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禁じ手

黒革の死神手帖でハクアのことを調べた。ハクアは15才の冬に階段から落ちて頭を打って死亡となっている。あと3日の命だ。私は手帳を机に置いてごろんとベッドに横になる。現世にいる間はホテルを利用している。誰にも見えないので空室を利用すればいいだけだ。壁抜けもできる。普段の私の家は魔界にあり豪邸だ。実家住みであり名家の出身である。私は悶々《もんもん》としていた。昨日、ハクアと出会ってから彼女のことが忘れられなかった。まぶしい笑顔に温もりのある眼差し。あんな目で見られたことなんて今まででない。右ひざを曲げ左手で胸を押さえ天井に右手を伸ばす。ああ、なぜ彼女は人間で私は死神なのだろう。

種族の壁が愛する私達の間を引き裂く運命なのか。いや、ハクアが私を愛しているかどうかはまだわからない。

とにもかくにも私には彼女の死をだまって見逃すなど到底できないことだった。その夜、私は彼女の家を訪ねる。固く閉ざされた鉄製の門扉もすり抜けて玄関を上がり、彼女の部屋を探す。

いくつも並んだドアを覗いていき真ん中の部屋でネグリジェ姿で寝転んで読書しているハクアを発見した。

「ハクアさん。お話があります」

「ぎゃあ!クロウさん、なぜここにいますの?」

ハクアは目をパチクリする。悲鳴を聞いて執事が駆けつける。

「お嬢様、なにかございましたか?」

「いえ、寝ぼけてベッドから落ちてしまったのです。お恥ずかしい」

「ははは。泥棒でなくてよかったです」

執事はドアを閉めた。

「見えないから隠れなくて平気だと言ったでしょ」

「本当に見えてませんでしたわ。あなた何者ですの?」

「私は死神のクロウです。あなたをおむかえに上がりました。死期が近い人間にしか私の姿は見えないのです」

「そんな!」

ハクアは絶望の表情を浮かべる。ガーンという効果音が頭上にぶらさがっていた。

「うそです。まだその時ではありません。しかし、あなたの命はあと3日の猶予です」

「そんな・・・わたくし死ぬのは絶対に嫌ですわ。だって叶えたい夢があるんですもの」

「存じております。なので貴女を救う手立てを持って参りました」

「寿命を伸ばす代わりに処女を寄越せというのですか?」

「いいえ違います。ボクはそんな卑怯なことはしない」

動揺して素の口調を覗かせてしまった。こほんとせき払いする。

「この街に巣食う悪党どもを根絶やしにするんです。そうすれば彼らの残りの寿命をあなたに付け替えてあげます。殺した悪党が50年後に死ぬなら50年の寿命をあなたにプレゼントしましょう。悪党どもを根絶やしにすれば1000年は生きられる!」

私は両手を広げて見せた。ハクアはベッドの上で女の子座りをして握った右手をあごにそえる。

「そんなことしていいのかしら?」

「殺すのはマフィアのボスや殺人犯です。彼らの命などあなたの命に比べたらゴミ同然です。死んで当然の奴らなんです」

「けど人殺しなんてダメよ」

「彼らが長く生きれば生きるほどその間に命やお金を奪われ乱暴されて傷つく人々が増えるのです。いま消しておけば犠牲を未然に防げます!これは正義の執行なんです!」

私が熱く訴えかけるとハクア両手を握りしめて立ち上がった。

「わかったわ!ロンドンの街を守るためにわたくしがんばります!」

「さすがです。ハクアさん」

「でも武器がありませんわ。どこかから入手せねば

「武器は私がいくらでも出せます」

私は大鎌と禍々しいピストルをどこからともなく取り出して見せた。

「まあ、すごいわ」

「お好きな武器をお望みください」

「じゃあ、まずは・・・マシンガンですわ!」

ハクアはにっこりと微笑んだ。

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