ、殺そうとして、互いの肉体を壊し続ける。
そして殺されると涼風が吹いて獄卒の「活きよ、活きよ」の声で等しく元の身体に生き返る、という責め苦が繰り返されるゆえに、等活という。
等しく体が再生し、また殺し合うことを延々と繰り返されるのだ。
死んでもすぐに肉体が再生して何度でも責め苦が繰り返される。ちなみに刑期は一兆六千二百億年である。地獄の第一層であり1番短い刑期の場所だ。
しかし現在では少し趣を変えて、舞台を作り罪人たちに銃や刀を持たせて戦わせ、その様子を観て楽しむというのが鬼たちの一大娯楽になっていた。地獄の鬼たちはテレビで映画を観るように罪人たちの殺し合いをポップコーンをつまみながら楽しんでいるのである。たまにスクリーン上映もするという。これが大好評らしい。
鬼のカメラマンや録音技師もいる。罪人には肉体を与えているので霊体である鬼は見えない。カメラも霊界で作られたので罪人には見えていなかった。
ハクアは等活地獄にいる時は肉体を与えられ演者として働いている。アクションスターで攻撃が決して当たらない、という特技を活かしているのだ。
いままでヒーロー役がいなくて全員悪人で殺し合っていたが、やはりヒーローがいると映画は俄然面白味を増す。ハクアの人気はうなぎのぼりだ。
私は舞台セット作りを手伝っている。西部劇や時代劇、スペースオペラを舞台としているのでハクアは銃や刀やレーザーブレイドを振り回して戦っている。
こっちの攻撃は当たり向こうの攻撃は当たらない、というのは緊張感に欠けるが亡者たちの絶望した顔がバカウケである。なにか攻略法があるのではないか?という希望は絶対に持たないほうがいい。火や水に弱いのではないかと考えてマッチや飲み物を戦闘に利用するがことごとく通用しない。
ハクアは地獄でも人気女優になり鬼の子供にサインや握手をねだられるぐらい有名人なった。下働きの私とはえらい違いだ。地獄に建てた豪邸はハクアのおかげだ。料理人やメイド、執事も雇っている。ハクアは私に仕事を辞めてもいいというが、禁じ手を使った罰として働いているのでそういうわけにもいくまい。私は地獄で鬼たちとも額に汗して働いている。監督はやさしく鬼ではなかった。結婚式は地獄で挙げた。
鬼と死神だけでなく三途の川で働くガイコツたちも参加して大いに盛り上がった。閻魔大王も出席してくれた。閻魔大王様は着物姿で酌をしながら私とずっと一緒にいたいと泣いて訴えるハクアに情をほだされて死んだのちも転生せず地獄にいて良いと認めてくれた。これで1000年後にハクアが死んでも地獄で一緒に暮らせる。
現世にいないハクアに『運命の固定』をかけても影響はゼロなので罪にならず等活地獄での仕事にも支障はないだろう。
撮影現場で生き生きと活躍するハクアは燦然と輝く太陽だ。いつも見惚れてしまう。こうして私は何度でも妻に恋をする。
このエピソードで参考にしたネット資料です。
・現代の私たちも落ちるかも?死してなお戦い続ける武士たちの死後「等活地獄」の恐怖 樽瀬川様
・地獄 その2 〈八大地獄・1 想地獄〉 NOVEL DAY 桝田英伸様
・Wikipedia 八大地獄




