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第196話 後継者精霊の洞窟に赴く

「……って感じなんだけど」


 人のいない場所にやって来た私達は、というか私は、怖い顔になっているニャットに改めて事の経緯を説明させられていた。


「…………ニャハァ」


 何ともいえない溜息を吐くニャット。


「本当におニャーは……」


「いやだってまさかこんなことになるとは思わなかっムギュ」


「やかましいニャ! エリクサーは百歩譲って分かるとしても、後継者の宝珠の方は碌な事にニャらんって予想ついた筈ニャ! ニャにかする前に一言相談しろっていつも言ってるのを忘れたのニャ!」


 言い訳を肉球で遮られた私は激おこプンプンなニャットのお説教を喰らう。うーんプニプニ。


「まーまー、やっちゃったものはしょうがないじゃない。それにカコのお陰で私は精霊王になれたし」


「「「我々も大精霊に格が上がりました」」」


「おニャー等は自分が得したからそう言えるのニャ!」


「勿論そうよー」


「くっ、このドブ精霊がニャァ~!」


 いかん、このままだと怒ったニャットの長時間お説教コースだ。


「そうだ! そろそろご飯にしない! 私お腹すいちゃったなー!」


「おニャー、そんな見え透いた誤魔化しが効くと思って……」


「それにほら、スキルがパワーアップしたお陰で品質超過って能力が付くようになったし、これでお肉を品質超過したら最高品質のお肉以上の凄いお肉が食べられるかもしれないよ!」


「……最高品質以上?」


 私の言葉にニャットのヒゲがピクリと揺れる。


「そうそう、最高品質以上のお肉だよ! 美味しい物を食べれば気持ちも落ち着くよ!」


「…………」


 ど、どうだ?


「……まぁ、飯は重要ニャ。説教はその後でも良いのニャ」


 おっしゃー勝ったー!


「それじゃあすぐにご飯の用意をするね!」


「わーい、カコのご飯だわ! 貴方達運が良いわね。この子の用意するご飯はすっごい力に満ちているんだから!」


「「「それは楽しみです!!」」」


 あっ、これ全員分のご飯作らんとあかん奴だ。


 ◆


「美味ャいのニャァァァァァァ!」


 夕飯を口にしたニャットが叫ぶ。


「美味すぎるのニャァァァァァ!!」


 ブンブンと尻尾を振ってお肉を齧るニャット。


 ニャットが食べているのは私が品質超過で合成したお肉を焼いただけの料理。

 本当は手の込んだものを作ろうと思っていたんだけど、合成が完了したお肉を見た瞬間、ウッキウキだったニャットの顔が真顔になって「まずは純粋な肉の味が試したいから焼くだけで良い」とか言い出したのである。しかも語尾まで忘れてた。


 まぁその方が作るのも楽なので、切って焼いただけのお肉をパパッと出したんだけど、その結果がこれだった。


「ニャんて美味い肉なのニャ! たとえドラゴンの肉でもここまで深い旨味を蓄えた肉は無いのニャハァ……!」


 もう絶賛ですよ。

 凄い勢いでお肉が減ってくんだわー。


「んー! ホント最高! すっごく力が満ちて来るわ!」 


「ええ、仰る通りで! 大精霊に格が上がった私もさらに上に上がれそうな気がしてくるほどです!」


 なんか精霊組は別の方向で興奮してる。


「「「「おかわり!」」」」


「あー、はいはい」


 これ、私の分残るかなぁ……


 ◆


「はー、まぁ、あれだニャ。やっちまった事は仕方ない事だニャ。反省して次に活かせばいいのニャ」


「あ、うん、気を付けるね」


 もう完全に満足しきった顔でヘソ天してるニャットはご満悦顔だ。

 そしてお肉を食いそびれた私は保存食を頂いています。なんか理不尽だな。


「あっ、そう言えばエリクサーの合成材料に使った素材ってどこで手に入れたの? なんか見覚えのないのばっかりだったけど」


「それでしたら採取した場所にご案内いたしましょうか?」


「いいの?」


「はい! これ程力の籠った品を頂いたのです! 是非お礼をさせてください!」


 やった! これでエリクサーを量産できるよ!


