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第四十三話 親バカ

病院から帰宅した私を待っていたのは、

誰もいない淋しい部屋…


のはずだったのに。


玄関を開けた瞬間、

一斉にクラッカーが鳴った。


「「聖音、退院おめでとう!!!」」


そこにいたのは、

聖斗パパ音緒ママに…

なんと百合ママと修斗パパ!!


「みんな…どうして……」


聖斗パパ達は仕事のはずで、

修斗パパは忙しい人だし、

百合ママはいつ上京したの?


「…音緒さんから連絡もらってね。

白血病が再発したかもって言うから。

いてもたってもいられなくて、

昨日こっちに出てきたのよ」


「悪い事ばっかり浮かんじゃって。

百合さんに思わず連絡してしまったの。

でも…今朝、

病院から連絡もらってね。

再発していないって聞いて。

もう退院できますよって言われたから、

お昼まで、聖音には

検査結果を教えないで下さいって、

頼んでね。

そこから聖音を驚かせようと、

慌てて準備したの」


「後は、修斗さんや聖斗さんに電話して…

でもこんなに驚いてくれるなんて、

本当嬉しいわ」


4人はドッキリ大成功に大喜びしていて。


私はそれを見ながら、

嬉しいやら呆れるやらで。


さすがだなって思った。


同じ事考えちゃう辺りが、

やっぱり親子なんだって。


笑ってたら、

突然肩をトントンされて。


「……もうっ!

何なの!?」


半分やけくそで振り返って、

思い出した。


「えーと、ですね…

聖音さん。

僕帰っていい?」


「あ、侑人さん忘れてた…」


部屋までついていくと引かなくて、

侑人さんも一緒だったこと。


「あら、侑人くん。

立派になったわね!」


「誰だ?」


音緒ママの横から、

聖斗パパが口を挟む。


「音緒さんは変わらず美人ですね」


「ありがとう。

それより…

今、聖音と付き合ってるんだって?」


「何だって!?」

「初耳だぞ!?」


横で驚き、

ショックを受けてるパパ達。


音緒ママにしか言ってなかったもんね。


(というか、

私が運ばれ日の帰りに、

病院でバッタリ遭遇したらしく、

昨日問い詰められた)


「あ、はい。

結婚前提のお付き合いを、

させて頂いてます」


丁寧に挨拶する侑人さん。

でもこんな事してる場合じゃない。


もう戻らないと。


「ちょっと、侑人さん!

流暢に挨拶してる場合じゃ…」


「わかってるよ。

…こんな時にすみません。

僕は貴臣侑人と申します。

皆さんが大切に育てて下さった、

素敵なお嬢様を、

心から愛してます。

絶対に不幸にはしません。

だから、

交際を認めて下さい。

お願いします!!」


侑人さんは、

パパママ達に頭を下げた。


でもそれ、

半分…てか、ほぼ?


言ってる事、

結婚の挨拶じゃない?


「今日は収録に戻らなければなりませんので、

これで失礼いたします。

また改めて、

ご挨拶をさせて下さい」


侑人さんはもう一度頭を下げて、

そそくさと帰っていった。


…てか逃げた?


言い逃げ!?


「最近の若い男にしては、

ちゃんとしているな。

感心、感心。

…さて、聖音。

よぉく話を聞かせてもらおうか」


侑人さんが去った後は、

針のむしろが待っていた。


こんな怖い聖斗パパ、

初めてかも。


「ちょ、ちょっと待って。

聖斗パパ、お仕事は?」


「そんなのはどうでもいい。

まずはあの青年について、

きちんと話してもらうよ」


聖斗パパに詰め寄られ、

音緒ママに『助けて』というサインを送ったけど、

首を横に振って、

『諦めなさい』というサインが戻ってきた。


それから聖斗パパは、

退院したばっかりの娘を、

2時間も質問攻めにした。


私の退院のお祝いで集まったはずなのに、

何故か拷問を受けている。


…なんかおかしくない!?


「…聖斗、それくらいにしたら?」


さすがに同じ事を、

くどくど問い詰める聖斗パパに、

皆が嫌気がさしてきて。


やっと音緒ママが止めに入ってくれた。


「俺も、

二十歳過ぎた子の恋愛に、

親が口を出しすぎるのは、

どうかと思うぞ?」


修斗パパの援護射撃は、

かなり効果があって。


「音緒ママ…修斗パパ…」


「…もういい。

わかったから」


半分ふて腐れて、

聖斗パパは喋るのをやめた。


「ごめんね、聖斗パパ。

私の事、

心配してくれてるんだよね?

でも安心して。

私、あの人が好きなの。

今幸せだよ」


「…聖音が幸せなら、

何も言うことはないんだ。

いきなり大人になってしまったみたいで、

寂しいな」


聖斗パパの目元には、

一粒の涙。


そんな事、

思ってくれたんだ。


「…バカね、あなた。

恋人が出来ても、

誰かと結婚しても、

聖音はずっと、

私達の娘でしょう?」


「そうだな…

そうだよな……」


「聖音のお祝いなんだから、

しんみりさせないでよね!!

さぁ、仕切り直しよ」


それから夜まで、

大いに盛り上がり、

私が疲れて寝た後も4人で飲んでいた。


…そして、

そこである計画が企てられていた。


私がそれを知ることになるのは、

もう少し先の事。

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