第121話 肝を増やそう
「おかえりー!」
日が落ちてしばらく経った頃、マーロックさん達が戻ってきた。
「おお、カコか」
「どうでしたか?」
どうとは勿論ラマトロ狩りの事だ。
「……正直、あの魔物が厄介だな。ラマトロの前に奴らの数を減らす必要がありそうだ」
「連中、俺達を無視してラマトロを狙うからな。特にラマトロを仕留める直前に一斉に向かってきやがる」
「その癖狙われたラマトロを守ろうとしたら手薄になったラマトロに向かいやがる。本当に厄介な奴らだぜ」
荒くれ者達もあの魔物には手を焼かされているのか、舌打ちしながらラマトロを横取りされた事を悔しがっている。
どうやらマーロックさん達も苦労しているみたいだね。
魔物は数も多く、とにかくラマトロの肝だけを狙うから守りながら戦うのは大変みたい。
「本来なら夜を徹してラマトロを追う予定だったが、あの魔物を一網打尽にする為の準備をする為に一旦戻ってきたわけだ」
成程、それで町に戻ってきたんだね。
「……」
そんな中、ロスト君は町の門を見つめ、一人拳を握りしめていた。
その姿は早く吹雪の中に戻ってラマトロを狩りたいと無言で語っていた。
「ロスト君」
そんな彼に、私は小さな袋を差し出す。
「はいこれ」
「……何だよ?」
あと少しというところでラマトロを狩れないでいる事で、ロスト君は不機嫌そうな様子を隠そうともしない。
ふふふ、そんな態度をとって良いのかなぁ?
「カクラム病を治す薬だよ」
「何だよ、そんなモン……え?」
今、何て言った? とばかりにキョトンと目を丸くするロスト君。
「今、何て言った?」
ぷふっ、予想通りのセリフ頂きました。
「カクラム病を治す薬だよ」
「なっ!? えっ!?」
もう一度説明してあげると、ロスト君は素っ頓狂な声をあげる。
完全に予想外の事だったみたいで、面白い程狼狽するロスト君。
そうなのだ、ラマトロの肝の合成に成功した私は、すぐに町の薬師に頼んでカクラム病の薬を作って貰ったのである。
何せラマトロの肝はあっという間に悪くなっちゃうらしいからね。急いで薬にしてもらったんだよ。
「ラマトロの肝が手に入ったのか!?」
同じように驚いたのは、マーロックさん達だった。
「はい。偶然帰り道でラマトロに遭遇したのをニャットが狩ってくれたんです」
と言う事にしておいた。
何せ合成スキルで作りましたとは言えないもんね。
「そうか、ハグレが居たのか……運が良かったな」
うん? その割にはあまり嬉しそうじゃないような……?
「良かったな坊主」
けれどマーロックさんは穏やかな笑みでロスト君の頭を撫でる。
はて、気のせいだったのかな?
「あっ、そ、そうだ、薬の代金!!」
マーロックさんに頭を撫でられた事で再起動したのか、ロスト君が薬の代金を支払おうとポケットを漁りだす。
「あー、代金は別の所から貰ってるから」
ホントはまだ貰ってないけど、そう言っておかないと自分が払うって言いそうだしね。
「え? 貰った? 誰に?」
えーっと、それを言ったらノーマさんに怒られそうだしなぁ。何かいい誤魔化し方は……あっ、そうだ。
「そんな事よりも、早くその薬をリルクちゃんに飲ませなくて良いの?」
「っ!? そうだった! すぐに飲ませてくる!」
上手く誤魔化されてくれたロスト君は、慌ててリルクちゃんに薬を飲ませるべく飛び出したんだけど、すぐにブレーキをかけたように止まってこちらに振り向く。
「その、ありがとな! 絶対に後で薬の代金を払うから、居なくなるなよ」
それだけ言うと、ロスト君はリルクちゃんの待つティキルタちゃんの屋敷に向かって駆け出したのだった。
「ふー、これで一件落着だね」
ラマトロの肝も手に入ってリルクちゃんのカクラム病が治れば、ティキルタちゃんからの依頼も完遂。
後は報酬を貰うだけだよ。
ティキルタちゃんの恋の行方は……悪いけど知らん!
