【登場人物】

夏休みのポスターが金賞に選ばれたことがある。

読書感想文が文部科学省の特別賞に選ばれたことがある。

県主催のバレエコンクールで優勝したことがある。

このまえハート型のピノが出てきた。

「はーい今から先生が国語の授業を始めまーす」
「ぱちぱちぱち〜」
「それじゃあ、教科書の5ページを読んでくれる人!」
「はい......」
「はい、そこの手を上げてる女!」
「なんだよその呼び方は」
「えー。漆黒の闇が第三世界を染め上げる刹那に、虚無遺伝子を持つ少年少女たちはいったい何を願うのだろう」
「それラノベかなんかだろ」
「すみません。間違えて『いもうと♡ぱらだいす』を読んでました」
「その内容でそのタイトルなのかよ」
「こら『いもパラ』はしまいなさい」
「知らない略し方だな」
「じゃあ他に読んでくれる人いますか〜」
「はい」
「はい、このまえ羅生門を読んで笑ってたマコさん」
「怖いよ」
「違います。走れメロスで笑ってました」
「あれはハッピーエンドだからまあ......」
「全裸で必死に走る姿が実に滑稽で......」
「性格悪いな」
「あと、人を簡単に信じるところも愚かで笑えるよね......」
「嫌な同調すんな」
「どんな感想でも先生は受け入れますよ。どんどん小説を読んで、豊かな感性を手に入れてください」
「寛大な先生ね」
「そんなゆりねさんは、最近は何か小説を読みましたか?」
「はい」
「あっ、ラノベは小説じゃないですよ。あれは文字の羅列されたオモチャです」
「どこが寛大だよ」
「えっと......。最近「がばいばあちゃん」という小説を読みました......」
「ずいぶん昔に流行った小説ね」
「なにそれ? パントマイムが上手いばあちゃんの話?」
「それは『がーまるちょばあちゃん』ですよ」
「そんな言葉はないよ」
「じゃあ孫の顔が分からなくなるばあちゃんは?」
「それは、私のばあちゃん......」
「急に悲しいこと言うなよ」
「小説を読んだ感想は、なにかありますか?」
「はい! 作り話の割に、すごく面白かったです!」
「小説を『作り話』って言うな」
\キーン コーン カーン コーン/

「これにて国語の授業を終わります」
「学びゼロだったよ」
「では今日の授業のまとめに入ります。先生がこの授業で一番伝えたかったこと。それは『ツイッターでバズってる飯はいざ作ってみるとそんなに美味しくない』ということです」
「そんな話はしてなかっただろ」
「それでは起立、気をつけ、礼、着弾!」
「どこを撃ったんだよ」
【二時間目に続く】