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星の少年と炎の少女~国を救おうとしたら神様拾いました~  作者: みつまめ つぼみ


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13.縁談

 古代遺跡の扉を開き、外に出る――数時間ぶりの外気だ。

 リストリットは思わず深呼吸をしてしまう。


「あー、やっと新鮮な空気だ」


『空調設備が生きていれば、中も快適だったのだけれどね。壊れてしまっていたから仕方がないわね』


 外に出てからは、アイリーンはリストリットが背負った。

 裸足で山道を歩かせる訳にはいかなかった。

 ニアがノヴァに振り向いて尋ねる。


「ノヴァくんは裸足で大丈夫なの?」


『問題はない。多少の怪我など、治癒魔法で癒せばよい』


「もう! 結局怪我をするんじゃない。痛くないの?」


『なに、全身の再構築による痛みに比べれば、些末な事だ』


 それを聞いてニアの表情が変わった。


「そうよ! あなたの身体も腐り落ちてるはず! 再構築は進めているの?! 魔力は足りる?」


 ノヴァは平然とした顔で応える。


『あの魔力回復薬をこれから必要としているのだろう? ならば、残った魔力で細々と時間をかけて再構築するしかあるまい――それより、あれを何に使うのだ?』


 ニアが香炉を用意して説明を始めた。


「これから竜避けの香木を焚くわ。その性質を利用して、改変した隠遁魔法を発動させる。適用効果範囲は大人二人程度だけど、あなたなら、それを真似することができるはずよ。二人で四人を隠遁できるわ。でも、この山に居る間は隠遁魔法を維持しなければならないから、その魔力を補給するために使うの。残りの魔力回復薬なら、なんとか足りるはずよ」


 ノヴァが呆れたように口を開く。


『何かと思ったら、そんなことか。ならばその魔法を使う必要はない』


 ニアが手を止め、きょとんとして尋ねる。


「それはどういうこと? 竜避けの方法が別にあるの? それとも、あなたが竜を撃退するとでもいうの?」


『そうではない。この山の竜は、アイリーンを襲わない。この山自体が、ヴォルディモートの工房を防衛するための結界だ。竜たちは工房とアイリーンの守護者。奴らはアイリーンを襲わないように設定されている。アイリーンの伴侶である俺もまた、攻撃対象とはされない。俺たちが敵意なく同伴しているお前たちも、攻撃対象とはされないだろう――さらって逃げて居れば別だがな』


 リストリットがどこか納得したように頷いた。


「なるほど、工房とアイリーンの守護者、竜も警戒装置だったのか。それで他の地域の竜と性質が異なるんだな。侵入者に積極的に襲い掛かるのは、それが理由か」


 アイリーンは別の単語に反応していた。


『ちょっと?! 今、聞き捨てならない単語が聞こえたわ?! 私の伴侶ってどういうこと?!』


 ノヴァがニヤリと笑った。


『俺の造形は、お前好みだとは思わないか? 何故ホムンクルスがそうなっていると思う? ――答えは、お前と共に生きるホムンクルスを、伴侶として設定しているからだ。少なくとも、記録にはそう在る』


 アイリーンが真っ赤になって慌て始めた。


『ちょっと?! それって、お父様に私の好みが全部把握されていたってこと?! しかも私の死後、縁談を組んだっていう事なの?! デリカシーなさすぎじゃない?!』


『縁談か、そうとも言えるだろう。お前を孤独にさせないように、必ず傍に居られるように作られた存在が俺だ。それを縁談と呼ぶこともできるだろう。だが、ホムンクルスの生殖機能は、人間とも交配が可能だ。お前が現代の人間と恋に落ち、その男と添い遂げる道もあるだろう。どちらにせよ、俺はお前と共に在る』


『ホムンクルスの生殖機能って……そんな削減筆頭の機能を残してるの?! ということは、あなたの身体にも生殖機能があるの?!』


『もちろん残っている。ヴォルディモートは、俺とお前が子を成せるように設計したからな。健康的な子が生まれるだろう』


『……お父様に死後再会したら、言いたいことが一つ増えたわ。みっちりデリカシーという言葉を教えてあげなきゃ』


 ニアはアイリーンに共感しつつも、ホムンクルスを交えた交配結果にどのような魂が宿るか、という疑問に思案を巡らせていた。

 それは人間なのだろうか。

 それとも、ホムンクルスなのだろうか。

 ノヴァとアイリーンの子供は、なんと呼ぶべきなのか。

 親の魂は神と人間だ。この場合、生まれてくる子供を何とするのか。半神半人と呼ぶのか、そうではないのか。

 結論の出ないニアの思考に、ノヴァが応える。


『俺たちの子供であれば、身体は人間と変わらない。魂も、人間と変わらぬものが宿る。人間とホムンクルスもまた、同じ結果となる。つまり、人間が生まれるのだ。これはお前たちが先史文明と呼ぶ時代の、魔導理論の初歩だぞ? 今の魔導理論にはないのか? ……そうか、ホムンクルス製造技術がないからか。あれは魔導理論を飛躍的に進めた技術革新だったからな。仕方あるまい』


 魔導理論の初歩、と言われて、ニアは激しく落ち込んだ。

 ニアは一流の魔導士で、その自負がある。それが”初歩も分からないのか”と言われてしまえば、衝撃は大きい。

 アイリーンも悲しげな瞳で口を開いた。


『そう、現代ではそこまで魔導技術が後退しているのね。悲しいわ。魂を扱う分野は、魔導理論の根幹よ。そこが抜けていては、魔導理論は頭打ちになってしまうわ。魂の定義と世界との調和、そして融合。それが私たちの時代――先史文明における魔導理論の基礎にして深奥よ』


 門外漢のリストリットが、居心地悪そうに口を開いた。


「あー、楽しそうなお話を邪魔して悪いんだが、竜が襲ってこないなら、このまま真っ直ぐふもとを目指してしまって構わないか? それでも、二日か三日はかかるはずだ。それに回復薬も余るから、ノヴァが再構築するのに使ってくれ」


 ノヴァが頷いた。


『そうだな。夜になれば野営を張る事になるだろう。その時に使わせてもらおう。では先へ急ぐとしようか』


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