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第二十九話 ドラマ収録

私のデビュー作での役は、

まさかのヤンキー娘だった。


…はい。


演技ほぼいらない。


なんせ、

元ヤンだから。


まぁそれは置いて。


私の役である『桜本 麗』は、

17歳の高校生。


あることがきっかけで、

自分が養女だと知る。


裏切られたという悲しみから家出。


町で有名な不良グループと、

行動を共にするようになる。


しかし、実の兄である主人公と出会い、

本当の事を知り、

更生していくが…。


という子。


ネタバレ。


死にます。


確か10話完結のドラマで、

6話目で事故で死んじゃうの。


まぁ主人公の妹なんで。


でも最終回で、

回想でちょろっと出る。


しぶとい?


ドラマだからいいの(笑)


京華の役は主人公の彼女。


花菜は京華の親友で同僚。


京華とは絡みがあるけど、

(主人公の彼女役だから)

花菜とはない。


そして主人公は、

最近注目を集めてるイケメン俳優、

香坂 李希(りき)


しかも彼の初主演作となる。


それだけで結構注目されてるドラマ。


だけに…本当に私で良かったのかな?


色々不安になる。


でもやると決めたのは私だから、

ちゃんとやり遂げる。


そして今日は、

収録初日。


「シーン16。

麗が養女であると知る場面から行きます。

麗、入って」


「はい!」


最初の収録は、

麗が養女と知ってしまう所。


麗は祖母のお葬式で、

母親と叔母の会話を聞いてしまって、

自分が養女だと知る。


「リハから行きます。

よーい…」


カチンコが鳴ったと同時に、

セットの部屋から、

母親と叔母の会話が始まる。


私はそれを、

扉の外で聞いている。


セリフはない。


言葉なしに、

驚きと悲しみを同時に表現しなければいけない。


でもこれは、

多分出来る。


そこにいるのは、

あの日パパとママの会話を聞いてしまった、

聖音と同じ気持ちだと思うから。


本当の娘じゃないんだ。


今までは全て嘘だった。


本当の親は私を捨てた?


どうして?


そんな感情。


「カーット!!

麗、その表情いいね」


「ありがとうございます!!」


監督の褒め言葉は、

私の自信に繋がった。


このシーン、

本番もなんなくクリア。


初日はどのシーンもNGなしの一発OK。


スムーズに撮影が進み、

初日は夜11時に収録が終わった。


「お疲れ様、聖音ちゃん」


スタジオを出ようとした時、

監督が声をかけてくれた。


メガホンを持つと怖いけど、

今は穏やかなで全然怖くない。


「あ、監督!

お疲れ様でした」


「初めてしちゃあ、

上出来だったよ。

さすがは朝日奈夫妻の娘」


「ありがとうございます!

両親の名を汚さないようにって、

そればかり考えてたので…」


「そうかい。

でも、そんな事ばかり考えていたら、

演技楽しくないよ。

もっと肩の力を抜いてもいいんじゃない?」


監督は肩をポンポンと叩きながら言った。


「はい、

ありがとうございます!

では、これで失礼します」


私は監督に深々と頭を下げて、

スタジオを出た。


楽屋に戻り、

私服に着替えていると、

誰かが扉を叩いた。


「聖音さん、戻ってますか?」


マネージャーの陽流さんだった。


「お疲れ様でした。

明日も同じ時間だそうです」


「わかりました」


「車回してきますね。

準備が出来たら、

降りてきて下さい」


「ありがとうございます、

陽流さん」


陽流さんは今来たのに、

部屋を出ていった。


もう少しゆっくりでも私は構わないのに。


つられて私もさっと着替えを済ませて、

鞄を持って楽屋を出た。


地下の駐車場では、

既に陽流さんが入り口の側に車をつけて、

待っていてくれた。


「お待たせしました」


「いいえ、

ご自宅でよろしいですか?」


「はい、大丈夫です」


後ろに乗って、

シートベルトを締めると、

車は走り出した。


その時、

京華からLINEが来た。


『明日録り終わってから、

会わせたい人がいるんだけど、

空いてる?』


明後日は私も京華もオフ。


だから、

ちょっとくらい遊んでも平気。


『空いてるけど、

会わせたい人って?』


返事を送るとすぐに、

既読がついた。


『秘密!会ってからのお楽しみ』


そう返ってきた。


ふーん、

もしかして京華の彼氏とか!?


そんな風に軽く考えていた。


だけど…まさか、

あの人だったなんて。

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