合同訓練
あの手合わせから、イザベラにもナナという騎士にも会わなくなった。その分、ザッオールと過ごす時間は増えいった。
今日は上級生との合同訓練。上級生と剣と魔法のペアになって、訓練する。ザッオールからペアの申し込みを受けた。
そのことでも他令嬢からネチネチ文句を言われたが、少なくなったほうだ。破られた教科書は教師から予備を受け取り問題なく授業を受けれている。
剣は前衛、魔法は後衛。鎧をまとった人形に攻撃をする。この人形は攻撃を受けると、剣または魔法で反撃する仕組みになっている。後衛は前衛に補助魔法、属性魔法をまとわせ、攻撃をする。防御では、前衛が攻撃を受け止め、後衛が攻撃する。
この合同訓練もイベント。私の順番になったときに、人形が暴走し、攻撃が当たりそうになった時に攻略対象者が助けてくれる。のちにその暴走させたのがイザベラだと判明する。合同訓練の前日に人形に細工をし暴走させていた。断罪のシーンであかされるのだ。
今日観覧席にイザベラがいる。人形を暴走させるためにいるに違いない!防御系魔法の練習したもんね。ザッオールと共に受けてたつ!そういえば…あの護衛の騎士はいないな。
「……なんで、私なんですか!」
離れたところから声が聞こえる。声の方へ振り返ると護衛の騎士とフェルディオがいた。
「私は護衛であって、生徒ではないんです!フェルディオ様と組めません」
「学園長とイザベラ嬢の許可はもらっている」
イザベラは騎士に口パクで何か言っている。
「はー……わかりましたよ」
フェルディオと騎士の組み合わせが誕生してしまった。他の生徒といっしょに順番待ちをしている。会話をしているようで、ここからは聞こえない。
私とザッオールの番になる。攻撃補助はうまくいった。今度は人形からの攻撃の防御…人形の動きがぎこちなくなり、バチバチと弾ける音がする。稲妻のような光が走り、私たちの方へ飛んでくる。咄嗟に魔法弾く防護壁を貼るが、威力が強く防護壁が割れそう……
さらに魔力で強度を高めたが、耐えられそうにない。
防護壁が割れた。もうダメだ…………?
何も起こらない……、バチバチと音はしている。よく見ると別の防護壁が貼られていた。側にはフェルディオがいる。他の生徒も守るように防護壁を貼っていた。ふと誰かに抱きつかれていることに気づき、見上げるとザッオールだった。防護壁が割れた瞬間に私を庇ってくれていた。
「ーー!!」
防護壁の外には、単身人形に剣で立ち向かう、騎士がいた。人形の稲妻は剣に集中し、それを握っている騎士は無傷ではいられないはず。
「怪我されてる方!治癒をします!治癒魔法が使える方!手伝ってください」
観客席にいたイザベラが降りてきていた。怪我をした生徒や教師に治癒魔法を使う。
私は、強力な稲妻に壊れた防護壁……魔力を使いすぎたのもあり、力が入らず戦っている騎士を見るしかなかった。
騎士の剣は人形の胸を貫き停止した。剣は溶けたかのようにボロボロだった。
あんな強力な攻撃だったなんて、思いもよらなかった。ゲームではスチルはあっても、どれだけの威力かなんてわからない。
人形が停止しするまで、ザッオールは私を抱きしめていた。
騎士は息切れしながら、フェルディオを見る。
「フェルディオ様!」
頷き、停止した人形から何かを追うように見ている。その視線は、1人の令嬢に止まった。素早く駆けつけ、両手をつかむ。
「人形と同じ魔力の石を持ってるな」
令嬢が半泣きで震えている。右手には金に近い色の石を握っていた。
「石を使い、人形を暴走させ、殿下や他の生徒も危険にさらした。反逆罪として連行します」
「ーー!ち、違います!殿下ではなく…リリアーナを……!孤児のくせに殿下に近づいて!思い知らせようと……」
「目的が違うとしても、結果は殿下も巻き込んでしまいました。親にも責任を取ってもらいます」
イザベラはたんたんと、怒りを含め語った。犯人はイザベラではなかった…。
犯人の令嬢は別の騎士に連れて行かれた。
「ナナ。行きますよ」
「おい!待て!」
ザッオールか私を抱きしめてまま、呼び止めた。
「お前が指示したんじゃないのか?!」
「なぜ?……私がそんなまどろっこしいことをしないといけないのです?………はぁ……殿下とはじっくり話し合わないといけないですね」
イザベラとともに訓練場から去っていった。なぜかフェルディオもついていく。
肩に触れるザッオールの手に、私の手を乗せる。
「ありがとうございました」
「無事でよかった」
さらに強く抱きしめられた。この温かさに安堵する。