どうしようもないほど下半身が腐っている私は、一発逆転をかけて投資系外資銀行の面接を受けることにした。(序)
「次の方、どうぞー」
その一言と同時に私の心臓のドクドクと強い鼓動が高鳴り始めた。前に出て、面接官の目の前に立ちすくむ私。頭は真っ白である。
「それではお座りください」
そう言われたって、そうできない事情がこっちにもある。なぜなら、私の下半身がどうしようもないほど腐っているせいで座ることができないからだ。しかし面接官の言うことに歯向かってしまえば内定がもらえないことは必至。俗に言う「詰み」である。それでも私には「投了」することなんて、たとえ命の灯火が消えたとしてもできない。
「立ったままでも、いいですか?」
頬に微かな笑みを浮かべながら、できるだけ不自然さを感じさせないように提言をしてみる。まるで世の中にある当たり前の二択の片方を提案したかのように。
「ダメです」
あまりに冷徹であった。眼前の表情が弛むことは決してなかった。一個人の意見を尊重して、立ったまま面接を行うという優遇措置を行ってくれるなどという未来は、私の単なる傲慢さが生み出した妄想に他ならなかったのだ。
一発逆転。誰もが夢見るその景色は、限りなく誰も手に入れることはできない。