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昼休み、学校の廊下で思わぬ人に声をかけられた。

「やぁ、河村さんのイトコさん」

「………」


沢木智也だ。

廊下の窓にもたれながら、今日もゆらゆらととびきりの笑顔を浮かべている。


「まさか声をかけられるなんて。びっくり」

「イトコさんはそりゃあ、将来の僕のご親戚かもしれませんから」

「でも私の名前覚えてないんでしょ」

「……ミヤムラさん?」


おのれ…。

やっぱりこいつは好きになれない!


「深い山と書いて、ミヤマです」

「これは失礼。興味の無いことは覚えが悪くて」

悪びれる様子も無く、スラリと長い腕でお手上げのジェスチャーをしてくる。

む…むきぃ!




「由佳のことは諦めたの? そうしてくれると嬉しいんだけど」

「どして? 諦めて無いよ。さすがに僕も受験前だからねぇ。今は自重して勉強第一さあ。あのクソ真面目な風見だと急ぐことも無いし」

「そうかしら?」

「いやぁ、負けないね。付き合ってても奪い取る自信あるね」

自信たっぷりに、余裕の笑みを見せる。

どこから来るんだ、この自信は。

私だったら一万回口説かれてもなびかぬぅ。


「沢木君みたいな遊び人に、風見君が負けるわけないわ」

「遊び人? 僕は高校入ってからは二人しか付き合ったことないよ。遊び人は心外だなあ」

フリーの時はそれなりに遊ぶけどね。と続けて笑う。

その遊ぶというのは、どういうことか具体的に聞きたい気もしたけど、とりあえず飲み込んだ。

「河村さんだってそれくらいのお付き合いはあるでしょう。イトコさんだってあるんじゃあ?」

由佳は確かにある。

私は全く無いけど。恥ずかしやら悔しいやらで言わないでおく。


「とにかく、風見君は真面目ですごく優しい人なのよ、沢木君には絶対負けない!」

「何でそんなにムキになるわけ?」

白い手を口元に当てて、訝しげにじろじろ見てくる。

「んー。今の言葉、すごい気持ち入ってたような?」

琥珀の瞳が、心を見透かすように見下ろしてくる。


やばい…逃げないと。

───直感でそう思った時。




「好きなんだ?」

「────!」




……う…逃げ遅れた…。




「そうなんでしょう」

「…………ち、違うわ」


「えーっと。風見を好きだけど、風見が河村さんとくっつくのを応援してるってことか」

「…………」


私の腕を取って、どこかへ連れて行こうとする。

「何だか面白そう♪ ねぇ、ちょっと屋上で話そうか」

「えっ、やめてよ。離して!」

「河村さんに伝えようか? 大事なイトコの為に風見は候補から外れるかもね。ライバル減って僕はラッキー?」

「うっ……」



屋上に行く途中で何人もの生徒にじろじろ見られた。

特に女生徒の視線が痛い。

そりゃそうだ。超絶イケメンが私なんかの手を引いてたら、何事だと思うだろう。

うぅ…、変な誤解はされませんように。


「ちーちゃん? 沢木? 何やってんの?」

風見君だ。助けておくれ…

「風見君、たす…」

「風見に言っちゃってもいいのかなぁ?」

「うぐ……」

「この子、ちょっと借りるねぇ」

ひらひらと沢木君が風見君に手を振った。


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