離れた場所から見てる分には面白いと思ったけど、いざ巻き込まれたら滅茶苦茶面倒だったよ!
ついついお金とコネ目当てに引き受けちゃったけどさ。
後は回収したラマトロの素材の分配したら一連の面倒事も終わりかな。
そしたら吹雪が止むのと同時に今度こそ町を出るぞー!
「ヒャッハー! 罠を用意したぜ!」
などと考えていたら、魔物を討伐する為の準備に奔走していた荒くれ者達が戻ってきた。
「これでいつでもあの魔物ヤローを一網打尽に出来るぜぇ!」
あっ、しまった。先に言っておけば良かったね。彼等には無駄な手間をとらせちゃったよ。
「よし、それじゃあ一狩り行ってくるか」
「「「おおーっ!!」」」
けれど何故かマーロックさんは再び吹雪の中に向かうと言い出す。
「ええ!? 何で!?」
ロスト君の件は解決したんだよ!?
もう行く必要ないじゃん。
「……マコには言っていなかったが、実は俺達の目的もあのラマトロ達なのさ」
「え? マーロックさん達も!? でも皆さんが協力してくれたのはロスト君の件があったからなんじゃないですか?」
どういうことなのと私はマーロックさんに疑問をぶつける。
「ハッハー! 俺達ゃ冒険者だぜ! 同情だけで命を懸けるかよ! 」
「まぁそういう事だ。実は今、北部全体でカクラム病が流行っているんだ」
「ええっ!? そうだったんですか!?」
カクラム病が流行っている!? しかも北部全体で!?
「ああ。本来ならそう簡単に流行などしない病気の筈なんだが、かなりの患者の数が増えている。その為これ以上のカクラム病の拡散を防ぐ為に各地の町や村では外から人が入るのを制限しているほどだ。それで危機感を抱いた依頼主からカクラム病の薬を作る為にラマトロの肝を集めて欲しいと依頼を受けたんだ」
そうか、だから北都に来るまでに通ったいくつもの町の入り口で行列が出来ていたんだね。
「と言う事は、私達も途中の町に入っていたらカクラム病になっていたかもしれないんだ……」
あっぶなー、調子に乗って町をすっ飛ばしてよかったよ!
「全くだ。運がいいのか悪いのか分からん奴だな」
あはは、いや本当です。
「幸い吹雪の影響もあって、この北都まではカクラム病が流行っていないと安心していたんだが……既にこの町でも流行の兆しが見えていたらしいな」
それがリルクちゃんの事なんだろうね。
「つまり俺達ゃカクラム病の薬を作る為に、北部各地から依頼主に集められたって訳よ」
と、荒くれ者達が自分達が何故北都に集ったのかを教えてくれた。
成程ね。でもてっきりこの町にたむろするゴロツキのようなものかと思ってたよ……
「だが今回に限って妙にラマトロが見つからなくてな。あの小僧の証言は俺達にとって渡りに船だったんだ」
そっか、ロスト君を探してくれたのはラマトロ探しのついでだったのか。
でもそのおかげでラマトロと会えたんだから、マーロックさん達にとっても運が良かったと言えるんだろうね。
「あっ、じゃあ吹雪の中で私を助けてくれたのも、ラマトロを探して吹雪の中を歩いていたからなんですね!」
「そういう事だ。ラマトロの代わりにとんでもないのが見つかったがな」
うわぁ、って事はカクラム熱が流行ってなかったら、私達がマーロックさんに見つけて貰えることも無かったんだ。あ、危なかったぁー。危うくあそこで凍死する所だったよ。
病気に感謝するのもおかしな話だし不謹慎だけど、ありがとうカクラム病!
