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11.アルジェント様の妄想の毛色が変わってきた②

 

「あっ……。雨、ですね」

「ああ。ノエル、こちらへ。この雨は激しいものになるだろう」



 校門の傍で話していた私たちだが、そのうちに夕方のにわか雨が降り始めた。

 私はアルジェントに案内されて、近くの建物の屋根の下で雨宿りをすることにした。




「本当に、結構……降りますね……」

「そうだな。だが、俺の経験ではじきに止むはずだ。この地方の雨はそう長くは続かないからな」

「わあ。今回もそうなるといいですね……」



【……こうして近くで見ると改めて思うが、ノエルは華奢だ。雨に降られたら風邪を引いてしまいそうだ。

 やはり、ノエルはしっかりと守らなければいけない。サラとの一件のようなことを二度と起こさないためにも……】



(な……なんなの、これ)




 私は表向きアルジェントと他愛のない話をしているが、その実は混乱していた。

 アルジェントの心の声が聞こえ続けているからだ。



 今までは、アルジェントの妄想が聞こえても聞き流そうと思えば聞き流せた。


 どうしてか、今のアルジェントの心の声は今までよりもクリアに聞こえる。

 聞いている、というより――頭に直接流し込まれているみたいに。




【侯爵家の家名を狙ってのことだろうが、俺に対して個人的な交友を結びたがっている者は何人もいた。


 彼らに密かに声を掛ければ、それぞれの学年で人員を用意出来る筈だ。そうして、俺が把握出来る人間でノエルの周りを固める。



 そうすれば、卒業までは安全……、……いや。



 彼らには卒業した後もノエルと交友関係を続けて貰おう。

 そして、ノエルの周りに不穏分子がいたらすぐに報告してもらうようにする。



 社交界でも、サラのような人間はどこに紛れているかわからないものだ。ノエルは辛いことがあっても我慢してしまうようだから、その前に危険な芽は摘み取っておくに限る――

 】



(な……なに? この人、何を言っているの……?)


 私は、アルジェントの心の声に困惑する。



 今までのアルジェントからは、概ねハッピーな妄想が聞こえてきたし、その声色もどことなくふわふわしていた。

 だが、今日のアルジェントの心の声は、妄想、という感じに聞こえない。まるで計画を淡々と練っているようだ。



 何となくアルジェントの思考を断ち切りたくて、私は努めて他の話題を出すようにした。



「あ、あの。アルジェント様、そういえばお伝えしたいことがあったのです」

「……、なんだ?」

「あの授業のあと、私には友人が出来たのです! 同じ学年の子で、色んな話をしてくれて」

「そうなのか」

「はい。学園の施設や授業の話も友人から色々聞けたので、今後はスムーズに学園生活が

 送れそうです」



 フィーナのことを頭に思い浮かべると、自然と笑みが浮かんでくる。

 アルジェントは私が頼りないから色々心配しているのかもしれない。学校生活への懸念が減ったことを伝えれば、これでアルジェントも安心してくれて、妙な考えもやめてくれるだろう――と思ったのだ。




 アルジェントは私の言葉を聞いて、無表情で口を開いた。



「男か?」


「えっ」


「ノエルの……その友人という人間は、男子生徒なのか?」


【傷心のノエルに近づいたのが男子生徒だとするなら、一身上の都合で潰させてもらう】





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