そして伝説へ
上映会当日。体育館のスクリーンには、科学部が総力を挙げて制作したアニメ『トリビア・ラビリンス』が映し出されていた。
「犯人、まさかのあの子だったとは!」「科学トリビア、めっちゃ面白かった!」
「結菜ちゃんのキャラデザ、神すぎ」「科学部、すごすぎる…!」
観客の反応は上々。SNSのライブ配信も同時に行われ、コメント欄は賑わいを見せていた。
湊斗はステージ袖でそっと息を吐いた。
「これで、科学部の最後にして最高の作品になったな」
陽翔が肩をすくめる。
「でもさ、結局…新入部員はゼロかもしれない」
大翔が静かに頷く。
「上映会は成功。でも、科学部の未来はまだ空白だ」
上映会の翌日から始まった“新入部員募集中”の1週間。
部室前には、手作りのポスターとQRコード付きのアニメ紹介が貼られ、4人は交代で部室に待機した。
「今日もゼロか」
陽翔が、椅子に座ったまま天井を見上げる。
「まあ、予想通りだな」
湊斗が苦笑する。
「でも、アニメの再生数は伸びてる。コメントも増えてる」
結菜がスマホを見ながら言った。
「科学部に入りたい、とは書いてないけどな」
大翔が静かに言う。
そのとき、部室の扉がノックされた。
「お疲れさま。上映会、ほんとうに素晴らしかったわ」
佐伯先生が、にこやかに入ってきた。
「科学って、こんなに面白いんだって、みんなに伝わったと思う。あなたたち、かっこよかったよ」
男子3人は、少し照れたように顔を見合わせた。
「先生にそう言われると、なんか…報われた気がする」
湊斗がぽつりと呟く。
「私もそう思うよ」
結菜が笑顔で言った。
「湊斗も陽翔も大翔も、ほんとにかっこよかった。科学部の誇りだよ」
そして、ポスターを外しながら、結菜は静かに言った。
「科学部の歴史って、私たち4人の成長の歴史だったんだね」
湊斗が頷く。
「高校3年分の記録、ここで終わるのか」
陽翔が笑う。
「モテなかったけど、科学ではモテたな」
大翔が静かに言った。
「科学は、残る。僕らがいなくても」
結菜は、ポスターをそっと畳みながら言った。
「科学部は、伝説になったね」




