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第188話 水源目指して行商人

「いざ水源!」


 再び水源を目指した私達は、道中通りがかった町に寄る事にした。

 目的は三つ。

 まず一つは……


「旅の商人でーす。町の空気を綺麗にするポーションはいりませんかー?」


「はぁ!? そんなモンあるのか!?」


 汚染された町の空気を綺麗にする事。


「本当に空気が綺麗になった!!」


「すげぇ! 思いっきり息を吸い込んでも咳き込まないなんていつ振りだ!?」


 町の人達が久方ぶりの綺麗な空気に喜び感涙にむせび泣く。


「アンタは町の恩人だ!」


「水も綺麗になったぞ! 井戸の水が飲める!」


「あっ、井戸の水は水源が汚染されている可能性があるので、暫くしたらまた汚れると思います」


「ええ!? そうなのか!?」


 これは水の大精霊(強化版)であるミズダ子のお墨付きなので間違いない。


「なんとかならないのか?」


「とりあえず予備の解毒ポーションを買って貰うことくらいですね。根本の問題を解決しないとこればっかりは」


「根本の問題ってのは何なんだ?」


 町の人達がどうすれば町の空気と水が綺麗になるのかと質問してくる。

 これが第二の理由。


「上流、もしくは水源が汚染されている筈なので、その原因を取り除かないといけないんです。この辺りの水が何処から流れてきているかご存じですか?」


 住民に原因の周知と水源の確認だ。

 水源を知りたいならこの辺りの人達に聞くのが一番確実だからね。


「このあたりの水源って言うと、マルカルト侯爵の領地じゃないか? ロロトラ山脈の雪解け水がこの辺の川の源流の筈だ。


「ロロトラ山脈?」


「ほら、あそこに上の方が白い山が見えるだろ? あれがロロトラ山脈だ。あそこの雪が解けて川に流れ込んでるんだよ」


 成程、雪解け水が川の水源になってたんだ。

 てっきり湧き水とか泉とかがあるのかと思ってた。


「水源が分かっているのに水源を管理する貴族に調査して貰う話は出なかったんですか?」


「いやー、俺達ゃ水源が原因だなんて考えたこともなかったよ。急に街の空気がおかしくなって水の味もおかしくなったから、何が何やらで。領主様には訴えたけど、領主様もどうなってるか分かんないらしくてよ、水魔法使いを雇って飲み水を確保したり、風魔法使いに定期的に町の空気を入れ替えて貰ったりするくらいしか方法が見つからなかったんだよ」


 へー、風魔法使いを使って換気してたんだ。なかなか面白い対処法だね。

 あとはあれだな。水魔法使いが居るから飲み水が何とかなったのが危機感の低下につながったとかかな?


「でも水源を管理してるのが侯爵かぁ。そりゃ文句を言いづらいよねぇ」


 私も侯爵家の養子になってから知ったけど、侯爵って貴族の中では上から数えた方が早いんだよね。王族と元王族の公爵を除いたら実質トップオブ貴族。

 辺境伯っていう例外的な存在もいるらしいけどまぁそこはいいや。


「色々教えてくれてありがとうございます! ところで、町の問題が解決した事ですし、他の商品もいかがですか?」


 そして第三の目的、商売だ!

 他の町で購入した品を合成で品質をあげたり、別の商品に変化させた品を売りまくる!

 なんか久しぶりにちゃんと商売してる気がするよ。


「美味しい食べ物もあるよ!」


「んー? コイツ等は別にこの辺でも買えるだろ」


 けれど道行くおじさん達の反応はイマイチだ。


「そんな事ないよ! ほらおじさん、騙されたと思ってこの葉物を一枚食べてごらんよ!」


 ペリッとキャベツみたいな野菜を一枚はがし、おじさんに強引に手渡す。


「お、おう。モグ……ッ! 美味い!」


 すると思った以上に味がよかったようでおじさんは目を丸くする。


「マジか、この辺でも普通に買える野菜なのにこんなに味が違うのか!?」


「この作物は汚染されてない土地で作ったものなんだよ。この辺りの作物は雨水以外は汚染された水を畑に撒いていたから、野菜の味も悪くなってたんだよ」


「マジかよ、全然気づかなかったぞ」


「作物の味は少しずつ悪くなっていっただろうから、ずっと食べ続けていたおじさん達はそれに気付けなかったんだよ」


「なんてこった」


 自分達が味の悪くなったものをそれと知らず食べていた事におじさん達は驚愕の顔を浮かべる。

 まぁホントのところは分解で毒を分離して合成で味を良くしたから美味しいのは当然なんだけどね!


「汚染された食べ物を食べ続けるのは体に悪いから、新鮮な野菜を買っていってよ」


「あー、そうしたいんだが、ウチの母ちゃんが買ったのもあるからなぁ」


 と、おじさん達は既に買い込んでおいた食料があるからと手が伸びないみたいだ。


「それはさっきの解毒ポーションに漬ければ大丈夫だよ。味はちょっと落ちるけど毒素は抜けるから」


「本当か!? じゃあそのポーションを追加でくれ!」


「俺も頼む!」


「俺も!」


「俺は野菜も頼む。ウチの食堂で新鮮な美味い野菜料理を提供したいんだ」


「まいどあり!」


 そうして、暫く商売を続けていると、遠くからざわめきが近づいて来た。


「カコ、来たのニャ」


「ん、それじゃあ行こうか」


 私は商売を切り上げると、ニャットに乗って町中を駆け出す。


「お、おい! どこに行くんだ!? もっと解毒ポーションってのを売ってくれよ!」


「ポーションは水源の問題が解決すれば要らなくなるよー! 領主様に水源の問題を解決してってお願いしてー!」


 追いすがる町の人達に水源の話をもう一度すると、私達は町を飛び出していった。


「根回しは順調だね」


 私達が町から逃げ出したのは、領主の使いの兵士達から逃げる為だった。

 カーマイン子爵の時も呼び出されたからね。

 でもあの人と会った時の反応から、本当に何も知らない貴族だった場合は時間を無駄に取られちゃうから、町の人達に伝言代わりに根本的な問題を伝えてさっさと逃げ出すことにした訳だ。


 本気で事件を解決したいなら近隣の貴族達と連名で侯爵か王家に調査を申し込むだろうからね。

 幾ら上位貴族でも沢山の貴族が連名で調査を要求してきたら対応しない訳にはいかない。

 同時に接触を求めた貴族が侯爵の手の者だった場合も考えて、さっさと逃げる事にした訳である。


「水源までまだまだかかりそうだし、面倒事に巻き込んでくれた分儲けさせてもらうからね!」


 あと犯人かもしれない侯爵はそうじゃなくても調査してなかった責任を貴族達に追及されて大変な目に遭え。

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