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私は風見君をずっと見てた。

そうしていたから彼がずっと誰かを意識して、目線を送っていたのが分かる。

その誰かとは、私のイトコの、河村由佳だった。

だからモテるだろう彼に、高校に入って全く彼女が出来なかったのだと私は思う。


河村由佳は私のいとこで、私や風見君の3年2組の、隣のクラスの3年1組。

1、2年の時は同じクラスだった。

真っ白の肌に桃色のほっぺ、可愛らしい童顔の顔立ち、絹のようなサラサラの肩までの髪。

同性の私でも思わず抱きしめたくなる、まるで子猫のような女の子なのだ。

性格もほんわかしていて、癒し系の愛されキャラ。

私が勝てるわけないし、勝とうとも思わない。はなから白旗だ。




「ちーちゃん、クレープ食べに行くんだけど一緒に行かない~?」

風見君とゴミ捨てから帰って来ると、帰り支度を済ませ友達を連れた由佳が廊下にいて誘ってきた。

ふわふわして、やっぱり今日も可愛い。

「ちょっと約束あるから今日は行けないや、由佳ごめんね」

いいよ~、と由佳は手を振って去っていく。


横に居る風見君を見やると、顔を赤く染めて由佳を熱く見つめていた。

ハハハ、分かりやすい奴め!

ぼーっとしている風見君をツンツンつつく。

「今日は作戦会議の予定だったけど、今度にして由佳とクレープ食べに行くのもいいね、どする?」

「いっ、いやいいよ。河村さんとデートだなんてそんな僕……」

風見君が茹でダコみたいになってて、顔をぶんぶん横に振る。

デートじゃないし!

キャラ変わっちゃってるよ!! しかも一人称僕とか…。

由佳の可愛さは、硬派な風見君をこうまで変化させるのか。おそるべし。


ヤキモチで胸が痛くなるけれど、由佳相手なら仕方ない、とさえ思ってしまう。

加えて、こんな風見君も可愛いなぁと感じる救いようの無い私なのだった。




掃除が終わって放課後、私と風見君は二人教室に残っていた。


「作戦の流れとしては…何とか仲良くなって、バレンタインにチョコを貰う!これが第一の目標ね。最終目標は3月1日の卒業式で告白すること。でもその先にホワイトデーもあるし、お返しと共に告白でもいいわね。うまくいかなくても共同戦線はホワイトデーまで。それまでは出来る限り協力するわ。分かった?」


「…チョコ…河村さんからのチョコ……」

風見君は、どうも由佳のこととなると、たまに人格変化スイッチが入るようだ。

とりあえずスルーして続けることにする。


「出来る限り、仲良く出来る機会を作るから。ね? やってみない?」

今度は何やら考え込んで難しい顔をする風見君が。

どんな表情の風見君もかっこええのぅ…。


「いくつか聞きたいことが。最初に確認しとかなきゃだけど、今は河村さんに彼氏はいないの?」

「いないわ」

風見君が表情が少し柔らかくなった。そりゃ由佳に彼氏がいたらこんなことはしない。


「好きな人もいないの?」

「それは知らない」

とたんに表情が曇る。分かりやすい奴め。


「私が聞いたら教えてくれるかもしれないけど、それを流石に風見君にバラすのは出来ないよ。風見君を全面協力するけど、由佳を裏切るようなことは私はしたくないから」

「あぁ、そうだな」

「風見君が由佳好みの男になって振り向かせるの! 卒業まであと少し、駄目元でやってみない?」

「お、おす。元々諦めてたし、卒業まで頑張ってみる。協力頼む。でも…」


「何故深山さんが、ここまでしてくれるんだ?」

う…。

それは…あなたが好きだからです!

あなたとの思い出が欲しいからです!

何より、あなたの優しさに恩返ししたいからです!!

言えないよー!


「ええと…、受験もうすぐだし勉強教えて貰えたら…いいかなって」

「…分かった。そういうことなら全力で協力させてもらうよ」

私グッジョブ!

ナイス言い訳に自画自賛したが、彼の優しさにつけこむような理由にちょっと心が痛む。

しかし、悲しいかな成績が悪くて協力が欲しいのは本当なのであった…。


「あともう一つ教えて。何故俺が河村さんを好きなこと知ってんだ? 俺、誰にも言ったこと無い」

ううぅ…。

訝しげな視線が注がれる。言葉に詰まった。

あなたが好きで、ずっとあなたを見てたから分かるんです、とは口が裂けても言えない。


「えっと、私そういうのに敏感だから、なんとな──く分かっちゃったのよ!」

「そっか…。無意識に河村さんのこと、いつも見てたからなぁ」

そうそう、そうなのよ。

それを私がどんな思いで見ていたか。罪作りな奴!!

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