そして色々な疑問も解けたよ。
「ラマトロを狙う魔物が居た事は予想外だったが、このチャンスを逃がすつもりはない」
そう言ってマーロックさん達は出発の準備を整える。
「マコ、お前が作ってくれたトロ汁は美味かったぞ。この狩りが成功したらまたトロ汁を食わせてくれ」
「ああ、ありゃあ美味かったな! また食いたいぜ!」
「お前は食い過ぎなんだよ! 今度は俺達が先に食うからな!!」
どうやら豚汁改めトロ汁は彼等のお気に召したみたいだね。
ちょっとほっこりしつつも、私は大事な事を思い出す。
「あの、出発する前にさっきのラマトロの分け前の話をしたいんですけど」
「ラマトロの分け前?」
「はい。さっきの狩りで回収したラマトロなんですけど、あれを全部私に買い取らせてくれませんか?」
「買い取る? あの肝を喰われたラマトロをか? 言っちゃなんだが肝の無いラマトロは大した価値はないぞ」
「トロ汁は美味かったけどな!」
「はい。肝の無いラマトロで構いません。全部買い取りたいんです」
「まぁ俺は構わんが」
そう言ってお前等はどうだと荒くれ者達を見るマーロックさん。
「俺達も構わねぇぜ! トロ汁は美味かったが肉以外は特に使い道も無いからな!!」
やった! これでラマトロの素材を自由に合成できるよ!
「それと、今回の狩りでラマトロの素材を回収していたのなら、そちらも込みで買い取らせてほしいんですけど」
「構わねぇぜ! 大した金にはならねぇが、多少は金を回収しようと持ち帰ったのがあるぜ!」
おお、それはラッキー! これで更に素材が手に入るよ!
「えっと、代金は……」
「それは戻ってからで良い。すぐに狩りに出たいからな」
おっと、そうだった。私のスキルの事を知らないマーロックさん達にとっては、時間との勝負だもんね。
「分かりました。皆さんも気を付けてくださいね。帰って来たらまたトロ汁をご馳走しますから」
「はは、それは楽しみだな」
「「「ヒャッハー! トロ汁だぁーっ!!」」」
私の言葉でやる気を出したのか、荒くれ者達が雄たけびを上げて門へと駆け出してゆく。
いやだから町の人達が驚いてるって。
「完全に盗賊が獲物を襲いにアジトから飛び出していくようにしか見えないんだよなぁ……」
◆
マーロックさん達を見送った私は、再び冒険者ギルドへとやってきた。
「あら、貴方はさっきの。もしかして解体の件で何かあったのかしら?」
解体を依頼した受付のお姉さんなら話が早いかなと思って同じ受付に向かった私だったんだけど、逆に何かトラブルでも起きたのかと困惑させてしまった。
「いえ、また解体をお願いしたいんですけど」
「あらそうだったの?」
「ええ。とても丁寧な解体だったので、またお願いしたくて」
「あら~、そう言ってもらえるとうちの連中も喜ぶわ」
そのまま解体依頼を頼むと、再び解体場へと向かう。
「すみませーん、解体をお願いします」
「おう、ってさっきの嬢ちゃんじゃねぇか」
「はい、またお願いに来ました。今回は数が多いですけど大丈夫ですか?」
「まぁ仕事なら構わねぇぜ。そこに出してくれ」
勝手知ったる何とやら。私は床に描かれた枠線の中にラマトロを全部出す。
「随分と多いな。しかも全部ラマトロ……傷の場所も同じだな」
「これを全部解体してください」
「そりゃ構わねぇがいいのか? これ全部肝が無いんだろ? 肝の無いラマトロは売っても大した金にならねぇぞ。解体料金を払ったらそれこそ新入りの薬草採取程度の金にしからねぇぞ?」
と、このラマトロにお金になる部位が無いと察した解体師さんが私を気遣うように確認してくる。
「ええ、構いません。私が欲しいのは肝以外の部位なので問題ありません」
「……まぁ嬢ちゃんが構わないのならこっちは構わねぇが、しかし今日はもう遅いし、本格的に始めるのは明日からだな。そういう意味じゃ肝が無いのは好都合だが、それでもそれなりに時間がかかるぞ」
「大丈夫です。とりあえず明日の午後に来ますので、その際に解体出来た分だけ先に買い取りに来ますね」
「分かった」
さー、明日から忙しくなるぞー!
