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ほんのちょっと昔の話

作者: まさかす

昔々、あちらこちらに商店が軒を連ねる道がありました


八百屋さんがありました

魚屋さんがありました

肉屋さんがありました


お米屋さんがありました

豆腐屋さんがありました

惣菜屋さんがありました

パン屋さんがありました

味噌屋さんがありました

定食屋さんがありました

和菓子屋さんがありました

ケーキ屋さんがありました

駄菓子屋さんがありました

煎餅屋さんがありました


お茶屋さんがありました

布団屋さんがありました

薬屋さんがありました

酒屋さんがありました

花屋さんがありました

畳屋さんがありました


おもちゃ屋さんがありました

文房具屋さんがありました

自転車屋さんがありました

はんこ屋さんがありました

写真屋さんがありました

時計屋さんがありました

家具屋さんがありました

洋服屋さんがありました

帽子屋さんがありました


その道には人の営みがありました

その場所を歩けば必要にして十分と

そういえる全てが揃っていました

全てが徒歩圏内で賄えていました


沢山の人が買い物籠を腕に引っ提げ歩いていました

駄菓子屋さんやおもちゃ屋さんの前では子供達がたむろし

笑顔と元気を道一杯に振り撒いていました


その道を歩くのは大人も子供も見知った顔ばかり

当然商店の人達も顔見知りばかり

故にその道ではそこかしこで挨拶の言葉が躍っていました


やがてその道の近くにスーパーが出来ました

人々は一か所で全てが賄えるスーパーへと向かいました


やがて離れた場所に大きなスーパーが出来ました

人々は安さを求めて大きなスーパーへと向かいました


やがて更に離れた場所に巨大なスーパーが出来ました

人々は安さと便利さを求めて巨大なスーパーへと向かいました


気付けば商店街と呼ばれたその道からは人が消えていました

買い物籠を腕に引っ提げ歩く人もいなくなりました

子供達の笑顔も歓声も聞こえなくなりました


すると商店街にあった1軒の商店の灯が消えました

それを機に1軒又1軒と商店の灯が消えてゆきました

沢山の蝋燭の火を次々と消していくようにして

その道に軒を連ねていた商店の灯が全て消えてゆきました


後に残されたのは人の営みが消えたただの町

ただただ人が棲んでいる町だけが

ただただ風化するのを待つかのようにして

ただただ残っていました


2021年05月21日 初版

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