裡
ホラーを書くつもりだったのですが、かなり違くなってしまいました。
結局意味の分からない感じですかね‥?
(もう辞めたい。なんか全部嫌んなってきた。)
またバイト先で失敗してしまい、鬱屈した状態で家路に就く。
家族を起こさないよう部屋に入り電気を点けたが、なにをする気にもなれず床の上に寝転がる。
(明日休みだし、パソコンでもいじろっかな。)
二十歳で未だフリーター、彼氏もいなけりゃ友達もいない。その上実家暮らし。
はたから見るとかなり悲惨な私の娯楽はパソコンや読書。
自分でも酷いと思う。
パソコンを開き、ダラダラ動画サイトを見ているうちに興味本位でホラー系の物を探す。
本当に怖い感じのものから素人が投稿したのだろう紛い物などの中で、あるタイトルが目についた。
【?】
(タイトルがハテナ1文字…)
なんだか気になり、再生ボタンを押す。
…随分画像が荒いな…。暗くて詳しくは見えないが、部屋の中のようだ。
撮影者が動き、部屋全体をグルッと映す。それだけで映像は終わった。
(あれ…?)
部屋のベットの脇に何か見えたような‥。
(そういうやつなのかな…これは…)
確かめるためもう一度再生する。
壁にくっ付いて置かれているベットの脇から人の足らしきものが見えた。
どうやらベットがくっ付けてある壁にもたれ掛かっていて、足だけ見えているという状態なのだろう。
(怖いのかこれ…?人形の足なんだろうなぁどうせ。)
たいして気にせず、すぐ他の動画に興味が移った。
−−−
「起きなさい。朝よー。」
あー…眠い…
「分かった…もうちょいしたら下行くから…」
「早く降りてきなさいよー。」
ドアの向こうで母が階段を下る音がした。
眠気と戦いながら着替えを済まし、妙にしっかりしている部屋の鍵を開け下に降りる。
「おはよー。」
「やっと起きたのね。今日はバイト無いの?もうお父さん仕事行ったわよ?早くご飯食べて!」
母にまくしたてられ、テーブルにつく。
食べ終わり、テーブルに4つある椅子を見てなんとなく気になった私は洗濯を干し終わった母に話し掛けた。
「兄さんいつまでああなんだろうね。」
途端に母の顔が悲しそうになる。
「さあね…。出てきても全然話してくれないのよ…。」
私の兄は今色々取り上げられている引きこもりという奴だ。
と言っても、殆ど会話は無いが部屋から出ては来るし外にも行くらしい。
私より二つ年上だが一向に働かない。
じゃあ引きこもりというか…ニート?
それよりもこの2つは意味違うのか…?
どうでもいいことに思考を巡らせていたが母の言葉で我に返る。
「そういえば最近、部屋から出ることも減ったのよね‥でもなんだか食欲は前よりあるみたいなのよ。もうそろそろ少しぐらい働いてくれないかしら…。」
母も大変だなぁと兄妹にもかかわらず他人事ように思ってしまっていた。
母が食器を洗いだしたので、私は自分の部屋に戻った。
(…暇)
本を読み終わり、やることがないので昨日同様パソコンに向かう。
(またホラー物でも見よっかな‥)
ある程度時間が過ぎた時、あのタイトルに目がいった。
【?】
ハテナ1文字の動画。
なんとなくもう一度再生してみる。
すると不思議なことに気がついた。
(私の部屋と作り似てるかも…)
部屋の構造が同じなような気がしたのだ。
(まあ…よくあるんだろうな。作りが似てるくらい。)
そう思ったが、なんだか興味が湧きもう少し目を凝らして映像を見てみた。
(作りが似てるって言うか…これ…)
兄の部屋?
(もしそうだとしたら、随分くだらない動画を投稿してるんだなぁ。)
証拠は無いがかなり前、兄の部屋によく入っていた頃と動画の中の家具や物がかなり似ている。
(でも暗くてよく分かんないな‥。)
もしそうだとしたら、あの人形だと思われる足はどっから持ってきたんだ?
(まさかマジで幽霊!?)