まぁスキルで一発なんですけどね。
◆
ラマトロの解体を頼んた二日後の夕方、マーロックさん達が町に戻ってきた。
「お帰りなさいマーロックさん!」
私が声をかけると、マーロックさんは私の姿に気付いて挨拶を返してくれた。
「……ああ、マコか。わざわざ迎えに来てくれたのか。すまないな」
けれど何故かその顔は浮かないモノだった。
「もしかして、ラマトロ狩りに失敗したんですか?」
「そんな事はねぇぜ! 邪魔をしてきたクソッタレの魔物ヤローは俺達がぶっ殺してやったからな!」
「ラマトロだってバッチリ狩ってやったぜ!」
マーロックさんの代わりに荒くれ者達が狩りの大成功を叫ぶ。
「だが、北都全体に薬を行き渡らせるには……な」
「「「……」」」
そっか、マーロックさん達の目的は北部全体のカクラム病を治す事だもんね。
あのラマトロの群れだけじゃ到底足りなかったって事か。そりゃ落ち込むよね。
「だが必要量の一部とはいえ目当ての品が手に入ったのは事実だ。そこは喜ぶべきだろう」
暗くなる荒くれ者達を励ますように、マーロックさんが皆に呼びかける。
「けどよ、このままだと薬の大半は金持ち連中に独占されちまうぜ」
と、荒くれ者の一人が納得していない声で呟く。
「だからこそ急ぎ他の群れを見つけ出さねばならん。あの魔物がアレで全てとも限らんしな」
「へっ、そうだな」
素早く気持ちを切り替えた荒くれ者達が、次の狩りに向けて動き出そうとする。
こういうところは流石腕利きの冒険者って感じだなぁ。完全に見た目と言動で損をしてるよこの人達。
「あの、その前にこれをいかがですか?」
そんな彼等が再び出発の準備に向かう前に、私は魔法の袋から出来立てのホヤホヤのアイテムを取りだす。
「これは?」
「カクラム病の薬です」
「……何?」
実はマーロックさん達を出迎えたのは偶然で、この薬を受け取りに行った帰りだったりするんだよね。
「あっ、数は結構ありますよ」
何せ合成したラマトロの肝を全部薬にしてもらったからね。
まぁ頼んだ薬師さんが肝のタイムリミットに一人じゃとても間に合わないからって知り合いの薬師を総動員して大急ぎで薬を作ってくれたんだけど。
お陰で薬を取りに行った工房は死屍累々と言った酷い有り様だった。その節はお世話になりました皆さん。
「どのくらいあるんだ?」
マーロックさんに問われ、私は受け取った薬の説明を思い出す。えーっと、確か……
「この袋と同じ物が100個分ですね。薬師の人からは一袋10人分との事です」
「千人分と言う事か!?」
薬は数回に分けて飲むらしく、患者に渡す際にここから回数分、小分けにして渡すんだとか。
北部の人口と感染者の数がどのくらいかは分からないけれど、これだけあれば結構な数の患者さんが救えるだろうね。
「どうやって手に入れたんだ!? ラマトロの群れが居たのか!?」
それだけの薬を用意した事に相当驚いたのか、珍しくマーロックさんが声を荒げて尋ねてくる。
「忘れたんですか? 私は商人ですよ。勿論仕入れたんです」
「仕入れた!? 一体どこから!?」
「それは秘密です。大事な取引相手ですからね」
まぁスキルで作ったとは言えないからね。いつものごとく謎の取引相手さんの出番です。
「それは……むぅ、そういうものなのか」
商人として貴重な仕入れ先の事を言えないと言われ、そういうものなのかと納得しきれていないものの飲み込んでくれるマーロックさん。
「しかし千人分か……かなりの数を用意して貰えてありがたいが……もう少し用意できるか?」
「そうですね、取引相手次第ですが多分用意できると思いますよ」
「頼む」
という訳で追加注文入りましたー。
「ではまずカクラム病の薬千人分でしめて金貨5000枚となります」
うーん凄い金額。
ちなみにカクラム病の薬はだいたい金貨5枚が平均なんだけど、何でこんなに高いかというと、全部ラマトロの捕獲が厄介なのが原因だった。
何せ危険な上にとにかく素材が痛みやすいもんだから、仕入れの難易度が鰻登り。
さっきも町に戻ってきたばかりの荒くれ者達の何人かが、急いでラマトロの肝を薬師の所に運んでいったくらいだもん。
ただ薬の調合自体は簡単らしく、素材さえ自分で用意できれば、カクラム病の薬は結構お安く作ってもらう事が出来るんだよね。
ロスト君が吹雪の中で一人ラマトロを求めてさまよっていたのもそれが理由の一部だった訳だし。
でも値段を決める為に薬を売っているお店に行って話を聞いてみたら、この値段だと言われて目ん玉飛び出るかと思ったよ。
だって金貨5枚って、地球なら75万円だよ?
