コント「悩める吸血鬼」
ボケ(ジャック)、黒いマントとシルクハットを付けてドアの前に立っている
ツッコミ、ドアの外をのぞき、ドアを開ける
ツッコミ「あ、ジャック!もう来てたんだ!」
ボケ「やあ、どうもどうもこんばんは!」
ツッコミ「ごめん、気付かなくて」
ボケ「いいんですよ!今来たとこですから」
ツッコミ「嘘だあ、けっこう待ったでしょ?ほら、外にコウモリ集まってきてんじゃん!勝手に開けて入ってきても良かったのに」
ボケ「それはできません。吸血鬼は招かれないと家に入れませんから」
ツッコミ「ああ、そうだったね。忘れてた!入って入って!」
ボケ「お邪魔いたします~」
二人、ドアの内側に入り、椅子に座る
ツッコミ「ごめんね。吸血鬼の特徴って多いから、たまに忘れちゃって」
ボケ「仕方ないですよ。私たちが友人になってまだ数年しか経っていませんし」
ツッコミ「前から思ってたんだけどさ、ジャックって吸血鬼っぽくないよね」
ボケ「そうですか?どこが?あ、私がイケメンすぎて吸血鬼要素が霞んじゃうってこと?照
れますなあ!」
ツッコミ「そういうところ。吸血鬼ってもっとこう、高貴というか、高飛車というか、人を寄せ付けないイメージあるじゃん」
ボケ「ええ、まあ」
ツッコミ「でもジャックはめっちゃ明るいし、フレンドリーじゃん」
ボケ「いえいえ、滅相もない」
ツッコミ「腰低いしさ、せっかく見た目が良いんだから、もっとツンケンしてた方が吸血鬼らしいと思うな」
ボケ「そう言われましても、かれこれ200年ほどこのキャラですからねえ」
ツッコミ「長いな!なんでそうなったの?」
ボケ「聞きたいですか?」
ツッコミ「う、うん」
ボケ「……友達が欲しいからです」
ツッコミ「そんな理由!?もっと深刻なことかと思った」
ボケ「深刻ですよ!考えてみてくださいよ。吸血鬼はさっきみたいに招かれないと他人の家に入れないんですよ。そんな奴が高飛車な態度とってたら、どうなると思います?」
ツッコミ「誰にも招かれなくなる……?」
ボケ「そう!遊びに誘ってもらえたとしても太陽の下に出られないから、日中の遊びは全部断るんですよ!どんだけ付き合い悪い奴なんだと!日中は遊べない、こっちから人の家にも行けないって、そりゃ孤独になりますよ!」
ツッコミ「そういやジャック、食事の誘いも断る事多いよね。前にラーメン次郎行こうって言った時も」
ボケ「あれはニンニクが食べられなくて……」
ツッコミ「皆でアクセサリーを買いに行こうって言った時も」
ボケ「十字架モチーフを見ると気分が悪くなって……」
ツッコミ「いろいろ大変なんだね。それで好物が……」
二人「処女の生き血!」
ボケ「ただのド変態虚弱野郎じゃないですか!せめて性格は明るくしなきゃ、吸血鬼に友達はできないんですよ!」
ツッコミ「まあまあ、そんなに自分を卑下するなよ。色白でカッコいいんだから」
ボケ「カッコいいとか言われても、自分じゃ顔見えませんし~鏡に映りませんし~」
ツッコミ「あーあ、すねちゃった。さっきは自分でイケメンって言ってたのに」
ボケ「冗談を言わなきゃやってられないんです……私も吸血鬼らしくしてみたいと思うことはありますよ……でもそしたら友達いなくなっちゃう……寂しいのは嫌……グスッ……」
ツッコミ「泣いちゃった。そんなに無理して好かれようとしなくていいんじゃない?試しに、一回だけ吸血鬼らしく喋ってみなよ。きっと似合うから!」
ボケ「そうですか?じゃあ……貴様ごときが吾輩に命令するなど100年早いわ!」
ツッコミ「似合う似合う!もっとやって!」
ボケ「フハハハハ!吾輩の力の前にひれ伏すがいい!」
ツッコミ「いいぞ!ジャック様ステキ!」
ボケ「貴様もロウ人形にしてやろうか!」
ツッコミ「あ、それは違う閣下だ!」
ボケ「吾輩からの施しである!受け取るがいい!」
ボケ、ツッコミに紙袋を渡す
ツッコミ「手土産持ってきてくれたんだ。ありがとう」
ボケ「つまらないものである!フハハハハ!」
ツッコミ「うーん、ちょっと無理があるな。腰の低さが出ちゃってる」
ボケ「途中までいい感じだったんですけどねえ」
ツッコミ「しゃべり方より行動とか仕草から変えた方がいいのかな。今この場でなんかできる?」
ボケ「急に言われましても……ああ、一つ思い付きました!」
ツッコミ「お!なになに!?」
ボケ「ええ、一番吸血鬼らしいかもしれません!なんで今まで気が付かなかったんでしょう!」
ツッコミ「そんなに!?俺に向かってやってみてよ!早く!なんなの、一番吸血鬼らしい行動って!」
ボケ「ふふふ、それは……」
ボケ、ツッコミに近づく
ツッコミ「ジャック?」
ボケ「血を吸ってみせる事ですよ」
ボケ、ツッコミの首にかみつく動作
暗転
ツッコミ「うわあああ!」
明転
ツッコミ「まあ無理なんだけどね。俺、ゾンビだし」
ツッコミ、袖をまくって緑色にボディペイントした腕を見せる
ボケ「らしくないですよねえ!」