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第193話 伝説の素材

「はー、風が気持ちいいねぇ」


「ニャ、ようやくまともな風になったのニャ」


 国中の水源の解放を終えた私達は、久しぶりに3人でのんびりしていた。

 特にニャットは汚染水の影響で空気が臭くなっていた事が本当にキツかったみたいで、それが解消された今は溶けた猫になって草むらに溶け込んでいる。まさに猫は液体。


「カコのお陰で精霊達も喜んでるわ」


とミズダ子も精霊達が喜んでいたと彼等の代わりにお礼を言ってくる。


「だといいけどねぇ」


 精霊達も今回の件ではかなり迷惑を被っていたらしいから、同じ人間のやらかしを解決できてよかったよ。

 まぁまだこの事件を起こした黒幕を捕まえた訳じゃないから解決したとは言い難いんだけどさ。

 …….もしかしたら精霊達の怒りで流された悪党達の中に混じってたかもしれないけどね。


「ホントよ。すっごく喜んでるんだから」


『オレイ シタイ』


「ほら」


「え?」


 ふと聞き覚えのない声に起き上がると、ミズダ子の側に小さな光が幾つも集まっていた。


「今のこの子達?」


 でも小さな精霊は喋れなかったと思うんだけど。


「清浄な水源が解放されたことで意思を伝えるくらいの力は戻ってきたみたいよ」


「そうなんだ。よかったね」


 私がそう言うと、精霊達は嬉しそうに私の周囲をフワフワと回る。


『オレイ シタイ オレイ シタイ』


「お礼? 別にいいよそんなの。それに君たちに迷惑をかけたのは私と同じ人間だし、同族の悪さの尻拭いをしたようなもんだって」


「まぁやったのはニャー達だけどニャ」


「それは本当にそう」


 実際ニャットに運んでもらってミズダ子に力を貸してもらったから、私は何もしてないんだよね。


『ミコ ト アイツラ チガウ ダカラ オレイ スル』


 けれど精霊達は私はあの悪党とは違うからお礼をしたいと譲らない。


「でもなぁ、別にお礼を期待してやった訳じゃないんだよなぁ」


 そもそもここでお礼を貰ったら精霊達を酷い目に合わせた連中と大差ない気がするんだよね。

 ここは正義の商人カコさんは何も求めずクールに去るべきだと思うんだ。


「ニャら売り物になる物を集めて貰えばいいのニャ」


「って何言ってんのニャット!」


「おニャーこそニャに言ってるのニャ。苦労したんだから礼を貰うのは当然ニャ。無償の奉仕ニャんてそれこそどんな裏があるかわかったもんじゃニャくて不安になるのニャ」


 せ、精霊的にはそういうもんなの?


「あら良いわね。貴方達、カコは商人だから人間がよく集めている薬草や鉱石、それに面白いモノを集めて来なさい」


「ちょっ、ミズダ子まで⁉︎」


『ワカッタ ヤクソウ コウセキ オモシロイモノ アツメル』


 言うが早いか、精霊達は四方八方に飛んでいってしまった。


「あー! 行っちゃった⁉︎」


「これで後は待つだけニャ。ククク、何もしてないのに貴重な品が集まるのニャ。おニャーの好きな不労所得なのニャ、嬉しかろうニャ?」


「そりゃ好きだけどさ、なんか利用してるみたいで申し訳ないよー」


「やれやれ、相変わらず小市民だニャ」


「良いのよ、元々小さな精霊は誰かの役に立つのが好きなんだから。カコの為となったら尚更よ」


「私の為なら?」


 それは恩人だからって事?


「どうしても嫌ならここの精霊達にも何か力のあるモノをあげれば良いわ。運が良ければ中位の精霊になれるかもしれないしね」


「あ、それ良いかも。んじゃ何か食べ物を最高品質にして精霊達へのお礼にしよう」


 そうして私が最高品質の果物の合成を終えた頃、精霊達がいろんなモノを持って帰って来た。


『オレイ オレイ』


『ヤクソウ コウセキ マセキ キバ キノミ キノコ イシ』


『イッパイ モッテキタ』


 精霊達はいろいろなモノをドザザザと地面に置いてゆく。


「うわぁ凄い量」


 精霊達は本当にいろんなモノを集めて来てくれたらしく、結構な大きさの小山が出来ていた。


「ええと、ありがとうね皆」


『ミコ ウレシイ? ミコ ヨロコブ?』


 私の周りをクルクル回りながら精霊達はお礼は嬉しかったかと聞いてくる。

 まるで褒め待ちのワンちゃんみたいでちょっと可愛い。


「うん、すっごく嬉しいよ。ありがとう皆」


『ミコ ヨロコンダ ミコ ウレシイ!』


 私がお礼を言うと精霊達は更に速度を上げて喜びを表現する。


「あっ、これはお礼ね。皆で食べて」


 私は忘れないうちに精霊達に合成した果物を差し出す。


『ッッッッッ〜〜〜〜ッ‼︎』


 そしたら精霊達がものすごい勢いで周囲を跳ね回り始めた。


「え? 何々⁉︎」


 突然の精霊達の奇行に困惑してしまう。


「見たこともないくらい力のあるものを差し出されたからびっくりしてるのよ。ほらほらあなた達、カコにお礼を言いなさい」


『ミコサマ アリガトウ!』


『アリガトウ!』


『アリガトウ!』


 精霊達はよっぽど嬉しかったのか。私の周りをドリブルするバスケットボールみたいに猛烈な勢いでバウンドしながらグルグルと回る。

 目が回らないのかな?


「ところでこれって何なんだろう?」


 改めて精霊達が持ってきてくれた品を見ると、どれも見覚えのない品ばかりで用途がさっぱり分からない。

 もしかしてこの国の特産品だったりするのかな?


「いつものやって調べれば良いのニャ」


「そうだね。それじゃあ片っ端から合成して試してみよう!」


 そうと決めたら私は精霊達が集めてくれた品の合成を始める。


「先ずは一種類ずつ合成! そして鑑定!」


『合成甘味料:二種の薬草を混ぜ合わせた事で甘みを感じられるようになった混合液。薬が飲めない子供にも好評。薬によっては悪影響が出るので注意。糖分はないが摂取しすぎると体に悪いので程々に』


 なんかいきなり人工甘味料が出来ちゃった。


「他には……」


『ハイメイプルシロップ:とても甘いメイプルシロップ。熊系の魔物の大好物で10km先からでも匂いを辿ってやってくると言われている。採取する際は集まって来た熊系魔物のランクで大きく難易度が変わる』


「はい魔法の袋入り!」


 ヤバいヤバい、こんなん出しっぱなしにしてたら大惨事になるわ。

 大丈夫だよね?ほんの数秒出してただけで熊系魔物がこっち向かって来てないよね?


 イスカ草以来のヤバいアイテムにヒエッとなりつつも合成を続ける。


『マトマの実:栄養価の高い野菜。幅広い範囲の病気を治す為の癒病薬の原料になる。冷やしてスライスすると美味しく、煮込んでソースにすることも出来る』


 異世界のトマトかな?


「というか色んな病気を治す薬の原料とか異世界の薬草凄いなぁ」


 お医者さんいらずなのでは?


 さて他にはっと・・・・・・


『フイメの芽:エリクサーの原料。単体では何の役にも立たないが調合することでエリクサーとなる草』


「おー、今度はエリクサーの材料かぁ」


 流石ファンタジー世界。エリクサーといえば錬金術ゲームの最終目的レベルのアイテム。

 そんな物を作れる材料が見つかるなんて……ってあれ?


「え、エリクサーの材料ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっ⁉︎」

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