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第10話 合成大会開始!!

面白い、もっと読みたいと思ってくださった方は、感想や評価、またはブクマなどをしてくださると作者がとても喜びます。

 翌日、私は再び商人ギルドにやってきていた。

 目的は合成素材を買う為のお金を下ろす為だ。

 手持ちは魔法の袋を手に入れる為に使っちゃったからね。


「おい、あの小さいの……」


「アイツがあの……」


 んん? 何だろう? 急にギルドの中が騒がしくなったんだけど。

 何かあったのかなと思って周囲を見ると、皆が慌てて私から視線を逸らす。

 え? 私何かした? って言うか、凄く視線を感じるんだけど……これってもしかして、私が注目を集めている?


 私、何かしたっけ? ……いやしたわ。商人登録して即金貨100枚近く手に入れたわ。

 成る程、それが話題になって私に注目が……って、事はさっきの小さいのって私の事か!!

 誰だ私を小さいのって言ったの!!


 犯人を捜すべく再び周囲を見回すも、既に犯人は野次馬の中に隠れて判別が出来なくなっていた。

 おのれ、次に小さいって言ったらニャットをけしかけてやる!

 そんな事を心に誓いながらギルドの受付に行く。

 並んだのはギルドに入会した時に受け付けてくれたお姉さんの居る窓口だ。


「次の方……ってマヤマカコさん!?」


 すると私に気付いたお姉さんは何故か驚いた顔でこちらを見た。


「あ、どうも」


「魔法の袋詐欺に遭ったと言うのは本当ですか!?」


「へっ?」


「質の悪い商人に騙されて壊れかけの魔法の袋を売りつけられたと聞きましたよ!?」


「え? あー……はい、大丈夫です」


 成る程、さっきの視線はそれだったのかぁ。


「大丈夫って騙されたんですよね!?」


「いえ、ちゃんと相場の銀貨20枚で買いましたよ」


「やっぱり買っちゃったんじゃないですか!?」


 お姉さんが全然大丈夫じゃないですよと焦った顔になるのがちょっと面白い。


「まぁまぁ、これを見てください」


 と、私は自分が買った魔法の袋を見せる。


「これが昨日買った魔法の袋です」


「え? これが?」


 詐欺に遭ったと言うにはあまりにも綺麗な魔法の袋を見せられて、お姉さんが困惑する。


「ええ、昨日買った時はボロボロの見た目だったんですけどね」


「は?」


 お姉さんは訳が分からないと首を傾げる。


「実はこれ、ボロボロの魔法の袋の内側に入っていたんですよ」


「それは……どういう意味ですか……?」


「つまりですね、私が売りつけられた壊れかけの魔法の袋は、その実外側にボロボロの布を張りつけて壊れかけに見せかけた新品同様の品だったんです!」


「「「「「え、ええーっ!?」」」」」


 お姉さんだけでなく、周囲で盗み聞きしていた商人や職員達までもが驚きの声をあげる。


「そ、そんな事って……」


「私も最初は詐欺だと思ったんですけど、ボロボロの袋の隙間から覗く妙に綺麗な布地が気になったんですよ。それで捨て値で買い取ってみたらビックリ、外側の布はクリップみたいなので固定されたダミーだったんです!」


