3.幼馴染み、リドル・アークマン。
ほのかに香る、ツンデレの気配(
「姫――アリスから話は聞いているよ。なんでもキミは妹の窮地に颯爽と登場し、不思議な力を用いてデーモンを討伐したらしいね」
「え、ま……まぁ、そうなりますけど」
――拝啓、天国の母さん。
ボクはいま、どう考えても身分違いの相手と対話をしています。
ガリア王国騎士団の副団長といえば、世界最強と名高い剣士の一人だった。田舎生まれというレッテルを自らの力で振り払い、現在の地位を確立してみせた豪傑。
それがまさか、このように美人な女性だとは思いもしなかった。そして、
「そんなキミには、是非とも今回の作戦に協力してもらいたい!」
「え……?」
もう一つの想定外。
ボクはまさかのまさか、騎士団の一員として人に就くことになったのだった。
◆
「どう考えても、分不相応だよ。……どうしてこうなった」
ボクはひとまず、支給された武器を確認しながらそう呟く。
誰に向けたわけでもなく、本当に心の底からの本音に違いなかった。周囲を見ればそこにいるのは、ボクの胴体ほどの腕の太さをした人だったり、いかにも強力な魔法を使いそうな人だったり。とにもかくにも、本気で騎士団を目指している腕自慢ばかりだった。
そんな中で自分は、一番軽い短剣を手にして棒立ちしている。
それでも、こうなったら少しでも前向きに考えよう。そう思うのだった。
「ボ、ボクだってデーモンを倒したんだ! だったら、その資格くらい――」
「ねぇよ。どうして、雑魚クレスがここにいるんだ」
「え、その声はもしかして……リドル?」
そして、自らを鼓舞するように言うと。
背後から聞き覚えがあり過ぎる、苦手な声が聞こえてきた。
「副団長様からの推薦だか知らないが、どうしているんだよ。……クレス」
振り返るとそこには、腕組みをして眉間に皺を寄せる幼馴染み。
恰幅の良い身体に、緑色の髪が特徴的な少年。彼の名は、リドル・アークマン。
姿を消したボクの父と彼の両親は仲が良かったらしく、幼くして孤独だったボクは彼の家の世話になることが多かった。もっともリドルからの扱いは、完全に舎弟扱いだったが。
そんなこんなでボクは正直、彼のことが苦手で仕方なかった。
「いや、何というか。……流れ、かな」
「相変わらず、流されやすいのな。そんなだから、他の奴らに馬鹿にされるんだ」
「う、ぐ……」
リドルはボクを見下すようにしながら、大きくため息をつく。
そして、こう言うのだった。
「まぁ、今さら引き返すのは無理だな。だったら――」
思い切り、ボクの額にデコピンをお見舞いしながら。
「精々、俺の後ろで怪我しないように震えてな!」――と。
こちらをとかく馬鹿にした口調で。
彼はそう言ってから、どこかへと去ってしまうのだった。
「……い、てて」
ボクは一撃を喰らった額を擦りながら、少しだけ肩を落とす。
そして、ふと昔を思い出して呟くのだった。
「どうして、こんな関係になってしまったんだろう……」
ボクとリドルは、俗にいう幼馴染み。
今でこそどこか取っ付きにくい間柄だが、最初からそうであったわけではない。たしか何かのキッカケで、リドルはボクのことを対等以下に扱うようになったのだ。
「思い出せないけど、いまは考えても仕方ないか」
そろそろ、集合時間だ。
ボクは気持ちを切り替えてから、移動を開始するのだった。
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