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星の少年と炎の少女~国を救おうとしたら神様拾いました~  作者: みつまめ つぼみ


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23/53

23.ようこそ王宮へ

 王都に来た時と同様に、ノヴァはニアの馬に、アイリーンはリストリットの馬に乗せられ、アルスラーの馬とともに王宮へ向かった。

 年若い門兵二名が一行を見咎め、道を塞いだ。

 門兵が先頭のリストリットに近づいて誰何する。


「止まれ! 何用だ!」


 リストリットが怪訝な顔をし、緩慢な動きで首から下げていた王位継承者の指輪を門兵に見せる。


「お前、新顔か? 俺はリストリット第二王子だ。今回の事は不問に付すから、道を空けてくれ」


 指輪を確認し恐縮した門兵が、速やかに道を空けた。

 五人を乗せた馬はゆっくりと王宮に入っていき、そのまま第二離宮へ向かった。


 後に残された門兵たちは、呆然と一行を見送りながら呟いた。


「なんで殿下があんな冒険者の格好をしてるんだよ……わかるわけないだろう」

「一番最後に居たの、王宮魔導士か? もっと早く気づけばよかった……」


 後ろから、先輩の門兵が笑いながら出てくる。


「ははは! 殿下は時折、ああして冒険者に扮して街に出ているんだ。お前も、”竜殺しのリスナー”の姿は覚えておけ。咎められることはないが、二度も三度も繰り返しているとさすがにわからんぞ」


 若い門兵が先輩の門兵に食って掛かる。


「知っていたなら、なんで教えてくれなかったんですか! 先輩たちが”ほら、仕事だぞ”って行かせたんでしょう?!」


「お前ら新人が、気が付くかどうか賭けをしていた。ま、新人の通過儀礼だ。諦めろ」


 納得がいかない新人門兵の頭を、先輩門兵が笑いながら小突いている。

 今はまだ、ウェルバット王国は平穏で守られていた。





****


 第二離宮の客間の内、執務室に近い部屋が準備され、そこにノヴァとアイリーンは案内された。

 人払いがされた後、リストリットが口を開く。


「いいか、お前らは自分の名前しか言えない、ピークスの孤児だ。服は見すぼらしかったから、ニアの服に着替えさせている。あとは、意志を伝えたければ身振り手振りでなんとかしてくれ」


 アイリーンは不承不承頷いた。


『わかったわ。言語の教師は早めにつけてね? 身振り手振りだけじゃ、とても疲れそうよ』


 リストリットが頷いた。


「急いで手配しよう。じゃあ俺とニアは着替えてくる。すぐに世話係も戻ってくるから、その間は言葉を使わないでくれ。後でまた様子を見に来る」


 そう言ってリストリットとニアはその場を後にした。


 残されたノヴァとアイリーンは目を見合わせ、お互い溜息を吐いた。

 さすがに、”言葉を話すな”というのは中々に厳しい条件だ。


 リストリットたちが立ち去ってすぐ、世話係の侍女たちが数人現れた。

 侍女の一人が口を開く。


「この子たちを着替えさせればいいのかしら」


「そうらしいわ。平民の服を何着か用意しろ、と言われて持ってきたけど、自分で着替える事も出来ないでしょうし、急いで着替えさせましょうか」


 ノヴァたちが言語を理解しないと伝えられているため、王宮内だというのに侍女たちの言葉も崩れ、態度も気軽なものだ。侍女の控室ではこのように振舞っているのだろう。

 ノヴァは念のために翻訳魔法を維持しているので、彼女たちが口にしている言葉の意味は二人にも理解できていた。


「着替える前に入浴させた方がいいかしら?」


「んー……途中で入浴させたのかしら。これだけ綺麗なら、今日は大丈夫ね」


 ここまでの道中、ノヴァが浄化魔法で身綺麗に保っていたので、二人に目立った汚れはない。

服を脱がされた後、汚れがないか確認をされつつ、二人の体格に合わせた平民の服が着せられる。

 アイリーンはようやく下着を着用できたことで、内心で胸を撫で下ろしていた――やはり、全裸の上に長衣だけ、というのは心許ないにも程がある。ニアの下着はサイズが合わず、着用できなかったのだ。


 侍女の一人が満足そうにしている。


「これでいいわね。このあとはどうする?」


「椅子に座るように誘導して、お茶でも振舞いましょうか」


 侍女たちに誘導され、ノヴァとアイリーンがソファに腰かける。

 紅茶が給仕され、飲むように手ぶりで示された。二人はそれを真似る振りで紅茶を口に運ぶ。


「どう? 王宮のお茶よ? 孤児が口にできるものじゃないんだから、有難く飲んで欲しいわね」


「私たちですら飲めない高級品ですものね……ほんと、殿下の奇行は毎回、何を考えているのかわからないわ」


 王宮の使用人ともなれば、低位とはいえ貴族出身者が殆どだ。その彼女たちでも飲めない王族用の最高級品だ。妬みぐらいは口にしたくなるのだろう。

 侍女たちが好き勝手に会話している内容を、内心冷ややかに観察しつつ二人は過ごしていた。


 そのうちにリストリットとニアが王宮での装束に着替え、姿を現した。

 侍女たちは途端に恭しい態度となり、静かに控え始めた。


「おし、着替え終わったな。思った通り悪くない。どうだ? 着心地は」


 ノヴァもアイリーンも、思わず返事をしそうになるのをぐっとこらえ、言語が分からないふりをする。


 侍女の一人が口を開く。


「殿下、そのようにお言葉をかけても、彼らには理解できないかと」


「あー、まぁそうだな。なに、気分だ気分。とりあえず、お前たちはまた部屋を出ていてくれ」


 再び人払いがされ、ようやくノヴァとアイリーンが大きく息を吐いた。

 アイリーンが疲れたように口を開く。


『これは中々に屈辱的な拷問ね……』


『仕方あるまい。リストリットがそうしたいと言うのだ』


「ははは……スマン、俺の我儘に付き合わせて。それより着心地はどうだ?」


 アイリーンもノヴァも、互いに顔を見合わせ感想を告げる。


『悪くないわ。ようやく下着も着用できたし! これでも風が吹いても怖くないわ!』


『そうだな、着心地は悪くない』


 この時代の普段着は初めてだが、特に問題はないと感じているようだ。特にアイリーンは、やっと下着を着用することができて落ち着いたようだ。


「そうか、それならよかった。言語教師は手配した。明日には来てくれることになっている。だが、言語も判らない孤児だ。見張り代わりに世話係が付く。王宮で変なことをしないようにな」


 ノヴァが剣呑な表情で応える。


『それは構わんが、世話係とやらには認識阻害の魔法をかける。俺たちの行動を正しく認識できないようにな。こうも屈辱的な扱いを長く受ける気はない』


「あー……まぁいいだろう。その程度は許す。言語教師も、お前らが思う様に認識阻害させて構わない。怪しまれないように好きにしてくれ」


『わかった。巧くやっておこう』


 その時からノヴァは自分たちの周囲に認識阻害魔法術式を常設し、自分たちが言語を扱っても怪しまれないよう細工をした。

 アイリーンはようやく胸を撫で下ろし、離宮での暮らしを開始した。


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