 勿論これは全部嘘っぱちだ。

 昨夜魔法の袋を直した私は、ニャットから袋の事を誤魔化す作り話を考えた方が良いと注意を受けたんだよね。


「詐欺で騙されてボロボロの魔法の袋を買ったのに新品同様の品を持ち歩いていたら絶対不審に思われるニャ。おニャーのスキルを誤魔化す理由を作っておくのニャ」ってね。


 それもその通りだと思った私は、買い取った魔法の袋は実は本物だったという事にしたわけだ。


「ほらほら、ちゃんと中身も沢山入りますよ」


 そう言いながら私は魔法の袋から大きな荷物を取り出して本物だとアピールする。


「こんな事もあるんですね……」


 お姉さんは信じられないと目をパチパチさせている。


「って事はあの嬢ちゃんを騙した詐欺師はまんまと本物を格安で買い叩かれたって事か。マヌケな話だな」


「使っている素材も悪くない。あの見た目なら金貨50枚は硬いだろうな」


「銀貨20枚で金貨49枚近い利益とは運の良い嬢ちゃんだぜ」


「いや、仕入れた商品の価値を見抜けなかった詐欺師が間抜けだっただけだろう」


 周囲からそんな声が聞こえてくる。

 どうやら詐欺に騙された間抜けって評価を上手く切り抜けられたかな?


「それで今日はお金を下ろしに来たんですけど」


「え? あ、はい! おいくらの引き落としでしょうか?」


「金貨を10枚と銀貨を200枚でお願いします」


「畏まりました」


 お姉さんが持ってきたお金を私は魔法の袋に入れる。

 袋に入れるまでは重かったけど、大量の貨幣が入った魔法の袋は重くなる気配がない。

 うーん、これはあのおじさんから買って大正解だったね!


「あの、マヤマカコさん」


 お金も手に入ってさぁ買い出しに行くぞって思っていたところにお姉さんから声がかかった。


「はい?」


「あ、いえなんでもありません……」


「はぁ?」


 よく分かんないけどまぁ何でもないならいいか。

 何か用事があっても今は売れるものもないしね。


「さーて、それじゃあ改めて素材の買い出しに行きますか!」


 ◆


 市場で色々な品を買ってきた私は、さっそく宿の部屋に戻り、ベッドに素材を並べていく。


「これまで合成したのは草と木の枝、それに布。そしてこれまでの傾向からわかったのは、同じもの同士を合成すると質があがり、別の物同士を合成すると違う素材になるって事」


 今回買ってきたのは市場で売っていた薬草や食材をそれぞれ二つずつ。

 一つは合成素材として、もう一つは合成したあとに見られるようになる鑑定用に。


「と言う訳でまずはこのりんごっぽい果物とミカンっぽい果物を合成!」


 ピカッと光った後に手の上に残ったのは、梨のような果物だった。


「えっと、鑑定」


『シナーの実。シャリっとした感触が楽しいジューシーな果物』


 説明だけだと分かりにくいから、実際に皮を剝いて食べてみる。


「あっ、梨だこれ」


 見た目だけではなくそのまんま梨だった。


「あとは合成に使った果物達を鑑定!!」


『プルアの実:シャクシャクした噛み応えのある甘い実。病人の体に優しい。多くの土地に生えている』


『ジレオンの実:皮のなかに小さな実が集まった果物。甘酸っぱく水分が多い。栄養が多く体に良い』


 私は合成結果と鑑定内容をメモに取ると、その二つも食べてみる。


「うん、林檎と蜜柑だね」


 そっかー、異世界だと林檎と蜜柑を合成すると梨になるんだね。

 ホントどういう法則なんだろうなコレ。

 

「これでシナーの実がこの二つの実を足した値段より高く売れるなら合成を繰り返して売るのもありかもね」


 市場ではシナーの実は売ってなかったからなぁ。


 次は露店で売ってた薬草の番だ。

 購入したのは皮膚病に効くキスン草と火傷に効くイフラ草に食あたり用の下剤に使えるクシムシダ草の三本。

 他に売っている薬草は森で採取した事があるものばかりだったので、今回はパス。


 随分種類が少ないけど、どうやら薬草の類は薬師や錬金術師の所に直接持ち込むからあんまり市場では出回らないみたい。

 言われてみれば普通の人は薬を作ったりできないから薬草を買わないよね。

 そんな理由がある品だから、私が買った薬草もあんまり質は良くないんだよね。


「でも今回の目的は合成の結果出来る新しい薬草と鑑定リストの充実の為だしね!」


 合成した結果が気になるのは分かるけど、既に名前と効能が分かっている薬草は買う必要ないんじゃないかと思った?