日本は保険のお陰で薬が安いのであって、本来の薬の値段は凄く高いって聞いた事があるけど、それにしたって高いよ。
念のため他のお店でも値段を確認したけど、だいたいどこも似たような値段になると聞いて異世界のレアアイテムの価格事情に戦慄したもんだよ。
いやロストポーションに比べればずっと安いんだけどね。
ともあれそんなとんでもない値段だけど、マーロックさんは誰かに依頼されてラマトロの肝を集めていたみたいだし、代金を支払う事は出来るだろう。
まぁ出来なかったら自分で売りに行けばいいしね。
今なら需要があるのは分かってる訳だし。
「分かった。とはいえ、流石にその額を払うとなると少し待ってくれ。依頼主に連絡して明日には用意してもらう」
うひょー、たった一日で金貨5000枚用意できるとか、マーロックさんの依頼主凄いな!!
「分かりました。では薬の受け渡しはその時に。この間のラマトロの代金はこの薬の代金から引かせてもらいますね。それと今回狩ってきたラマトロも不要なら買い取らせて貰えますか?」
「構わんが、それだけのラマトロを一体何に使うんだ?」
流石にこれだけのラマトロを買い取る事を不審に思ったマーロックさんがその使い道を尋ねてくる。
「それは私の取引相手に尋ねてください」
しれっと存在しない取引相手に責任を押し付ける。便利だね謎の取引相手君!
「……分かった。これ以上は訊かないことにする。だが本当に助かった。これだけあれば、重篤な患者を優先して助ける事が出来る」
「全くだぜ! ホントに助かったぜ嬢ちゃん! これで村の連中に薬を持って帰れるってもんだ!」
「ああ、俺も彼女に薬を届ける事が出来るぜ!」
「お前の場合は、惚れた女の恋人に使われるんだろ? いい加減未練引き摺ってないで諦めろよな」
「良いんだよ! 俺が勝手にやってる事なんだからよ!」
十分な薬が手に入ると分かった荒くれ者達が嬉々とした顔で私に礼を言ってくる。
中には友人達に薬を渡せると喜んでいたり、ちょっぴり切ない恋模様が語られたりもしていた。うん、貴方は漢泣きして良い。
「全くお前は幸運の女神だぜ! ぶっ殺したい奴が居たらいつでも言いな! 俺達が格安で半殺しにしてやるからよ!」
「「「ヒャッハー! 任せなぁーっ!!」」」
いや幸運の女神に物騒な勧誘するなし。
その後、依頼主に確認して貰う為に必要だからと言われ確認用に薬を一袋売った私は、荒くれ者達から肝だけ回収されたラマトロを受け取り再び冒険者ギルドに向かうのだった。
「すみませーん。またラマトロを解体して欲しいんですけどー」
「ギャーッ! また来たぁー! 頼むから別の魔物を依頼してくれぇー!」
……うん、ごめんね。正直この件で一番頑張ったのは冒険者ギルドの解体師さん達と町の薬師さん達だよ。本当にお疲れ様です。
まぁそれでも容赦なくやってもらうんだけどね。慈悲など無い。頑張れ。