「こちらです!」


 そうして大精霊達に連れてこられたのは、地面に大きく空いた亀裂だった。


「うわぁ何これ? 谷って言うには狭いし、それに周囲の木々や草で凄く見づらい。底の方は真っ暗だしこれもう縦に伸びた洞窟じゃない?」


「ここからは時折強い風が吹きますので、壁面に捕まって降りるのは無理です。我々がお運びいたします」


「あ、うん。よろしく」


 大精霊に抱っこされると私達は亀裂をゆっくりと降りてゆく。

 降りてゆくと時折かなり強い風がそこから吹いてきて、その度に壁面がパラパラと剝がれ落ちる」


「これは厄介ニャ。命綱も無しに降りたら強風の衝撃で掴まっている岸壁ごとはがれて真っ逆さまだニャ」


「これうっかり落ちたら戻ってこれないよね」


「というか落ちたら命が無いのニャ。これだけ降りてもまだ底が見えないのニャ。かなり深い穴ニャ。きっと運悪くここに落ちて戻ってこなかった連中がかなりいる筈ニャ」


「ひえぇ」


 でも分かる。だって深い森の中で視界が効かない場所の足元なんだもん。私だって言われるまで気付かなかったし。

 何も知らない人がここに来たら絶対落ちてるよね。当然命綱なんてつけてる暇もなく。


「この側面に空いた穴の奥にあります」


 穴の底まで降り切ることなく、私達は岸壁の途中に空いた横穴に入る。


「あー、こりゃ分からんニャ。穴の上側が延びて床部分が隠れてるから反対側の壁伝いに降りてないと見えないのニャ」


 でも反対側から飛び移ろうとするには広いし、下手に飛ぼうとしたら壁面が崩れるか強風で狙いが逸れて地面にダイブ待ったなしだ。


「足元が滑りやすいのでこのまま運ばせて頂きます」


 そのまま大精霊達に運ばれながら奥へ向かうと、不思議な事に真っ暗な筈の洞窟がうっすらと明るくなってきた。


「洞窟の中なのになんで!?」


 何か光源がある訳じゃないのに洞窟の中がはっきりと見える不思議。


「見てください。そこら中に生えていますよ」


「うわっ、ホントだ!」


 大精霊の言った通り、洞窟の奥には無数の薬草が生えていた。


「好きなだけ持って行ってください」


「え? たくさん獲ったら迷惑でしょ?」


「どうせ誰も欲しがりませんし、放っておけば勝手に生えてきますから」


 あーそうか。こんな所まで薬草を採取しに来る人もいないよね。


「でも野生動物がご飯にするかもしれないし、迷惑にならない分だけ貰うね」


 折角なので何種類かは土ごと掘り起こして採取しよう。上手くすれば栽培できるかもしれないし。


「無駄だからやめておくニャ」


「え? 何で?」


 しかしそんな私の考えをニャットが止める。


「この薬草達はここでしか栽培出来ないのニャ」


「それって洞窟の環境ってこと? でもそ湿度や温度、日当たりを再現すればいけるんじゃない?」


 植物園の温室とか水族館の水槽とかまさにそれだもんね。現地の環境を再現する為に湿度とかいろいろ調整が大変で予算が大変って聞くし。


「そういう問題じゃニャーのニャ。ここはただの洞窟じゃないのニャ」


タダの洞窟じゃない? じゃあ有料……いえ何でもないです。


一瞬ボケようかと思ったけどニャットがフレーメン反応みたいな顔をしたのでそっと言葉を引っ込める。


「ドブ精霊、おニャーならここが何処か分かる筈ニャ」


「ええ、勿論分かるわよ。まさかこんな所にあるとは思ってもいなかったけどね」


 と、ニャットからのパスに珍しくミズダ子が呆れたような様子を見せる。


「ミズダ子は何か知ってるの?」


「ここはね……」


 とミズダ子が洞窟のさらに奥に視線を向けて言葉を続ける。


「精霊王の住まう地、精霊界への入り口よ」

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