 いやいや、鑑定リストを充実させるのは大事ですよ。

 何せ人間の記憶は劣化するから、後で必要になった時にどんな形だったっけ? って事になりかねない。

 でも鑑定リストに登録しておけば私が忘れていてもどれがどの薬草かすぐに確認が出来る。

 さらに言うと私が知らないよく似た毒草を回避出来るし、鑑定で薬草の質を確認する事も出来るようになるから、市場で買う時に質の悪い品に騙されなくなるって寸法だ。


「なので鑑定リストの充実は急務なのですよ。と言う訳でまずはキスン草とイフラ草を合成!!」


 ピカッと光った後に残ったのはいかにも毒々しい紫の草だった。


「うわぁ、明らかに毒草だぁ……一応鑑定っと」


 どう見ても毒草にしか見えない草なんだけど、鑑定リストを充実させる為、鑑定してみる。


『質の悪いウドクモ草:食べると死ぬ。乾燥させて煎じた粉を食べ物に混ぜると毒薬が出来上がる。これを食べた人間は全身に寒気が走り、血反吐を吐いて死ぬ。ドクゲ草を使った解毒剤を早い段階で飲ませると解毒できる』


「思った以上に危険だった!?」


 これはヤバい。下手に持っていたら疑われそうだ。

 さっさと合成して他の草に変えないと。


「クシムシダ草とウドクモ草を合成!!」


 再びピカッと光ると今度は青い色をした草が残った


「今度は青かぁ。鑑定!」


『イスカ草:天にも上る心地で死ぬことが出来る超猛毒の草。毒が回るまでの時間も短いので絶対食べてはいけない。治療にはイハードクゲ草を使った解毒剤が必要……』


「もっとヤバくなった!?」


 不味い、これはどう合成してもヤバイものにしかならない気配が……。

 この時点でかなりヤバいんだけど、説明にはまだ続きがあるし一応最後まで読んでおこう。

 うっかり読み飛ばした所為で重要な攻略情報を見逃していた何てこと、ゲームでもあったからなぁ。


「えっと……ハイポーションと混ぜる事でロストポーションを作る事が出来る。ただし現在は乱獲によって絶滅している……って絶滅!?」


 え? なにこのスキル、絶滅した素材も栽培できるの!?


「ってことは、この草を大量栽培すれば、他の商人が絶対仕入れる事の出来ない超貴重商品を独占できるって事!? 独占禁止法違反だよ!?」


 ああいや、この世界に独占禁止法はないと思うけど。

 でもトンデモナイ情報を手に入れてしまった。

 これを使えば私は唯一無二の商品で一獲千金が可能になる。

 ただし扱う商品は猛毒の毒草だけど。


「これは使える、使えるけど危険だよね」


 何しろ毒草だ。下手に扱ったらこれが原因で殺人事件が起きかねない。

 となると売り物にするならハイポーションと混ぜてロストポーションって言うのを作って売った方が色んな意味で安全だよね。


「でもポーションかぁ」


 ポーション、魔法に匹敵するファンタジーアイテムの代名詞だよね。


「ちょっと、調べてみようかな」


 毒草を魔法の袋に仕舞いこんだ私は、ポーションを探しに宿を出るのだった。


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― 新着の感想 ―
ロストポーション、この世に存在しなくなったからその名前に変わったのかそれとも創られた時点からその名前なのか、ファンタジーの七不思議
[気になる点] 8話から、魔法の袋なのか魔法のカバンなのか、表記揺れが気になる。 袋だと口を縛るサンタさんの袋の小さいバージョンのイメージ、カバンだとベルセルクのガッツが使ってたような、丈夫な布製の肩…
[一言] 現実にないアイテム名とか フレーバーテキストとか、 作者がたくさん考えないといけないが、名前やネタの貯蔵が十分か不安になるな。
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