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第三十六話 波乱の幕開け

「おはようございます!!

今日も1日、

よろしくお願いします!」


スタジオに入るのと同時に、

私は元気な声で挨拶した。


どっちかといえば、

自分に気合いを入れるために。


「おはよう、聖音ちゃん」


「監督、おはようございます」


最初に声をかけてくれたのは、

渋沢監督だった。


昨日の今日で、

若干引いているのか、

声をかけづらいのか、

私と目を合わさないようにしてる、

スタッフさんと共演者が数人。


貴臣さんのファンらしき、

私を睨む共演者が数人。


(彼女達と絡みのシーンはほぼゼロなので、

問題なし)


ここは、針のむしろ?


音緒ママの応援と、

京華の脅しがなきゃ、

完全に帰ってたかも。


「おはよう、聖音。

ちょっとこっちおいで」


ぐいっと私の腕を掴んで引っ張ったのは、

京華だった。


「ちょっ、京華!」


スタジオの隅で止まって、

しゃがみこんだ。


「さぁ、話しなさい。

貴臣さんとの関係を。

プロポーズされたって、

どういう事なのかを」


いつになく、

顔が近い京華。


やっぱ美人だわ…。


「…情報早いね、京華」


「芸歴16年の情報網をなめちゃいけないよ」


「そだね、ごめん。

…でもね、電話で言った通りだよ。

私は昨日が初対面だし、

キスをされた意味もわからない。

プロポーズなんて、無茶苦茶。

こっちが聞きたいくらいだよ」


「ふーん…

嘘は言ってないみたいね」


「京華は信じてくれるよね?

私はあんな男大嫌い」


「…わかった。

そうよね…オフはほとんど一緒にいる私が、

知らないんだもんね。

私に内緒で、

付き合ってるのかと思っちゃった」


「やだよ、あんな男。

絶対好きになんかならないんだから」


「そんな事言ってると、

カレシ出来ないよ?」


「う…いいもんっ!」


「でもさぁ、聖音。

貴臣さんて、

共演者から告白される事はあっても、

貴臣さんから告白してるとこって、

誰も見たことなかったのよ。

その意味…わかる?」


京華の一言が突き刺さった。


それって…


私は特別って言ってるみたい。


「貴臣さんの気持ちは、

貴臣さんにしかわからないけど、

聖音へのプロポーズもキスも、

冗談だけでしたとは思えないな…」


まさかの京華の裏切り的一言に、

私は驚いた。


「ねぇ、京華…

もし私が、

貴臣さんのプロポーズを、

受けるって言ったらどうする?」


「どうするもなにも…

聖音がいいなら、

いいんじゃないの?」


京華はあっけからんと言った。


じゃあ何で…怒ってたの?


「もしかして…聖音、

何か誤解してるんじゃない?」


「え!?」


「私が怒ってたのは、

イケメンの人気俳優に、

公開プロポーズされてたって事じゃなくて、

私のいない時に起こったからで、

ついでに言えば、

私の知らない所で聖音が、

彼氏作ってたのって事。

それは誤解だったってわかったから、

もう怒ってないし」


「なんだぁ~」


なんか拍子抜け。


「ごめん京華。

私は京華が貴臣さんの事好きで、

だから怒ってるのかと…」


「まさか。

貴臣さんは、

ただの目の保養だし。

…私達誤解しあってたみたいね」


やっとお互いの誤解が解けて、

私達は顔を見合わせて笑った。


てゆーか、

目の保養って…。


「そこの2人さん。

何か楽しそうだね」


肩をぽんっと叩かれ、

京華と同時に振り返ると、

そこには諸悪の根源が立っていた。


「げっ…」


「おはようございます、

貴臣さん」


普通に拒否反応が出た私に対し、

さすがは芸歴16年の対応を見せた京華。


「おはようございます。

相道さんとご一緒するのは、

2回目でしたよね?」


「覚えて下さってたんですね」


「もちろん。

大先輩ですし。

僕みたいなのにも、

きちんと挨拶して下さるし」


そう言いながら、

貴臣さんは私を見た。


それはまさしく、

私に対する嫌味だ。


初対面であんな事しといて、

よく言うよ。


私は思いっきり、

あっかんべーをしてやった。


「ありがとうございます。

では貴臣さん、

その先輩から、

1つだけお願いがあります。

…聖音は私の大切な友人なので、

いじめないでくださいね」


京華のその一言は、

凄く嬉しかった。


まさか、

かばってくれるとは思ってなかったから。


なのに、

こいつは…


「お言葉ですが、

相道さん。

僕はいじめてはないですよ。

ただ好きだとお伝えしただけです。

応援してくれますよね?」


と、開き直って言った。


京華もお手上げという感じで、

「わかりました」

見事に、

仲間にされてしまった。


四面楚歌の気分だよ…。


あ、柄にもなく、

難しい言葉使っちゃったよ。


「て、事で…聖音チャン。

今日も1日頑張ろうね♪」


「勝手に名前で呼ぶなぁっ!!」


…こうして、

貴臣さんに振り回される日々が始まった。


映画の撮影も、

まだまだ始まったばかり。

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