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第二十三話 バースデーサプライズ

目の前のデコレーションケーキには、

『happy birthday 聖音』

と書かれたプレート。


聖斗パパが、

1と6の数字の形のろうそくに火を点けた。


ハッピーバースデーの歌を、

聖斗パパと音緒ママが歌ってくれた後、

思い切り息を吹きかけ、

ろうそくの火を消した。


「ハッピーバースデー、聖音!!」


「おめでとう!!」


「ありがとう、聖斗パパ、音緒ママっ!!」


東京へ来て、5日。


今日は私の誕生日。


初めて聖斗パパと音緒ママと過ごす、

ちょっと特別な誕生日。


「はい、聖音。

これは俺からの誕生日プレゼントだよ」


そう言ってパパが少し大きめの箱をくれた。


「ありがとう、聖斗パパ」


「私からはこれよ」


次に音緒ママが一回り小さい箱をくれた。


「ありがとう、音緒ママ。

ね、早速開けていい?」


「いいよ。

その間に、ケーキを切るわね」


そう言って音緒ママは、

キッチンにケーキナイフを取りに行った。


綺麗に巻かれた包装紙を、

私は丁寧に少しずつテープを剥がしていく。


最初に開けたのは聖斗パパがくれた箱。


中には、私が好きなブランドのバッグが入っていた。


「ありがとう、聖斗パパ!

これ、欲しかったんだぁ~」


「喜んでもらえて、良かったよ」


音緒ママからのプレゼントは、

同じブランドの靴。


「ありがとう、音緒ママ!

サイズピッタリっ!!」


私が鼻歌混じりで靴を履いていると、

聖斗パパが、また別の箱を持ってきた。


「どうしたの?」


「これは、兄さんと百合さんからのプレゼントだよ」


そう言って、私にくれた。


「パパとママから?」


もうパパとママからは貰えないと思ってた。


だから思わず、涙出ちゃったし。


「開けてごらん、聖音」


私はこくんと頷いて、涙を拭いた。


そして、包みを剥がして箱を開けると、

そこにはワンピースが入っていた。


「わぁ~すっごく嬉しいっ!!」


「明日は、このワンピース着て出かけようか。

靴はきっと、これが合う」


「うん、ありがとうっ!

楽しみ~っ」


バッグもちゃんとこのワンピースに合う。


4人の思いが詰まったプレゼントに。


私は久しぶりに心から笑えた。


―――翌朝。


「聖音、準備できたー?」


音緒ママが部屋に入ってきた。


「あ、音緒ママ!

もうちょっと…出来たっ」


ワンピースのホックがなかなか留まらなくて、

格闘していた私。


「ふふっ、留まってないよ」


音緒ママは笑って、

留め直してくれた。


「ありがとう」


「呼んでくれたら良かったのに」


「ごめん、出来ると思ったんだけど…」


「はははっ!

そういう所、似るんだな」


扉の前で聖斗パパが笑っていた。


「失礼ねっ」


音緒ママはちょっとむっとしていた。


「何の事?」


私は訳がわからなくて、

1人首をかしげていた。


「音緒も中学生の時、

それでドレス破った事があるんだよ」


「えっ!?」


「ちょっと、

聖音には言わないでっ」


音緒ママは急いで聖斗パパの口を塞ぎに行くけど、

もう遅い。


「もう言っちゃったし」


いたずらっ子の笑顔をする聖斗パパ。


本当に2人は仲がいい。


「親子って、

1番似て欲しくない所が似るんだって。

ちゃんと親子だって証拠だね」


よくママが言ってた。


今思えば、

ママはどんな気持ちでそれを言ってたんだろ…


「聖音…」


2人はじゃれあいを止めて、

私を見てた。


「何か変な事言った?」


「ううん、なんでもないよ。

準備が出来たなら、行くよ」


「はぁい」


音緒ママと聖斗パパは先に部屋を出て、

玄関へと向かった。


私もバッグを持って、

「いってきます」と誰もいない部屋に言って、

玄関へ向かった。


もうそこには2人の姿はなくて、

急いでエレベーターに向かった。


「聖音、早く!」


「やだ、待ってよぉ!」


やっと追い付いた時、

2人は既にエレベーターに乗っていた。


閉まる寸前で、

聖斗パパがドアを押さえて、

ギリギリセーフ。


「のんびり屋な所も、

音緒に似てるかな」


「「のんびり屋じゃないわ!!」」


聖斗パパの言葉に、

ハモりながら否定した私と音緒ママ。


うん…似た者親子です。


もう認める。


でもっ!


