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公国の呪われた聖女と帝国の企みの皇子

「ガルセンティア公国の第一王女を婚約者に!? 本気ですか!? ソルド殿下!」


「ああ。もちろんだ」


 慌てる家臣にソルドは悠然と頷く。


「し、しかし、公国の第一王女と言えば『呪われた聖女』ですよ? それを承知の上で、なおご自分のモノにすると?」


 脂汗を浮かべる家臣の言葉をソルドは鼻で笑う。


「ふん。神の奇跡を宿した聖女、か。そんな眉唾話を盲信するほど俺はバカではない。

 だがな。万が一にも我が帝国を脅かす可能性があるのならば、それを捨て置けないのもまた事実。脅威となるならば俺の手元に置いておくのが良い。

 もしも本当に神の奇跡とやらがあるのなら、俺がそれで世界を支配してくれよう」


 ソルドはそう言って企みの笑みを浮かべた。


「そのための下準備はできた。

 ガルセンティア公国に書状を送れ。呪われた聖女様をお迎えしようではないか」


「は……」


 両手を広げて高笑いするソルドに、家臣は頭を下げるしかなかった。
















「ふんふふんふふーん」


 ガルセンティア公国。

 その王城の庭で可憐な女性が鼻唄を歌いながら歩いていた。女性、と言っても、まだ女性の仲間入りをしたばかりのあどけなさを感じさせる顔立ちだった。

 その傍らには凛々しく端正な顔立ちの騎士が一人。


「あ!」


 女性は庭園で何かを見つけたようで、薄い空色のドレスをはためかせながらパタパタと走った。

 長い金色の髪と澄んだ蒼の瞳がキラキラと輝いている。


「サリア様。お気を付けください!」


「ねえ見て! アラン! 青薔薇の花が咲いたわ!」


「……やれやれ」


 注意も聞かずに目的の場所にしゃがみこんだサリアにアランは苦笑すると、自らも駆け寄ってサリアの斜め後ろからそれを覗き込んだ。


「ああ。本当ですね」


 そこに咲いている見事な青をたたえた薔薇にアランは顔を綻ばせた。

 栗色の短い髪と黒の瞳が穏やかな笑みとともに彼の魅力を引き立たせる。


「ようやく咲かせることができたわね。何度も失敗していたからとびきり嬉しいわ!」


「……サリア様が手厚くお世話をされていたからですね」


 弾けるような笑顔で振り返るサリアをアランは穏やかに見つめ返す。


「ううん。違うわ」


「え?」


 しかし、ふるふると顔を横に振るサリアにアランは今度はきょとんとした顔を見せた。


「私はしょせん水をやっていただけよ。この子が咲いたのは庭師が丁寧に剪定や土の管理をしてくれたおかげだわ」


「……それは、庭師も仕事をした甲斐がありましたな」


 使用人の働きをきちんと評価するサリアにアランは優しく頷いた。


「お礼にあとでお菓子を焼いてプレゼントしてあげましょ!」


「それはきっと喜ぶでしょう」


「ふふふふ」


 ガルセンティア公国第一王女、サリア・ガルセンティア。

 巷で囁かれている『呪われた聖女』その人である。

 彼女の傍らにはいつも一人の男がいた。

 近衛騎士のアラン・ギルバート。

 幼い頃からサリアに仕え、サリアを守る近衛騎士として鍛練を欠かさない真っ直ぐで心優しい男。



『呪われた聖女』を娶る貴族などいない。


 そして、ガルセンティア公国は男女問わず、最初に生まれた王の子を王太子とする。

 サリアが父の後を継いで公国の王となった暁にはアランをそのまま夫として迎えるのではないか。

 周囲からそう囁かれるほどに仲睦まじい二人であった。


 そんな二人の運命を容易く切り裂く報せが届くのはそれからすぐのことだった。




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