3.【倍速化】とは。
ここまででオープニング終了(*'▽')ノ
続きが気になる、という方は是非ブクマなど!!
「本当に、ありがとうございました! 貴方は命の恩人です!!」
「いや、あはは……大袈裟だよ」
「全然! 大袈裟じゃないです!!」
街に戻り、助けた女の子から幾度となく感謝を伝えられる。
悪い気はしなかったけど、人の目も多いので恥ずかしさが勝っていた。道行く人がみな何事かと振り返るのに、彼女は気付いていないらしい。
ボクはそんな相手をなだめようと、謙遜混じりの返答をした。
しかし少女は大きく首を左右に振ってから、さらに声を張るのだ。
「それに私の怪我も、あんな簡単に治して! いったい何者ですか!?」
「何者、って……」
微妙に難しい問いに、ボクは苦笑する。
だが、そこでふと彼女の右膝に視線をやった。デーモンとの戦闘時、彼女は間違いなく重傷を負っていたのだ。だが今は、至って平然と歩いている。
それというのも、先ほど応急処置として下級の治癒術を施した時だった。
『もしかして、これにも【倍速化】は使えるのか……?』
ボクは物は試しと、彼女の『回復速度』を上げてみたのだ。
するとこちらの予想通り、女の子が負っていた怪我はたちまちに回復してしまった。どうやらボクのスキルの効果範囲は、かなり広いらしい。
あるいは『物理的なもの以外』にも応用が可能かもしれない。
そう考えつつボクは一度、少女に向き直って首を左右に振った。そして、
「ボクは、クレス・オーデル。……キミは?」
「え、私ですか……?」
何者か、という質問にそう答える。
少女はキョトンとするが、しかしすぐに頷いて名乗るのだった。
「私はアリス・コペルニードです!!」
元気いっぱいに。
その愛らしく整った顔に、満開の花を咲かせながら。
「気軽にアリス、って呼んでください! クレスさん!!」――と。
◆
「やっぱり、そうだ……!」
少女――アリスと別れて、ボクは一人で【倍速化】の確認をしていた。
色々と試して、分かったことが二つ。
「このスキルは【加速】のように、決まった分だけの上昇じゃない。使用する対象の速度が高ければ、それに見合った速度に変化する」
例えば、いまはまだ非力なボクだけど。
ボク自身の身体能力が高まれば、さらに効果は増していくということだ。
「それと、もっと重要なのは――」
ボクは拳を握り締めて、息を呑む。
そして、このスキルについてもう一つの重要事項を口にした。
「『速度』と呼ばれるものなら、何にでも作用する」――と。
要するに『物理』以外にも、例えるなら『概念』に対しても行使できる。
あまりのデタラメさに、思わず呼吸が震えた。
そして、思う。この力さえあれば――。
「もう誰にも、最弱なんて呼ばせない……!」
ボクはきっと、弱い自分を変えられる。
そんな確信を持つのだった。
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