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第六話  思いやり

お兄さ・・・じゃなくて、

優司さん(お兄さんはやめてくれと言われたので。)

と出会って早1週間。


天也に優司さんとの事も聞かれなくなってきた。


天也ってば、めちゃくちゃ、

うざい位聞いてくるから(仕方ないけどね。)

大変だったけど。


言っちゃえば、

凄く楽、なんだろーけどね。


天也の事だから私の為に怒ってくれると思う。


それと同時に、

嫌われちゃうかもって不安もあった。


私が黙ってることで今が続いていくなら・・・って、

未遂だったし、心の底に記憶を封印した。


でも、あれ以来、

天也の応援に行く回数は減った。


天也には色々あるのってゆって逃げてる。


天也には悪いけど、

ずっと天也の側に居たいから。


―「聖音、おはよ。」


天也は、1日も欠かさず毎朝待っててくれる。


そして私を見ると笑顔でそう言う。


そして、私のちょっとの変化も見逃さない。


「聖音?

顔色わりぃけど、大丈夫か?」


実は寝不足。


徹夜でヤンキーだった頃の物を整理してた。


クローゼットの奥に入れてあった化粧品。


紫のルージュとか、

一昔前のギャルが愛用してたような物ばかり。


写真の1枚さえ残さずに全て捨てた。


天也と付き合い始めてすぐに、

クローゼットの奥に入れたけど、

やっぱり捨てようかな、と思って。


「大丈夫だよ。

心配してくれて、ありがと♪」


「う〜ん、なんか元気ないな。

よっし、決めた!

今日は学校サボって遊園地に行こう♪」


と天也はいきなり言い出した。


「えっ?!」


びっくりだよ。


なんでもいきなりなんだから。


「あ、でもやっぱダメだ。

聖音は中学生だし、プリンシア厳しいだろ?」


自分で言い出しといて、なんなのよッ。


もう。


「いいよ。行こう?

学校ならぜんぜんOK!

だって私、見放されてるし。」


不良少女だったから。


「ソレ、ヤバくないか?

ま、いっか。じゃ行こうぜ。」


「やったぁ♪天也大好き!!」


嬉しいんだもん。


色々あって、遊園地どころじゃなかったし。


―「きゃぁぁぁぁっ!」

「うおぉぉぉぉぉっ!」


・・・少々お待ち下さい。


「もう一回乗ろうよぉ。

天也ってば〜。」


「ぜってぇー無理!!」


私達はさっき、

日本で5本の指に入る有名な絶叫マシンに乗ってきた所。


そこで新たな発見!


実は天也・・・絶叫マシンが苦手なの!!


本人が言うには

「俺は高い所がダメなんだよ。」

高所恐怖症らしいです。


私はというと、

高い所が大好き、

絶叫系大好きなのです!!


だからさっき乗ったヤツが気に入って、

もう1回乗りたいって言ってるんだけど、

天也が、

「無理。」

の1点張りでさ。


でも1人では乗りたくないから、

諦めるしかないね・・・。


「わかった、もういいよ。

休んでて。」


はぁ・・・。


乗りたかったなァ。


「ちょっ、どこ行く・・・」


「飲み物買ってくるから。」


こんな嫌なトコ見せたくないから、

離れるってのも本音。


「いいよ。

俺が買ってく・・・うぅ。」


かなりキタみたい。


「そんなんで動ける訳ないでしょ。」


動いてどうにかなられても大変だし。


「・・・ごめん。」


渋々、承知した天也。


「素直でよろしい。

コーヒーでいいよね?」


「あぁ。ごめんな。」


そんなに謝らなくてもいいのに。


謝らなきゃいけないのは私の方なのに。


―「これでいいかな。」


しばらく歩いてやっと見つけた売店で、

コーヒーとコーラを買った。


注文して待っていた時だった。


ピロリン♪と音を立てて携帯が震えた。


「ん?なんだろ天也・・・。」


そう思いつつ、

フォルダを開くと知らないアドレスだった。


何か添付されてるし。


ドクンと心臓が高鳴る。


寒気もした。


思い当たる事があるからだと思う。


恐る恐る開くと内容は絶句するような物だった。


『やっほー!久しぶり。

覚えてる?

私だよ、わ・た・し。

今すぐ天也様と別れないなら、

この写真を天也様に送信しちゃいまーす♪』


添付されていたのは写真。


開いてみると、

写っているのは私・・・あの時の。


制服を脱がされて、

口を塞がれてる。


「―ッ!なんでッ?!」


絶対、もう天也にも送信済みだよ。


「急がなきゃ!!」


私は頼んだコーヒーもコーラの事も忘れ、

天也の元へと急いだ。


「たか・・・。」


でも遅かった。


「何だよこれ。」


天也の顔が怖かった。


直視出来ない。


あんな顔、見た事ない・・・。


「たか・・・あのね、聞いて。」


「どういうことだよ?

これ。言えよ。」


怖いよ・・・。


「あ、あのね・・・。」


「さっさと言えよッ!」


怒ってるの?


でも、とても悲しそうだった。


「ごめんなさい。

黙ってて。

でもね、言えなかったの。

天也が好きだから。

・・・軽蔑されたくなくて・・・。

でも、もう言うしかないね。

あの日の事。」


―全て話した。


四葉の女に言われた事、

男達にされた事。


優司さんに助けてもらった事・・・。


天也は黙ったまま。


もう、終わりだね、私達・・・。


「軽蔑したよね・・・。

もう、別れよう?

