わたしと『 i 』ちゃんの幸せ呼ぶ手紙。
皆さんは最後に紙の手紙を書いたのは、いつですか?
物語の始まりは1つの手紙でした。
絶滅危惧種の紙の手紙を見つけました。
紙で書かれた手紙んなんてこのご時世ですからあまり見かけることはありません。
今ではもっぱらデジタル媒体、その方が便利です。
手紙は丁寧にも封筒らしきものをA4の紙で折った物。差出人も宛名も書いてありません。
私は、昔懐かしの紙の手紙を珍しがり読んでみることにしました。
(プライバシー保護の為、私の名前を『私さん』、差出人の名前を『 i 』と伏せておきます)
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背景
初めまして。
今私さんは、何をしていますか?
何を楽しんでいますか?
『 i 』より
敬具
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はて、全くもってよくわからない手紙です。不気味です。
私の名前が書いてなければ出す人を間違えたとも考えられるのですが...
やっぱり今時、紙で手紙を書くこのお方の頭はおかしいのでしょうか。
何を思いこんなことを書いたのでしょう。
全くわかりませんね?
その時は気にも止めることはなくそのままその手紙を机の奥底へとしまい込んだのでした。
翌朝、またもや手紙がありました。
趣味の刺繍をいったんストップして手紙を読みます。
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背景
おはようございます。
今日は、一日中友達のkさんと話をしてました。
話す内容はやっぱり恋の話!
だれくんが好きだとか、だれくんがカッコいいだとかそう言ったことを話しました。
kさんの意外な一面を知れて楽しかったです。
今私さんが、一番大切だと思う友達はだれですか?
『 i 』より
敬具
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手紙は子供っぽさのある(多分子供なのでしょう)丸みを帯びた字で書かれていている為、その内容も相まって不気味さを忘れ少し微笑ましい気分に包まれます。
手紙を読み終わるとふと、ある友達が頭に思い浮かびました。
友達とは古くからの仲。月に1回程度一緒にご飯に行くくらいには未だに仲のいい友達です。
今日は偶然幸いにも子供の日で祝日。いつも忙しそうにしている旧友も今日くらいは休みでしょう。
思い立ったら吉日。
私はすぐに行動する女なのです。
携帯を取り出し友達に電話をかけ、暇かどうかを問いただします。
電話はすぐに繋がりました。
何と運のいいことに友達は暇してました。
これも日頃の行いが良いからなんでしょう。きっとそうに違いない。
その日1日は、友人を家に招き、甘いあまーい恋の映画に涙を流し、お互いに語り合い、ご飯を食べました。
ずっと昔から長らく付き合っている友達なので、友人の意外な面なんてほとんど出てきませんでしたが楽しい1日だったには違いありません。
手紙のおかげで有意義な1日を過ごすことができました。
『 i 』ちゃんありがとう。
友達を家に招いてから数日経ったある日の事。
発見いたしました、またもや、手紙を。
お昼ご飯を食べている時に発見しました。
前の一件以来この手紙は不気味なものではなく幸せを呼ぶ幸福の手紙じゃ無いかと思い出すようになっていました。
そして今日、それをまた発見した。つまり、幸せを発見したのと同意なのです。
私はホクホク気分で手紙を読み始めました。
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背景
こんにちは。
私は絵を描くことが好きです。
まだまだ絵は下手ですが、いっぱい、いっぱい描いて上手くなって将来は絵の上手な美術の先生になれたらいいなって思ってます。
そういえば、私さんは今はどんな仕事してるんですか?
『 i 』より
敬具
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今は、と言いますが、ずっと普通のOLをしております。
と、もし返信したならガックリされただろうか。
それはさて置き。
将来の夢が先生になる事とは何とも女の子っぽいいい夢です。
私の将来の夢はOLだっただろうか?......まぁ、深く考えないでおきましょう。
そして、趣味が絵を描く事とはいい趣味しています。
今の趣味は刺繍ですが、私も昔は絵を描く事が趣味でした。
今回もこの手紙を読んでやりたいことが出来てしまいました。
久しぶりに絵を描くことです。
思い立ったら吉日。
押入れの中の魔境から古いキャンバスやら何やらを引っ張り出します。
描くのは油絵、いきなりのぶっつけ本番に入るのが私流。
ルネサンスの時代に抽象絵画で有名になったクロード・モネのように(単にそれっぽい単語適当に並べただけ)美しい絵を描いてやりますよ。
「ん〜、、惜しいかな?、、」
その後出来た絵は、ピカソの絵になったのは言うまでもあるまい。
それから数ヶ月。手紙は一向に来なくなりました。
最初来た時は不気味に思っていても、来なくなると寂しくなってしまうものです。
ですがこの時、私にはまだあと一つはあると言う予感だけがありました。
つまりは、根拠のない勘なんですが......
そして、今日、敬老の日の祝日をフルに使いどこかに来ているかもしれない手紙を探すことにしたのです。
あらゆるところを探しました。台所、寝室、屋根裏部屋。
そしてあらゆるものが見つかりました。
台所からは消費期限が何年も前のパン粉が、そして屋根裏部屋からは得体の知れないキノコが。
いやそんなの探してるわけではないんですよ。
そんなこんなであらゆるところを探したけど見つからない。
もし本当にあるのならば残る最後の場所、押入れの魔境。ここまで来たら探すしかないのです。
勇気を持ちラストダンジョンへと潜り込みました。
いざ、ゆかん約束のあの地へ。
「はぁ......はぁ............」
さすがはラストダンジョン手ごわいヤツです。
あたりはすっかり暗くなってしまいました。
だけど私は勝ちました。
子供の頃、宝箱と読んでいた高級なお菓子の缶詰の中に入っていやがりましたよ。
なんてところに出してんですか『 i 』ちゃん。
見つけた手紙は苦労して見つけたにも拘わらず今までと違い紙を半分に折っただけの簡易な物。
ですが、そんなことは気にかけず、魔境から引きずり出した物々をほったらかしにして手紙を読みました。
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背景
こんばんは。
私は......んー特にもう思いつかないなー。
ま!いっか!
私は今幸せだよ!
私さんも御幸せに!
『 i 』より
敬具
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最後の手紙は質問すらない簡素なもの。
ですが何ともあの子らしい。
励まされ嬉しいはずなのに目に熱いものがこみ上げます。
「そっか、あの時私はそんな事を思ってたんですね......忘れてました......」
ふつふつと沸騰しそうな水のように、忘れていた子供の頃の感情が私の中に蘇ります。
何もかもが光って見えたあの感情が。
私は、今ではすっかりと思い出したあの頃の感情と今の幸せを、いずれ出会うであろう人に届けるため手紙を出しました。
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背景
お久しぶりです。
今なお、お元気で入られますでしょうか。
健康でいられるのなら今後ともぜひ御体を大事になさって健康でいてください。
私は今、辛い時もありますが概ね幸せです。
いつまでもあなた様のあの頃と変わらぬ幸せを心より祈っております。
では、お元気で!また会う日まで!
ちょっぴり成長した『 i 』 より
敬具
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人類は絶賛衰退中!
とか最後に入れれば完全あれですよね。
まぁ、この短編自体あの方の本を読んで描いてみたいと思ったからなんですけどもね。
面白いと思ってくださったなら感想、ブックマークお待ちしてます!
あ!長編の小説も書いてるんでぜひみて行ってくださいね!よろしくおねがいします!




