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第四十六話 愛を誓う

「お疲れ様、聖音。

それから、おめでとう」


「音緒ママ…」


結婚式を終え、

控え室に戻り、

ドレスを脱いでいる時だった。


音緒ママが拍手しながら入ってきた。


「とても素敵だったわ。

今日の聖音は、

世界で一番綺麗」


「ありがとう、音緒ママ。

…ちょっとだけね、

なんで私だけ仲間外れって怒ったけど、

でもすっごく、嬉しかった」


「うん、いい顔してる。

今幸せ?」


「うん!

多分、今が一番幸せっ!!」


「そう、よかったわ。

今日はここのスウィートを取ってあるの。

私達からのお祝い。

侑人くんとごゆっくりどうぞ」


そう言って、

音緒ママはカードキーを机に置いた。


「わぁ、ありがとうっ!!」


「あ、そうそう。

侑人くんのお母様が聖音と話したいって。

控え室に来てもらう?」


「着替え終わったら行くから、

待ってて下さいって伝えて」


待たせるのも申し訳ないけど、

わざわざ来てもらうのもちょっと考えちゃう。


良好な嫁姑関係を築くための、

あんまり伝わらない努力。


こんな私でも、

一応は考えてるんですよ?


一応だけど。


「わかった、

じゃあロビーにいるから」


「はぁい」


スタッフさんに手伝ってもらって、

スピードアップ。


バッチリメイクも綺麗に落として…


やば。


眉毛薄いんだった。


「ごめんなさい、

眉毛だけ描かせてもらっていい?」


ヘアメイクをしてくれたスタッフさんにお願いして。


「はい、どうぞ」


私はアイブロウペンシルを借りて、

せっせと眉を描いた。


すっぴんよりはまだ、

多少は見れる顔だと思う。


「ありがとうございました」


丁寧にお返しして。


「今日はお世話になりました。

ありがとうございました」


そうお礼を言って、

控え室を出た。


「末永くお幸せに」


スタッフさんのその言葉で、

あぁ本当に結婚式挙げたんだなって実感した。


なんだかまだ、

夢を見てるような気分でいたから。


ロビーに行くと、

両家が揃って、

話に花を咲かせていた。


「お義母様、お待たせてすみません」


貴臣さんのお母様…お義母様に、

お待たせした事を謝った。


「あ、聖音ちゃん。

もう着替え終わったのね」


お義母様はにっこり笑って、

私を迎えてくれた。


「はい。

お話というのは…」


「そんな畏まらなくていいのよ。

とても素敵な式だったわって、

感想を言いたかっただけなの。

でも本当に…

聖音ちゃんが私達の娘になったのね」


「これから宜しくお願いします、

お義母様」


私は深く頭を下げた。


「こちらこそ。

侑人に意地悪されたら、

いつでも言ってきてね。

私達は聖音ちゃんの味方だから」


「そう言っていただけると、

とてもありがたいです」


私がにっこり笑って言うと。


「母さんも聖音も、

人をなんだと思ってるんだよ」


ちょっと侑人さんは怒って言った。


「女ったらし」


お義母様はズバッと言った。


女ったらしって…


「母さん、それはもう卒業したって」


「え、認めるんだ?」


「ちょっ、聖音!!

その裏切りはないでしょ」


「はいはい。

でも私と付き合うまでは、

クズ野郎だったもんねぇ?」


私はとどめを刺してやった。


本当の事だもんね。


現に大嫌いだったわけで。


「ばっ…もういい」


侑人さんはすねちゃった。


「じゃあ私達、

親だけで食事会するから。

後は、ごゆっくりね」


「あ、お義母様…」


お義母様は逃げるように、

ママ達の所へ向かい、

それから、

みんな揃ってホテルを出ていった。


この状況…どうすんの?


「侑人さーん…

ごめんってば」


「やだ」


「もー、

そんな事言ってると、

私1人でスウィート泊まるからね?」


そんな冗談を、

いたずらっぽく言うと、

やっと反応してくれた。


「1人でスウィートとか淋しくない?」


「別にぃ~?

ご機嫌ナナメの新郎さんがいるより、

ずぅーっとマシですけど?」


本当は、

侑人さんがもう怒ってないことわかってる。


と、いうより。


この人は別に、

最初から怒ってない。


だから、

ちょっとからかって、

遊んでいるだけ。


「悪かったよ。

つーか、怒ってないし」


ほらね。


そして、

喧嘩はいつも、

侑人さんが折れて終わる。


鬼嫁とか言わないでね?


ちゃんと、

立てるとこは立てるんだから。


「しょーがないなぁ…きゃあっ!!」


侑人さんは、

いきなり私をお姫様抱っこして、

ホテルのエレベーターへ向かった。


「まだ言えてなかったから、

今言うぞ?」


「な、何?」


どんな事を言い出すのか、

内心ドキドキだった。


さっきまでの会話があるから。


でも…


「ドレス、凄く似合ってた。

俺は世界で一番綺麗な奥さんに恵まれた、

幸せ者だって思った」


ちょっと照れて、

赤くなったから、

こっちまでつられて赤くなっちゃった。


「ば、バカ!!

恥ずかしいじゃん…」


「もう一回言ってやろうか?

世界で一番…」


「わわわっ!!

もうわかったってば!!」


私は侑人さんの口を急いで蓋した。


そんな歯の浮くようなセリフ、

一回で満腹だよ。


「侑人さんも、

かっこよかったよ」


「俺はいつでも格好いいの」


「うっそだぁ~」


「そんな事ばっか言ってると

お仕置きするぞ?」


ニヤ~っと笑った顔に、

寒気がした。


「あ、今エロい事考えたな?」


「へっ!?

考えてないって!」


「そんな花嫁さんにはやっぱり、

ちょっとお仕置きだな!」


「もぉやだーっ」


その時、

チンッとベルが鳴って、

エレベーターのドアが開いた。


「では、お姫様。

夢の国へ参りましょう」


「もう好きにして…」


ついていけないわ。


そう思いながら、

愛する人の腕の中から、

私は出ようとしなかった。


―――最上階のスウィートから眺める、

最上級の景色には目もくれず。


私達はお互いだけを見て、

何度も愛し合って、

幸せな時間を過ごした。


「…もし明日世界が滅んでも、

今なら後悔はないかな」


「せっかく始まったばかりなのに、

今終わったら寂しいよ」


「ははっ!

それもそうか」


「幸せすぎて、怖い」


「なんで?」


「…またこの手から、

こぼれ落ちて行くような気がして」


「俺はずっと、

聖音の傍にいるよ。

毎日愛してるって、

キスをする。

それでも怖い?」


「ふふっ…バカ…」


そんなキザなセリフでも、

かっこよく似合うのが、

ちょっとだけ悔しい。


だって、

また惚れちゃったから。


「忘れたらどうしよっかな~?」


「忘れないな、絶対」


「すっごい自信。

どこから来るの?」


「それは…ほら。

俺が聖音にベタ惚れだからだよ」


自信満々で、

しかも真顔で言ってくれるから、

こっちのが恥ずかしくなっちゃった。


「こんな事言うの、

聖音だけなんだからな。

信じろよ?」


「信じてなかったら、

結婚しないって」


そう。


侑人さんは初めてプロポーズをされた日から、

ずっと私だけを見てくれていた。


どんなに嫌いと意思表示をしても。


変わらず愛してくれていた。


だから信じられる。


そして私も、

この先ずっと、

この人と生きていくんだと。


本気でそう思っていた。

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