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第77話 視察の誘い

 今日も今日とて私は解毒ポーションを作っていた。


「ふひー、同じものを作り続けるのってキツいー」


「と言ってもカコは加護の力を使うだけで薬を調合してる訳じゃニャいニャ」


 おおっと、ニャットさんから鋭いツッコミ。

 でも同じことを毎日繰り返すってそれはそれで面倒なんだよ。

  

「まぁそうなんだけどね。あっ、材料が切れた」


 とはいえ材料に限りがあるので、ずっと作っている訳じゃない。

 幸い汚染水は樽に入れてあったから、こっちは問題ないんだけど、ポーションはそうもいかない。

 傷を治してくれるポーションは冒険者だけじゃなく、旅人や町の人達も使うからだ。

 なので買い占める訳にもいかず、不自然にならない量を買い集めては解毒ポーションの合成をしていたのだ。 


「今日はここまでだね」


 こうなると暇なので午後からは街に出て散策する事にする。

 運がいいと国外から流れてきた珍しい品が市場やお店に出る事があるから、定期的に見て回った方が良いんだよね。


「ほう、異国の武具も売っているのか。これは興味深いな」


 今は合流したメイテナお義姉様達も居るのでなかなかの大所帯になっている。


「おお、お嬢ちゃんも買いだしかい? ほれ、姉ちゃんと一緒に食いな」


 そう言って顔なじみとなった露天のおじさんが果物をくれる。


「ありがとうおじさん!」


「かたじけない」


 掘り出し物目当てに頻繁に出歩いていたら商店街の人達にすっかり顔を覚えられちゃったんだよね。

 まぁ東部に売る為の商品を色々探しては買い漁っていたから、お得意様って面もあるんだけどさ。


「今日は何か面白い物出てましたか?」


「そうだなぁ、市場の中ごろに北方の国の食材が多少だが入っていたぜ」


 おお、それは良いね。

 量が少なくても合成すれば鑑定図鑑がさらに充実するから損にはならないしね。


「ありがとうおじさん、また何か買いに来るね!」


「期待せずに待ってるよ」


 露店のおじさんと別れ、私達は市場に向かう。


「やれやれ、すっかり君の方が町の顔になってしまったな」


「あっ、レイカッツ様」


 そこに現れたのはレイカッツ様だった。


「やぁカコ嬢」


「レイカッツ様、今日はどうしたんですか?」


 汚染魚の件で公爵様が忙しくなったせいで、レイカッツ様は海軍の仕事を押し付けられて忙しくなったって聞いたんだけど。もしかしてサボり?


「サボりじゃないよ」


 私の考えている事を察したのか、レイカッツ様が苦笑しながら否定してくる。


「すまない。君に頼みたい事があるんだ」


 ◆


「私が研究所の視察に同行ですか?」


 レイカッツ様の頼みとは、公爵家が所有する研究所の視察に同行して欲しいというものだった。


「そうなんだ。人魚達から我々が本当に研究を中断したのか疑問視されてね。彼等は海が汚染された事で研究所に行くことが出来ない。だから本当に研究を止めて汚染水の流出が止まったのか確認できないから信用できないと疑っているんだ」


 まぁ人魚からしたら毒の沼を進んでダメージ受けながら目的地に行くようなものだからねぇ。

 解毒ポーションが用意できるようになったとはいえ、汚染水の原液が垂れ流されていた研究所に行くのは大変だろう。

 ただそれにしたって分からない事がある。


「でも何で私が同行する必要があるんですか? 直接海から行けなくても公爵家の船に乗せて貰えばいいだけの話では?」


「おそらくだが、君が今回の事件の間接的な被害者だからだと思う」


 レイカッツ様は私が呼ばれた理由が同じ公爵家のやらかしの被害者だからだと言う。


「はっきり言えば、侯爵家の令嬢である君が同行する視察でごまかしを行えば、当家は侯爵家に対して本気で謝意を示していなかった事になるからね。それを考慮して君の同行を求めたんだろう」


「成る程、私の義妹は貴方がたのゴタゴタに巻き込まれたと」


 と、今まで黙っていたメイテナお義姉様が会話に加わって来た。


「仰る通り。これは当家の借りにしてほしい」


「成る程、カコはどうしたい?」


「ふぇっ!? 私ですか?」


 いきなり話題を振られてビックリしてしまった。

 てっきり侯爵家の交渉役としてメイテナお義姉様が決めると思っていたのに。


「ああ、人魚達はカコを求めているからな。カコが決めなさい」


 うーんそうだなぁ。人魚の皆には助けてもらった恩もあるし、私としてもその研究所は気になる。

 それに市場で売ってるお魚の安全がかかってるしね。


「ええと、人魚達が私を頼っているのなら、力になってあげたいです」


「分かった。レイカッツ殿、その申し出受けよう」


「おお、感謝いたしますカコ嬢、メイテナ嬢!」


 こうして私達は研究所の視察に同行する事になったのだった。

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