すっかり私の中でこの動画を投稿したのが兄じゃないかと思っていた。
(やっぱ兄さんの部屋っぽいなぁ。)
……気になる。
流石にかれこれ1年以上会話してないと思うし、部屋に入れてくれとは言いにくい。
こんな動画の為に兄が人形を買ったのかも知れないと思うと、可笑しいを通り越して哀れに思うが…
「あっそういえば。」
この部屋の鍵、兄の部屋でも開くんじゃないか?
部屋用の鍵なんてそんな精巧に作らないだろう。
前に学校のロッカーの鍵で試してみたら、普通に開いた事がある。
(今度兄さんが出掛けたら、入っちゃおうかな。別に勝手に触るつもり無いし。)
駄目だとは思ったが何にもいじらないしすぐに出ればいいと考え、チャンスがあったら実行してしまおうと企んでいた。
−−
ある日バイトの帰り、兄が家から出ていくのが見えた。
そのまま私が居る方向とは逆に歩いていく。
(兄さん久し振りにみたなー。)
私は普通に家に入り、自分の部屋に行こうとしたとき数日前の考えが頭をよぎった。
(今出てったんだから、少しぐらいなら…)
私は2階に上がり、そっと兄の部屋の前に立つ。
(すんごいドキドキしてきた…)
緊張しながら、自分の部屋の鍵を差し込む。
−カチャリ。
(開いた!!)
ゆっくり中へ入った時、なぜか妙な異臭のような臭いがした。
恐る恐る電気を点けた瞬間、私は叫んだ。
そこには−
衣服はブカブカのTシャツのみ、髪はボサボサ、目はかなり虚ろな少女がベットにもたれかかっている。
バタバタと階段を駆け上る音がして、母と父が上がってきた。
「どうしたの!?あんたなんでお兄ちゃんの部屋に…」
母が私に声をかけたが、少女を目にした瞬間言葉を失いそのまま床にへたり込んでしまった。
あとから入ってきた父も固まってしまっている。
「どういうこと…?なに…?どうして…?」
母は腰を抜かしたまま涙を流し、ブツブツと同じ事を繰り返す。
父はこの状況を認めたく無いのか、後ろを向き頭を抱えている。
私は混乱と恐怖を感じながらも、ああ、そういうことだったのかと納得していた。
あの映像と今のこの部屋はやっぱり一致する。
でも、あの足の正体がまさか人形でもなく幽霊でもなく、生身の人間だったなんて。
(そうだ…それよりも…)
この少女は大丈夫だろうか?
震える体をなんとか動かし、話し掛ける。
「ねぇ‥。」
その瞬間、虚ろだった目が私を見てくれた。
「あなた、名前は?」
なるべく優しい調子で言ったつもりだが、少女はなにもしゃべってくれない。
「すみません‥警察ですか…?実は…」
パッと振り替えると、少し冷静になったのであろう父が警察に電話していた。
しかし母は相変わらずすすり泣いている。
私は質問を再開した。
「怖くないから…大丈夫?」
冷静になり改めて少女を見ると、所どころ痣がある。
兄はこの少女にどんな仕打ちをしたのか…
一瞬にして悪寒に襲われる。
私は呆然と少女を見ていた。
兄さんが…こんな事をする人間だったなんて…
兄が犯した過ちの重さを現実的に感じ、酷く虚しい気持ちになった。
−警察が到着し、成り行きをすべて話す。
兄は近くの商店街で保護されたみたいだ。
少女が警官に抱きかかえられパトカーに乗せられる。
私はその様子を警官に、娘さんにも話をお聞きしたいのでご両親とお乗り下さい、と話し掛けられるまで眺めていた。
−−−−
数日間私達家族は色々なことがあったが、兄は動機、誘拐方法全て黙秘しているらしい。
少女は精神的ショックが酷く入院していると聞いた。
それを知り、私は本当にあの兄は兄なのだろうかと変な疑問を抱いた。
それと、私にはもっと分からないことがある。兄はなんのために…
あの映像を…?
とりあえず申し訳御座いませんでした…
解説?ではないですが、動画投稿は自己顕示欲であったり、愉快犯めいた心理故?というつもりで書きました。
あとは支配欲とかですかね。一応…
他にもおかしな点がありますが、結構当初の予定と話がずれたので…私もよく解らなくなってしまい‥
それでも必死に書きました。
読者様のご気分を害していなければ幸いです。