進藤晴 日常①
僕が書きたかったもの
姉が去った後の部屋から、僕の一日が始まる。
まずは外に出て車を洗う。
冬の水はすごく冷たくで凍えるようだ。
「さみぃ」
車は父が乗っていたものですごく速いスポーツカーだ。
シルビアっていうらしい。
古い車。
故障も多いが父の形見だ。
手放すわけがない。
そして、オムレツを作って食べる。
母の得意料理だ。
未だに母と同じようには作れない。
「はぁ」
仏壇の前に座るとため息が出た。
仏壇の皿に一緒に作った小さなオムレツを供える。
「父さん車きれいになったよ。母さん今日のオムレツきれいに焼けたんだ。」
子供みたいにそんなことをつぶやきながら線香を上げる。
和室に白い煙が舞う。
「じゃあ行ってくる」
父の愛車に乗り込むとタバコの匂いがする。
法定速度ガン無視でバイト先のファミレスに向かった。
車は改造車でふかすとすごい音が出る。
まったく近所迷惑である。
ところで僕は定職につかない。
なぜなら27歳で死ぬからだ。
正確には27歳までに上野瑞希を殺して、僕も自殺する。
そう決めているから。
僕の収入はほぼないから今はほぼ姉の脛をかじって生きている。
10分くらい運転してバイト先のファミレスについた。
今日はラッキーだ。
駐車場がガラガラ。
いつもは朝食を食いに来たサラリーマンの車で埋まっている。
「うい」
そう言って店内に入ると、「いらっしゃいませ」って言われた。
いや客じゃねぇよ。
ちょっと気まずい。
「あ、晴じゃん。おっはよー」
「もど。水原さんお疲れ様です。」
水原紗良さん。
俺と同い年のバイトだ。
顔が良くて、性格が良くて、モテる。
姉以外で楽しく話せる人だ。
水原さんと話していると、後ろに嫌な影が見えた。
「遅刻だよ。進藤くん」
「すいません。上野店長。」
こいつはこの店の店長、上野武瑠。
いい人なんだけど、名字が上野瑞希と同じ。
生理的に受け付けない。
店長からすれば理不尽な話だが、僕はこの人が嫌いだ。
「ほらさっさと支度してこい。」
店長に促され更衣室に入ると竹内に話しかけられた。
「おっす。今日もかっこいいねぇ」
「からかうな。一段とブスだねの間違いだろ。」
「いや、お前意外とモテてるから。」
そんな会話をしながら、今日のシフト表をみて肩を落とす。
「最悪。フルタイムかよ。」
「おつ!」
「はぁ」