表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/73

第八話  クリスマス

「おーい、聖音。大丈夫か?」


「天也、見舞いありがと!!

でもさ、バスケの方はいいの?」


「大丈夫、大丈夫♪」


天也と付き合い始めて1ヶ月が過ぎたクリスマス。


街はクリスマスイルミネーションで明るくて、

家族や大切な人と楽しいひとときを送る日。


私は真っ白の硬くて冷たいベッドの上に居て、

天也は横のパイプイスに座ってる。


―天也と優司さんとクリスマス・イブを過ごしている時に、

私は倒れて、病院に運ばれ即入院。


私は元々貧血気味で、

倒れるのは2回目。


だから今回もただの貧血って思っていたのに、

朝から血は採られるわ、

病院食はマズいわで最悪。


もうサイッテーのクリスマスだよ。


「ねぇ、天也ぁ。」


「ん?何?」


「病院抜けてさ、行こうよ。」


「どこ?」


「ばか。約束してたじゃんっ。」


実は倒れる前、

1つ約束をしたんだ。


「俺のお気に入りの場所に連れてってやるよ。

クリスマスはイルミネーションが最高なんだ♪」


って。


今日行こうって言ったの。


でもその後倒れちゃって。


「あぁ〜アレか。

でもダメだよ。

おとなしくしてなきゃ。

治ったらな。」


「嫌だっ。だって今日行かなきゃ。

クリスマス終わっちゃう。」


「来年もあるだろ。」


「来年?

私、死んでるかもよ?

それでも?絶対後悔するよ?」


「う゛っ。そんなことねぇッ。」


「天也、連れてって。」


「・・・。分かったよ。

負けた。

ただし、帰ってきたら安静にすること。

守れる?」


「やっりぃ☆天也大好き♪」


天也は私のわがまま聞いてくれる。


そーゆーとこ、好き。


「じゃ、これ着て。」


自分の着ていたコートを脱いで渡してくれた。


「えっ、天也寒いでしょ?

いいよ。」


「いーから。着てろ。

俺のって証。」


「もう。ほんとに平気?」


「当ったり前!!

・・・はっくしゅッ!」


「・・・ばか。私のやつ着てなよ。

薄いけど。」


「いいって!てか病人のくせに。」


「じゃあ、その病人に気を遣わせないでよね。」


わかってるよ。

天也が体強いの。


でもね、私みたく病気して欲しくないから、

気を遣っちゃうの。


別に風邪が原因って訳じゃないけど、

風邪は万病の元って言うし(言うよね?あってる??)


大切な人には健康であって欲しい。


苦しむのは私だけでいいの・・・。



―「天也、後どの位で着くの?」


「まだだよ。さっきから急かしすぎ。

聖音の為に安全運転してもらってるんだから。」


病院を抜け出して、

タクシーに乗ってもうすぐ20分が経つ。


「お2人、仲良いんですねぇ。」


「ハイ♪羨ましくなっちゃいます?」


「おいっ」


「ははっ。羨ましいですよ。幸せそうで。」


「ハイ♪今はとっても幸せですよ☆

病気してなかったらもっと・・・ですけど。」


「確かに。健康が一番!

早く良くなってね。

あぁ、着いたよ。」


「ありがとうございましたっ。」


「これで足りますか?

お釣りはいいです。」


そう言って、天也は諭吉さんを置いた。


そして私達はタクシーを降りて歩き出した。


「うわぁ〜キレイ!!」


「だろ?」


そこは・・・雑誌で何度か目にした、

ルミナリエだった。


「お気に入りじゃないんだけど。

前にさ、聖音言ってたろ?

神戸のルミナリエが見たいって。」


「うそ・・・。

覚えてくれてたの?」


確かに私、独り言で言った。


そんなの忘れてるって・・・。


「当たり前だろ。

聖音のことならスリーサイズまで分かる。」


「もぉっ!!天也のスケベっ!!」


サイテーっ。


でも・・・嬉しいよ。


めちゃくちゃ綺麗だし。


「・・・天也。」


「なんだ?辛い?」


「違うよ・・・。

ありがとう。凄く嬉しい・・・。」


「なぁ。」


「なに?」


「・・・やっぱいいや。少し歩いて、帰ろうか。」


ヘンな天也。


でもいつも優しい。


そして私を包んでくれる。


「・・・きだよ・・・」


「なんか言った?」


「天也、だぁいすきっ♪」


「俺も聖音が好きだよ。」


今までで一番のクリスマスだよ。


こんなに幸せって思ったの、初めて。


私、とっても幸せ。


そして、この幸せはずっと続くと思ってた。


ううん、続いて欲しかった―。



―クリスマスが過ぎてもう1週間。


私は相変わらず病院にいた。


そして、今日検査結果が出る。


「おはよ、聖音。」


「天也、おはよ。バスケは?」


「いいの。俺は天才だから。」


相変わらず、

馬鹿なのか賢いのか分からなくなる発言をする天也。


「レギュラー落とされても知らないからね。」


釘を刺す。


じゃないと、すぐ調子に乗るから。


「検査結果が出る大切な日に、

バスケなんかやってらんねぇよ。」


でも、私のせいなんだよね。


・・・ごめん。


「朝日奈さーん。

センセイが呼んでます。

お母様もお待ちですよ。」


「あ、はい。」


「旦那様はここでお待ち下さい。」


「あ、はい・・・

って、ち、ちがっ。

旦那じゃ・・・」


天也は顔を真っ赤にして否定した。


「だってさぁ、旦那様。

行ってくる。」


私もちょっとからかう。


「行ってらっしゃい。」


私は看護婦さんについて病室を後にした。


冷静を装っていたけど、

心臓バクバクで、聞く前に死にかけた。


天也にもママにも思いつめてもらいたくないから。


―看護婦さんの雰囲気で、なんとなく感じた。


私、重い病気なのかもって。


そして・・・センセイを前にした時、

うっすら涙を浮かべるママを見た時それは確信へと変わった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