嫌でしょ、こんな女。」


精一杯の強がりで、涙を堪えていた。


「聖音・・・。」


「バイバイ。天也・・・。」


天也に背を向け、歩き出す。


―その時。


後ろからぎゅっと抱きしめられた。


「―ッ!天也、はなし・・・。」


「離さねぇ。

・・・ごめんは俺の方だ。

気付いてあげられなくてごめん。

辛かっただろ?

苦しかっただろ?

俺が・・・助けてやりたかった。

守ってやりたかった。」


「たかやぁ・・・。」


「泣きたかったら泣けよ。

ここは聖音専用だからな。」


胸を指して天也は言った。


「ふ・・・ふぇぇ・・・。」


酷いよ。せっかく堪えてたのに。


―しばらく泣き続けた後、

私は天也を見た。


そこには、

さっきの怖い顔はなく、

優しい、いつもの天也の顔があった。


「ぐすっ・・・。

ごめ・・ね。天也・・・。」


「聖音さん、気が済みました?」


「はい・・・。」


「では、まず、ケータイを貸して下サイ。」


「え・・・?」


「いいから。な?」


「・・・ん。はい。」


何考えてんの?天也。ケータイ貸してなんて。


「よし、これでOK!はい聖音。」


天也はケータイを返してきた。


「ねぇ何したの?

なんかいじった?」


「あぁ、消しただけ。

さっきのメール。

で、俺のも消した。

何にもなかったんだよ。」


「・・・?」


なかったって・・・。


「完全に何もなかったってのはさすがに無理だけど、

俺は何も知らない。

聖音にも何もない。

俺達は学校サボって遊園地に来た。

それだけだよ。

でも・・・。」


「でも?」


「メルアドは変えろよ?」


そーゆー事か。


天也の精一杯の思いやり。


「分かってるってば。

そんなの。」


「聖音は辛口だな〜。

ま、そこが好きなんだけど。」


天也、ありがとう。


おかげで病んでいたこの一週間が馬鹿みたい。


でもね、凄く救われた気がしたの。


胸の奥に刺さってた何かが取れた感じ。


「なぁ、聖音。」


帰る途中、急に天也が言い出した。


「何?」


「俺達の間では、隠し事はなしにしよう?

俺さ、何聞いても聖音の事、好きだから。」


「天也・・・。」


私の過去を知っても?


好きってゆってくれるの?


「俺、心変わりはしない。

誓うよ。

聖音より美人なんてこの世には居ないと思うし。」


「そんな事ない・・・。

天也、聞いてくれる?」


「何?聞いてやるよ。」


ずっと隠して怯えるより、

話してスッキリしたい。


天也ならきっと受け止めてくれる、って思う。


「あのね、

驚くなって言われても、

無理だと思うからゆわないけど・・・。」


「何だよ?」


え・・・と、怒ってる?!


まだ何も言ってないのに。


「私・・・元ヤンなの!!」


どうせゆうんだから、直球で。


「・・・。」


天也は何も言ってくれない。


「キッカケは中学校入る直前。

親と大喧嘩したの。

でね、家飛び出して、

フラフラしてた時に、

ヤンキーに捕まってさ。

そのまま・・・。

元になったのって、

天也と出会う、ちょっと前。

こんな事して何になるのって思いだしたら止まんなくて、

化粧品とか服とかクローゼットの奥に

詰め込んでヤンキーと手ぇ切って。

今日寝不足なのは、整理してたからなの。

全部捨てて、

忘れようって。

ごめんね。

今度こそ・・・軽蔑した?よね。

仕方ないよ。

そうゆう事してたんだから。

でも、でもね。

それでも天也が好き。

大好きなの。別れたくないよ・・・。」


最初は変な、隣に越してきたナンパ野郎かもって思った。


話してみて、かっこよくて、

ちょっと強引なトコに惹かれた。


今天也は私にとって、とても大切な人。


失いたくない。


「聖音・・・俺は知ってたよ。

聖音が元ヤンだって事。」


「え・・・?」


知ってた?じゃあどうして・・・。


「聖音が隠してたから、

俺も隠してたけど、もういいな。

俺が初めて見た聖音はヤンキーだった。

時間とか一緒にいる人から考えて、

そうなんだなって。

でも、聖音は他の人とは違ってた。

なんか・・・まぁ、俺の一目ボレは事実。

で、後追って、

住んでるトコ知って、後はこの通り。」


天也は知ってた。


全部。


知ってて私に付き合おうって言ったの?


付き合ってくれたの??


「家は偶然なんだけど、驚いたよ。

新しい家が聖音の家の隣なんてさ。

運命かもって思った。」


「ねぇ、天也。

私なんかでいいの?」


「何度も言わせんな。

私なんか、じゃなくて聖音がいいの。

聖音が好き。

元ヤンとかカンケーない。

そのままの聖音が好きなんだよ!!」


「天也・・・も好・・。」


大泣きしてて上手く言えない。


「何?聞こえない。」


「私も・・・っ。

天也が大好きッ!!

側に居させて下さい・・・っ。」


初恋だからとか関係なく、

私はこの恋を大切にしたい。


―ううん。


天也を大切にしたい。


こんな私でも思ってくれるから。


私もそれ以上に思うよ、

天也の事・・・。




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