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風見君、言っちゃったよ─────!



卒業式に告白するのが目標だったのに…。

諸々すっ飛ばして、告白しちゃった─! うひゃあぁ。

なんというサプライズ。

まさか今日に、好きな人の告白を目撃することになろうとは。

上手くいって欲しいような、いって欲しくないような……。

応援しないといけないのに、本音ではやっぱり複雑。


由佳はどう応えるんだろう…。

茫然自失して凍りついたままだ。

そりゃそうだよね、まさかカラオケしてて告白されるとは思わないよ。

それも二人に。

見てる方も驚きで声が出ないんだから、当事者の由佳はもっとだろう。


一方、沢木君はニコニコした笑顔を崩さない。

この状況を楽しんでるようにも見える。

何なんだ、この余裕たっぷりのイケメンは。

そもそもおまえが元凶なんだー!


「あーあ。由佳が困って固まっちゃってるよ。二人とも由佳を困らすのは本意じゃないでしょ? 返事はしばらく待ってあげなよ。じゃあフェアに、ってことで、沢木も風見も由佳と連絡先交換してもらいな」

結局、美穂がその場を仕切り、カラオケは解散になった。






週開けて月曜日、風見君が私の住むアパートに来ている。

平日、学校が終わってから、私の家庭教師をしてくれることになったのだ。


好きな人とふたりっきり!

恋愛小説だったら、何かが起こるべくして起こる絶好のシチュエーション!!

今夜何かが起こる! ……………わけはないのであった。



夕食の下ごしらえを済ませて私の部屋に行くと、風見君がこたつテーブルに座って、ギャラクシーヒーロー伝説のDVDを見ていた。

幸い、うちには外伝含めて全巻揃っているので、待って貰う時に暇にさせないで済みそう。

いそいそと私もこたつに入る。

風見君と同じこたつに入れる幸せ。むふふ…


「待たせてごめんね。うち母親いなくてさ、私がご飯作らなきゃなんだ。良かったら風見君も一緒に食べて行きなよ」

「悪いよ」

「いいから、いいから」

強引に説得して、お家の方に夕食はいらないと連絡して貰った。


「由佳とはどう?」

「………俺のことよく知らないので、友達からお願いします。ってメールがあった。それだけ」

「そっかぁ…。でも、はっきり断って無いなら、沢木君とも付き合うわけじゃないんだろうし、いいんじゃない? しかし……ほんとにビックリしたよ………」

「俺もビックリした。とっさに俺も告白しちまうし…もう春まで冬眠してたい気分だよ」

「気持ちを伝えられたのは良いことじゃん。ライバル牽制もできたんだし」


もし断られることになっても、好きな人に気持ちを伝えられたのは、素晴らしいことだと思う。

私みたいに、もうここまで乗りかかった船にどんぶらこしてると、告白も出来ないよ…くふぅ。


「ライバルが沢木君かぁ…すごい対抗馬が出てきたねえ」


沢木君と、風見君。

どっちも学校でトップクラスのハイスペックだと思う。

ただタイプは全く違う。

沢木君が優雅なアフガンハウンドなら、風見君は朴訥な秋田犬?

由佳はどっちを選ぶんだろう。


「沢木にかなうわけねぇ」

「そんなこと無い無い! 私は断然風見君の方がいいと思うよ。自信持ちなって」

「お…おう」

「ただ、沢木君の方が女性経験が豊富そうだよね。風見君は由佳一筋だったから、全く経験無さそう。その点がちょっと不利かなぁ」

「う、当たってる」

「のんびりしてたら、あっという間に沢木君に由佳を取られちゃうよ。だから私の家庭教師はいつでも休んでいいからさ、由佳はもう専門学校に入学が決まってるし、積極的に由佳を誘うんだよ。 あんな女たらしに由佳を渡すのは心配だもの、頑張って」

「いや、家庭教師はきっちりやらせてもらうよ。さ、これにまとめて来たから、明日までに覚えて。ひとつずつ理解できるまで見ていこうか」


差し出された紙を見ると、A3用紙にパソコンでびっしりまとめられている。

私の為にここまでやってくれるとは…。

風見君、ありがとう。


「ちなみに、毎日1枚な。ちゃんと覚えていけよ」

「うはぁ……」


こたつテーブルの斜め向かいに座って、丁寧に教えてくれるんだけど…

近い、近いよー!

風見君の顔が近いよーーー!

息がふぅっと顔にふきかかる。ひえええええぇ!

ある意味天国だけど、ある意味拷問だ。

心拍数上昇、冷や汗をかきながらも何とか一通り教えて貰った。

はぁはぁ…耐えきった。ってどんな苦行やねん!


「深山さん、男に免疫無いんだなあ。顔まっかっか」

「─────ッ!」

「俺も人のことは言えないけど、俺以上なんじゃない?」

クスクス笑って、さもおかしそうに言う。

風見君だからなのよー! 誰のせいだと思ってるんだあ!

「か、か、風見君が近すぎるの!! そういう風見君こそ、由佳の前では顔まっかっかなんだから!」

「うえッ!まじか…」


本人に見せてやりたいよ、由佳の前での風見君のデレデレ顔を!!

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