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第十九話  3つの約束

「俺達は、お前を守る為に3つだけ、

絶対の約束を交わした。

そしてそれを守り、お前を育ててきた。」


「・・・。」


「1つめは、本当の親は聖斗達だと言わないこと。

俺に兄弟がいないと偽ること。」


「叔父さんがいることも、

言っちゃダメだった?どうして?」


「関係を完全に絶つためだ。

叔父としてでも会えた。

だけどそれをあいつらは望まなかった。」


「なんで・・・。」


「少しでも顔を見たら、

抱き締めたくなるから。

本当の親は私達だって言いそうだったから。」


「ママ・・・。」


「聖音が好きだったから。

大切だったから。

会えなかったのよ。」


「俺達を本当の親と信じて疑わない聖音を、

見たくなかったんだよ。」


「・・・・・・2つめは?」


「どんな些細なことも伝える。

だから入院のことも全部知ってる。」


「白血病の事も・・・。」


「聖音がよくわからない虫が苦手なこと、

猫舌で熱い物がダメなこと、

口や態度が悪いけど心優しいこと。」


「そんな・・・。」


「もちろん過去の事だって。」


「過去?」


ヤンキー時代のこと?


「小さい頃からやんちゃで、

よく怪我をして帰ってきたこと。

派手な喧嘩をして、補導されかけたことも。」


「俺達はあいつらが見れない分、

聖音の成長を見て、伝えてきた。」


「私達は聖斗さん達と一緒に、

聖音の成長を喜んでいたの。」


私の知らないところでママもパパも。


本当のパパもママも。


苦しんで、喜んで、心配して。


私のことをちゃんと見ててくれたんだ。


「最後の約束は・・・聖音が高校を卒業したら、

この話をすることだった。」


「高校・・・。」


病気を理由にやめた・・・。


「18になったら、

きっと真実を受け止められるだろうからって。」


「だけどもう、

聖音は真実を知っても大丈夫だと思った。

あの日電話をもらってそう感じたんだ。」


「パパ。」


「まだ16。

でももう16なんだよな。

俺は普段東京だから、

百合に任せっぱなしで。

聖音は久しぶりに会う度大人になってた。」


「パパ・・・。」


「言い訳になるけど、

本当はずっと傍にいて、

一緒に暮らしたかった。

でも聖音を隠す意味でもこっちの方がよかったんだ。」


「・・・・。」


「・・・なあ、聖音。

気持ちを聞かせてくれ。

お前は、聖斗・・・本当の親に会いたいか?」


「・・・わからない。

急に言われても、答えられない。」


だってまだ・・・頭の中ぐちゃぐちゃなの。


本当のパパママに思われてることもわかった。


でも、突然すぎて・・・受け止めきれないの。


「まだ日はある。

でも前向きに考えてやってほしい。」


「・・・うん。」


「お前の18の誕生日に本当の事を話して、

あいつらと会わせるのが俺達の、

親としての最後の役目。」


パパが悲しげな顔をした。


最後・・・。


そっか・・・。


「でも、俺はお前にとって伯父で、

百合は伯母なんだ。

それだけは事実だから。」


「・・・。」


「そろそろ寝ましょうか。

もうこんな時間。

修斗さんも明日早いでしょ?」


「ああ・・・明日は会社に顔を出す約束だからな。

聖音も寝なさい。」


「うん・・・お休みなさい。」


「お休み。よく寝るんだよ。

良くなったといっても油断は禁物だからな。」


「・・・・そうする。」


私はリビングを後にした。


さっきまであった眠気はどっかへ消えてしまって、

もう眠れそうにない。


でも、一応布団に潜る。


時が私を眠らせてくれるだろうから。


それに今は眠ろう。


あれこれ考える前に・・・。


事実を受け止められるように・・・。




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