MP10000の子
「うーむ、マズイのぉ。あいつワシより強くねー?」
アルファ学院である院長はナンバー2の教頭の隣で恥ずかし気もなくそう言った。
「ご冗談を。学院長より強ければ世界最強ってなっちゃいますよ」
二人は最上階の院長室から中庭を見ていた。ニキビ顔のにんまりが10歳らしく輝いていた。
二日後。全教員で件の彼についての処遇を会議していた。実に百年ぶりの、定例会議から外れた異常事態だった。
「殺すべきですね。我々の敵になりかねません」
「保護しましょう。彼には別の役職を与えて」
「MPの事は伏せておき、普通の子と同様に育てましょう」
「すいません、既に彼には特別でありことを本人にも周りにも伝えてあります」
「敵国に渡ったらどうなる?滅ぼされかねません」
「脳みそをいじくりましょう。それで問題解決です」
いずれの案にすべきか迷ったところ、結局最後は教頭の意見が採用される事になった。
「じゃ、とりま保護で」
件の彼はそれから軟禁状態にあった。しかし本人はなんやかんやでモテモテ、ハーレムライフ一歩手前のトラブルを満喫していた。
「くくく。こいつを盗めば我が国は安泰だ」
スパイ職員は本国に通達したが、本国からはヤバ過ぎるのでノータッチでという反応だった。
「なんてこった。たしかにそうだな」
あまりにも無敵過ぎる最強は扱いが難しすぎて時の権力者にはむしろ厄介ものだった。
「あの学院には化け物がいるらしい。どうやら最強無敵でチートでおまけで無制限のヤバさらしい」
国中が密かに噂をしていました。
「マズイな。世界支配に邪魔しかならぬ。しかし、どいつもこいつも最強相手に群がり過ぎて手が出せぬ」
影から世界征服を目論む悪の組織も手出しができなかった。
「しかし備えはしておかなければなりません」
あらゆる力が彼の元に集まった。それが二十年経過した今でも続いている。世界は遂に平和になってた。
「しかし、学院長。あなたを超える存在が現れるとは。これから先が楽しみですね」
「すまんな。教頭、ありゃワシの勘違いじゃった。本当はMP10.001だったんじゃよ」
「マジっすか」
「じゃがこれで良かったのじゃ。本当に最強でも、こうまで最速最短で世界平和は実現できぬじゃろうて」
「本人には伝えますか?」
「いんや。傍らには剣鬼サーシャに隻腕無双のロロム、最強アイドルのエラル、チートバジリスクのボローがおる。彼はもう、十二分じゃよ。我々にとってもじゃ」
こうして彼は、伝説になった。
「後半、バレないか冷や冷やだったよ。ストレスで円形脱毛症になった。これズレなんだよね」
「親父、死に間際にそんな話は聞きたくないよ」
「あなた、知ってたのよ」
「そうか。それは良かった」
そうして彼は、生涯一度も負けず、戦わず、無双の伝説となった。幸福に満ち溢れた人生だった。
つまんなく………ない?ないならマックス!いまいちならちょっとだけ評価つけてくだちい。宜しくお願いします。