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 それから、おうさまのこどもは おばあさんと いっしょに もりのなかで しずかに くらしました。

 このくにの ふゆの よるは さむくて、とても くらくて ながいのです。

 ふたりは よりそって たすけあって くらしました。




 あるひ、もりのなかに、おおきな おのをもった おおきな おとこがやってきました。

 おばあさんのいえに やってきました。


「わかい おとこは ぜんいん、いくさに でなければならない」


 おばあさんは おうさまのこどもとの わかれを かなしみました。

 おうさまのこどもも おばあさんとの わかれを かなしみました。

 



 おうさまのこどもは へいしに なりました。

 たくさんの へいしとともに たくさんの てきと たたかいました。




 どんよりした くものした、おうさまの こどもは たおれました。

 おうさまのこどもは たくさんの へいしのなかに うもれていきました。

 なつの ぬかるんだ つちのなかに とけていきました。




 つめたい つちのなかで、おうさまのこどもは ゆめを みました。


 ゆめのなかで、おうさまは いきていました。

 おきさきさまは おうさまの となりで わらっていました。

 ふたりとも みすぼらしい ようふくを きていました。

 とても やさしい えがおで わらっていました。


 ふたりの うしろに やまが みえました。

 それは とてもけわしい にしのやま だと、おうさまのこどもは すぐに わかりました。

 むかし、おうさまが はなしてくれました。


 おうさまが はなしてくれた にしのやまが ふたりのむこうに みえました。






「わたしの ものがたりは ここで おわりです」

 ロバは いいました。

「これは わたしの みた ゆめです」

「おうさまの こどもは しんでしまったのですか」

 ひつじかいのおじいさんが たずねました。

「これは わたしの ゆめです」

 ロバは こたえました。

「つづきは ありません」



 ひつじかいのおじいさんと ロバは、おかをくだり、こむぎばたけの あいだを あるきつづけました。

 つよい にしのかぜに ふかれた ロバは すこし よろけました。


 ひつじかいのおじいさんの れんがでできた いえのまえに ひとりの おばあさんが いました。

 ロバを みて いいました。


「おかえりなさい、ぼうや」


 ロバは つめたい ぬれた じめんのうえに しずかに たおれました。


 そのとき、つよい にしのかぜが ふいて、そらから はいいろの くもが きえました。


 まばゆいばかりの たいようが あらわれました。


 そして、ロバは ぬかるんだ つちのうえで、ゆるやかに、すこしずつ、ゆっくりと、わかく うつくしい せいねんに かわっていきました。

 

 ひつじかいは おどろき、おんなは とおくまで ひびく おおきなこえで たくさん なきました。


 いぬが せいねんのまわりを ぐるぐると まわって、いつまでも ほえてました。


 



 つづく



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