Case 1-3
「お久しぶりです、冴月さん。突然お呼びしてしまい申し訳ありません」
「いえ、今日は部活動もお休みでしたから。気になさらないでください」
初めて佐伯と会ってから数日後、琴子は再び彼と会っていた。
「本当はもう少し余裕を持ってるご連絡する予定だったのですが....」
親友2人との「再会」の準備から帰った琴子は、佐伯からの連絡を心待ちにしていた。昨晩、最初と同じく丁寧な文面のメールを受け取った琴子は、すぐに今日がいいと変身した。
「今日を選んだのは私ですから。とても、楽しみでしたから」
2人は談笑しながら研究センターに入り、数日前と同じように織宮の待つ研究室へと向かった。
「こんにちは、冴月さん。朝早くからすまないね」
研究室の入り口で2人を出迎えた織宮は、さあ、どうぞ、と琴子をソファに案内した。
「本日のご用件は....メールでもお伝えしましたが、冴月さんのご友人お二人のアバターが完成しました。つまり、まあ、お二人と『会う』用意ができました。ですので、冴月さんには僕達の監督下でサーバーにアクセスしていただき、実際に『会って』いただきます」
織宮が机の上に置かれていたヘッドセットを持ち上げた。
「方法は簡単だ。このヘッドセットを装着して....VRゲームはやったことがあるかな?」
「はい。少しだけなら....」
「その要領で操作するだけだから、特にこれと言って特別な技術はいらないよ」
手渡されたヘッドセットを琴子がまじまじと見つめていると、佐伯がそれと、とコードにつながれたボタンを手渡した。
「先ほど『我々の監督下で』とお伝えしましたが、僕達も冴月さんの普段の状態を知っているわけではないので、万が一体調に異変を感じたら、これを押してください。僕達は近くで待機しておりますので、ボタンが押されたらすぐにプログラムを停止します」
「分かりました」
「では、始めましょう」
織宮はそう言うと、「M to D」の前に座った。
「あ、冴月さん。そのゴーグルは脳波を感知してアバターを操作するものなので、冴月さんご自身が動く必要はありません。ですから、どうぞお掛けになったままで大丈夫です」
織宮は立ち上がってヘッドセットをつけようとしていた琴子に慌てて言い足した。
「あ、は、はい!」
琴子はソファに座り直し、今度こそ両手でヘッドセットを持ち、目を閉じながらそっと装着した。
「二人とも、どんなふうになってるんだろう」
小さなつぶやきと同時に、ピッ、という聞こえ、琴子の視界は白く染まった。