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星の少年と炎の少女~国を救おうとしたら神様拾いました~  作者: みつまめ つぼみ


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35.合同授業

 わずかな休憩時間が終わり、二限目の授業を開始する為、ムシュメルトが戻ってきた。

 二限目は魔導術式の座学だった。

 こちらは比較的マシな部類で、典型的な魔法術式の解説と、それを暗記するだけである。

 

 魔法術式自体も、先史文明と比べると洗練されておらず、無駄が多い。

 だが意義のわからない魔導理論の授業に比べれば、なんとか眠気に耐える事に成功していた。


『ねぇノヴァ、やっぱり魔導に関する授業は辛いわね』


『そうだな。だがホムンクルスは本来睡眠を必要としていない。なぜそうも眠たくなるのだ?』


 別に眠る機能がないわけではないので、眠ろうと思えば眠ることができる。

 だがアイリーンは夜になると眠くなり、ノヴァはそれに合わせるように睡眠をとっている。

 朝起きるときも眠そうにしているあたり、ホムンクルスの特性とはややかけ離れている。


『何故かしら……魂が人間だからなのか、アイリーンの記憶があるからなのか』


 ノヴァが己の身体に刻まれた、アイリーンに関する記録を漁って思案をしていく。


『ふむ……ああわかった、お前の頭脳は、元のアイリーンの頭脳を設計図としている。つまり、より人間に近い特性があるのだろう。ヴォルディモートも、まさかここまで人間に近い特性になるとは思っていなかったようだがな』


『それはどうしようもないわね……お父様は私を再現したかったのでしょうし、人間の私を複製元とする以上、避けられない事なのね』


『ではどうする? また認識阻害させて眠っておくか?』


『そうね……試験の前日に教本を読めば、正答は予想できるわ。もうそれで済ませてしまいましょう。じゃあ、後はよろしくね』


 言うが早いか、再びアイリーンは夢の世界の扉を開いていた。

 すやすやと寝息を立てるアイリーンを、ノヴァはまた楽しそうに眺めている。


 そして授業の終わり間際でアイリーンは起こされ、再び休憩時間がやってきた。

 だが生徒たちはそれぞれ、席を立って移動を開始していた。


「あら、みなさんどちらへいかれるの?」


 アイリーンが通りかかった生徒に尋ね、生徒が応える。


「次の時間は魔法術式の実技ですもの。休憩時間の間に、外に移動しなければいけないの」


「そう、ありがとう――ノヴァ、私たちも移動しましょうか」


 ノヴァと共に、生徒たちの後について行く。

 校庭に出ると、他の学級の生徒たちの姿もあった。


「あら、何故他の学級の生徒たちが居るのかしら」


 傍に居た女子生徒がそれに応える。


「魔法術式実習は合同授業なのよ。生徒たちの魔法術式から学校設備を守る為に、防護結界を張るの。その為には一人の魔導士では力不足になるから、複数の教師が魔力を併せるの」


 確かに、校庭で生徒が放った魔法が校舎を破壊するのは防がなければならないだろう。

 校庭はそれなりに広い。この広さをすべて覆う防護結界ともなれば、三人から四人は必要とするだろう。


「なるほど……納得したわ。ありがとう」


 授業の時間になり、教師たちから本日の課題となる魔法術式が示される。

 それが終わると、五人の教師が校庭全体を覆う防護結界を展開し、生徒たちに練習するよう指示を出した。

 生徒たちはそれぞれ、用意された的に向かって火球を飛ばして破壊している。

 破壊した的の交換は自分たちで行うようだった。


『現代の十四歳の魔法術式の腕前は、こんな感じなのね』


『お前の時代ではどうだったのだ? 俺の持つ記録には、そういった情報はない』


『私も記録映像で見たことがあるくらいだけど……そうね。魔導理論の水準が違うことも大きいのでしょうけれど、もっとずっと洗練されていたわね。現代の十四歳は、私の時代の十歳くらいの腕前じゃないかしら』


 ノヴァがにやりと笑いながら尋ねる。


『ならば、稀代の天才魔導士と呼ばれたお前はどうだったのだ?』


『当時の十四歳どころか、大人とも比べ物にならない水準だったのよ? 現代の十四歳と比較するのは、可哀想というものだわ』


 ノヴァとアイリーンも的を用意し、指定された魔法術式で的を射抜いていく。

 最小限の魔力で的の中心を破壊し、的を交換しては繰り返していく。

 敢えてのんびりと動き、時間が過ぎるのを待って居た。


 ノヴァの魔法術式を眺めていたアイリーンが感想を告げる。


『ノヴァの腕前は、お父様の物に近いのね』


『ヴォルディモートの魔導知識しか持ち合わせていないからな。的に当てるような制御技能も、ヴォルディモート譲りだ。神の力らしいものなど、人間と比較すれば膨大とも言える魔力を使った、多重並列起動ができる程度だろうよ』


『お父様の制御技能でも、そんなことができてしまうの? お父様がそんなことをできた覚えはないし、私でもあれほどの数を制御するのは無理よ?』


『奴だって天才魔導技師と呼ばれた男だ。技能そのものは高度だったさ。魔力が足りないからできなかっただけだ。それはお前も同じだ』


 傍目には黙々と、しかしのんびりと的を正確に破壊していく二人の様子を、生徒たちは感心しながら眺めていた。

 手を抜いているのは明らかだった。

 この編入生たちは、より高度な魔導技能を持っている。敢えて授業に合わせているのだとわかってしまった。


 セレンがアイリーンに近づいてきて、話しかけた。


「アイリーン殿下、あなたは高度な魔法術式を使えるのかしら? とても余裕がおありね」


「あらセレンさん。そうね、確かにもっと高度なことができるわ。でもこれは授業ですもの。示された課題をこなすだけよ」


 正直に話したアイリーンに、セレンが驚いてみせる。


「あら、アイリーン殿下は嘘が付けないのかしら。では魔導がお得意なのね。授業が退屈ではなくて?」


 アイリーンは苦笑いを浮かべて応える。


「それは仕方ないわ。魔導に関する授業は諦めているの」


 セレンは不思議そうな顔でアイリーンに尋ねる。


「私、多少聞きかじっていますの。殿下たちは、ピークスで保護されたという噂がありますわ。保護された時点では、ウェルバット語も話せない状態だったと。どこでそんな魔導を習得なさったの?」


 アイリーンは明るく微笑みながら返す。


「それは言えないの。ごめんなさい」


 セレンは思案を頭に巡らせながら口を開く。


「そう……事情がおありですものね。すべてを明かすことはできませんわね」


「ええそうよ。すべてを明かしたらリストリットさんやアルトゲイル皇国に迷惑が掛かってしまうわ。そんなことはできないの」


 そのアイリーンの言葉を聞いて、セレンが思わず噴き出した。


「アイリーン殿下ったら、本当に嘘が付けない性格ですのね。事情があるなら、もっと誤魔化した方がよろしくてよ?」


 ノヴァがため息交じりに同意する。


「全くです。実力を隠すなり、偽の素性を用意するなり、いくらでもやりようはあるんですが、アイリーンがこんな性格なので、嘘は最小限に留めざるを得ません」


 セレンは笑顔のままノヴァに返す。


「そういうノヴァ殿下も、隠し事が苦手のご様子ですわね。お二人は似た者同士なのね。とてもお似合いよ?」


 お似合いと言われ、アイリーンは照れながら「ありがとうございます」と返した。


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