第一話 現実
「うっせぇんだよっ。クチ出すんじゃねェ。」
バチンッと乾いた音が響く。
「ーッ痛ってぇ。クソババアっ。殴んじゃねェよッ。」
「聖音っ。毎晩毎晩そんな格好してっ。
人様に迷惑ばっかかけてッ。」
「アンタもやってたんだろぉがっ。
それに迷惑なんてかけてないっ。
別にいいでしょっ。ほっといてよッ。」
私は外に飛び出した。
「ちょっ、聖音ッ。戻って来なさいっ。聖音ッ。」
うざいうざいうざいっ。
ざけんなっつうの。
―タバコ・酒当たり前。夜遊び当然。
髪は金髪ってゆうヤンキーとは少し違ったけど、
大酒飲んで、頭は茶髪。
毎日のように夜遊び。
中学入る直前、親とモメ、家を飛び出した。
その時にヤンキ―のお兄さんに流されるまま、ヤンキ―の道を歩き出した。
髪を染められ、帰宅した私を待っていたのは母親のビンタ。
そして今も、夜遊びに行こうとする私にビンタをかました。
…私はそんな手をつけられない不良ってヤツだった。
別に施設に容れられたとかじゃなくて。
自分の意思で。
やっと族の人と切れ、ふと気がついた。
こんな事してたっていい事なんて無いし、
何にもならないなって。
冷めて、髪を黒くした。
何かが変わったとかはやっぱり無かった。
不良少女だった事は本当だし、
前から人とつるんだりってゆうのが嫌いだったから。
話し掛けてくるヤツもいたけど、無視していた。
だから、何も変わらない。
変えたくない。
―これが2,3ヶ月前までの私。
毎日をグダグダと過ごし、
ただひたすらテレビに向かったり、
部屋にこもり、時を無駄に過ごしていた。
何もしなくても明日は来るし、
ほっといても、後5、60年は生き続けるだろうし。
―そう思いながらテキト―に学校行って、
帰って着替えて、ダラダラして。
週2で掛かってくる、とっくに切れたはずの夜遊び仲間からの誘いをテキトーに断っていた。
でもうっとうしくてある日、
「私、もう夜遊びはやめました。ヤンキ―はやめたんです。」
って言ったら、
誘いは無くなったけど、
代わりに、私の通う中学の校長に手紙と写真が届いた。
私がヤンキ―だった事を決定付ける、証拠として。
それで私が“本物”だと分かり、
ママを呼び出し、私に2ヶ月の停学をくらわした。
2ヶ月はめちゃくちゃ長く感じて。
暇で暇で、死にそうだった。
停学期間が終わった時の嬉しさは、
尋常じゃなかった。
それが効いて、少しはマシな行動をとれるようになった。
それでも元ヤンのママを見て育っただけあって、
完全には治らなかった。
だけどママを見て、教師達も諦めたらしい。
私とママはそっくりだから。
妙に喧嘩っ早いとことか。
まぁ、親子揃って短気ってこと。
良い事じゃないけど、似てるっていうのはいい事だよね?
うんうん。いいって事で。強制終了。
そんな感じで毎日を生きていた時だったんだ。
天也、あなたと出会ったのは。
今でも鮮明に覚えてる。
きっと忘れる事なんて出来ない。この先ずっと…。