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 言っても無駄かもしれないけれど、守られてばかりではいけない。

 

 そう思って、私はライアン様の横で大きく息を吸ってからシェールに向かって言う。


「シェール、私はライアン様と婚約して、今は一緒に住んでいるの。だから、もうあなたと一緒に住む事はないわ。別にあなたにフェイロン侯爵令息と結婚しろなんて言わないから、あなたはあなたで自分だけの幸せを探してちょうだい」

「嫌よ! 私の幸せはお姉様と一緒にいる事なのよ!」


 私が言い返す前に、ロブス様が言葉を挟む。


「シェール、いいかげんに姉離れをしたらどうだ? どうせ、僕と結婚したら離れ離れになるんだから」

「嫌よ! 私はお姉様と一緒にいさせてくれる人としか結婚しないわ!」

「無理だ! ミュアはミグスター公爵令息の妻になるんだ! 一緒に住めるわけがないだろう!?」


 ロブス様の言葉を聞いたライアン様とラングが反応する。


「人の婚約者を馴れ馴れしくミュアと呼ぶな」

「ミュア姉様の事はミュア様とお呼び下さい」

「え…。そ、それは、その申し訳ない…」


 ロブス様が焦った顔になって、ライアン様とラングに謝った。


 女性には強気だけれど、男性に強く言われると駄目なタイプみたいね。

 この調子で次期侯爵になんてなれるのかしら。

 その前に財政難と評判が地に落ちて没落してしまうかもしれないけれど…。


 そんな事を考えていると、ロブス様が言う。


「あの、恐縮ですが、ご提案をさせていただいてもよろしいでしょうか?」

「提案だと…?」


 ライアン様が聞き返すと、ロブス様が何度も頷く。


「そうです。よろしければ、シェールをミグスター家に置いていただく事はできないでしょうか」

「断る」


 ライアン様は即答した。

 しかも、かなり不機嫌そうな顔になっている。


 ロブス様はそれをわかってはいるようだけれど、何とかしてシェールを押し付けようとする。


「シェールはミュア様の事が大好きなんです。仲良し姉妹を引き裂く様な真似をするのは可哀想ではないかと」

「何を言っているんですか! 私を追い出したのはあなたですよ!? それに私はもうシェールと一つ屋根の下で暮らす気はありません!」


 黙っていられなくて言うと、シェールが私に訴えてくる。


「お姉様! どうしてそんなに酷いことを言うんです!? あんなにも仲良しだったじゃないですか!」

「そう思っていたのはあなただけよ。昔は何も考えていなかったけれど、最近は嫌いにならない様に必死に努力していたのよ!」

「嘘よ、そんなの…」


 シェールは涙目になったかと思うと、ライアン様を指差して叫ぶ。


「ミグスター公爵令息がお姉様を洗脳したんですか!?」

「洗脳…? それを言うなら君の方が心配だ。姉への愛が異常すぎる。それこそ洗脳されているんじゃないのか?」


 ライアン様に言われ、シェールは胸の下で腕を組んで聞き返す。


「それってお姉様が私を洗脳しているという事ですか?」

「違う。俺の言い方が悪かった。そういう意味じゃない。自分自身でミュアがいないと生きていけなくしているんじゃないかと、言っているんだ」

「そうだったとしても、あなたには関係ありません」


 シェールは相手が公爵令息だというのに、お構いなしに失礼な態度を取った。

 すると、ライアン様が冷めた目で彼女を見て口を開く。


「今までは、そんな態度が許されていたかもしれないが、俺は許さないからな」

「な…、なんの事ですか…?」

「多くの男性は君が少しでも優しい言葉をかけたりすれば、君に落ちていたかもしれないが、残念ながら俺は君に魅力を感じていない。だから、その失礼な態度を俺が許す事もない」

「ど…、どういう事ですか…?」


 さすがのシェールも表情を引きつらせる。


「おい、いいかげんにしてくれ! シェールのせいで今日のパーティーはめちゃくちゃだ! これ以上、迷惑をかけない内に帰るぞ!」


 ロブス様はシェールの手を取ったけれど、彼女はその手を振り払う。


「嫌よ、嫌! 私はお姉様と一緒にいるのよ!」

「どうしてそんなに聞き分けが悪いんだ! こんな事になるなら婚約者はミュアのままにしておけば良かった!」

「そうよ! あなたが悪いのよ!」

「何だと!? ベタベタしてきたのは君じゃないか! 思わせぶりな態度をとって!」

「全部、お姉様の為よ!」


 ……どうしたらわかってくれるのかしら…。


 そういえば、こんな言葉を彼女には言った事がない気がする。

 喧嘩をしている2人の横で呆れ返っているライアン様に話しかける。


「あの、少し試してみたい事があるのですが…」

「どうするんだ?」

「ご迷惑をかけるかもしれませんがよろしいでしょうか…?」

「俺はかまわないが…」

 

 不思議そうにしているライアン様に苦笑してから、シェールの方に向き直る。


「シェール」

「……どうしたの、お姉様」


 シェールが喧嘩をやめて笑顔で私の方に振り向いた。


 考えてみたら、私は今まで、シェールがいたから、婚約者どころか恋愛もできなかったのよ!


 冷たい言い方かもしれないけれど、キツく言わなければ、彼女には効かないわよね。


「私はライアン様に恋をしたの! だから、あなたなんていらない!」

「………え」


 私の言葉を聞いたシェールは呆然とした顔になり、動きを止めた。

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