のんびり屋じゃないよ?


どっちかってゆーと短気?


じゃなきゃ、

ヤンキーやってない。


だから今は、

それを必死で隠してるんだもん。


ぜーんぶ知ってるのはわかってても、

ちょっとだけ、

聞いていたよりマシって思われたいの。


うーん、違うかな。


大人になったって思われたいの。


そんな事言ってる時点で子供って?


まぁまだ16なので。


ギリ子供?


でも、もう結婚だって出来る歳だよ。


「聖音、早く乗りなさい」


「はぁい」


いつの間にか、

玄関ロビーに着いてた。


止まっているタクシーに、

もう聖斗パパは乗っていて、

音緒ママが私を呼ぶ。


「そういえば、どこへ行くの?」


乗りながら聖斗パパに聞く。


「それは、

着いてからのお楽しみだよ」


「聖斗パパのケチ」


音緒ママなら教えてくれるかなぁ、

とアイコンタクトをする。


「あら、

私も言わないわよ?」


あっさり。


「ぶぅ。

音緒ママまでぇ」


絶対言わないと決め込んでいるみたい。


本当に着くまで教えてくれなさそう。


私は諦めて、外を眺めてた。


そういえば、

3人で出掛けるのは初めてだ。


だからこそのサプライズなのかも。


そう思ったら、

嬉しくなった。


ずっと離れてた娘でも、

ちゃんと娘だって思ってもらえてるんだって。


「変なコね。

突然ニヤニヤしちゃって」


隣の音緒ママが言った。


「それ娘に言うセリフ!?」


「言うわよ、娘だから」


膨れっ面しながら、

でもやっぱり嬉しかった。


娘だって言われたから。


「おーい、着いたぞ」


前の席に座ってた聖斗パパが教えてくれた。


タクシーが停まったのは、

大きなホテルの前。


海外から来る人とか、

VIPが使うホテル。


「じゃあお姫様、

どうぞ」


そう言って、

聖斗パパはエスコートしてくれる。


「はい」


私がそっと手を奥と、

聖斗パパはきゅっと握って歩き出した。


「本当にお姫様になった気分っ♪」


「なんか妬けちゃうわ」


ルンルン気分の私と正反対の音緒ママ。


「いつもは音緒のだけど、

今日だけは聖音の王子様だよ」


そんな事をへーぜんと言えちゃう聖斗パパ。


娘に妬いちゃうくらい、

聖斗パパが好きな音緒ママ。


素敵で、私の理想。


ラブラブなとこごめんね。


今日は聖斗パパって王子様。


借りまぁすっ。


「ここのレストランで、

聖音に会わせたい人が待ってるの」


1歩前を歩く音緒ママが、

振り向いて言った。


会わせたい人?


2人の知り合いとか?


誰だろう。


ホテルの25階にあるレストラン。


扉を開けて入ると、

さっと店員さんが側までやってきた。


「いらっしゃいませ、

何名様でしょうか?」


「予約した朝日奈と申します」


聖斗パパがそう告げる。


「失礼致しました、

ありがとうございます。

朝日奈様ですね。

こちらへどうぞ」


店員さんはそう言って、

私達を店の奥へと案内してくれた。


店の奥にはまた扉があって、

その前で立ち止まって、

ノックした。


コンコンっ。


「失礼します。

お連れ様が到着されました」


「どうぞ」


中から女の人の声がした。


店員さんは、そっと扉を開けた。


先に音緒ママが、

それに続いて聖斗パパと一緒に入った。


そして、私は驚いた。


「うそ…パパ、ママ!?」


「元気だった、聖音?」


「久しぶり」


その部屋で待っていたのは、

パパとママだった。

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