第十四話 別れ
無情にも朝はやってきた。
「聖音ーっ。起きなさい。」
「・・・・。」
・・・私、泣き明かしちゃった。
「聖音、入るよ?」
「入ってこないで!!」
こんな顔みられたくない。
きっと目は真っ赤で腫れてる。
「? おかしな子ね。降りてきなさいよ。」
無理だよ。
ここから出たくない。
誰にも会いたくない。
閉じこもって、出ようとしなかった。
ほんとなら今日は天也と最後のこの町でのデートだった。
天也が迎えにくる時間まで、あと2時間。
でも、もう会えない。
天也の顔見れない。
―「聖音、天也くん来たわよ?」
ジャスト11時。
天也は迎えにきてくれた。
何も言わないのはさすがにダメだよね。
私は一晩考えた台詞を言うために、メイクをばっちりして部屋を出た。
天也に泣いたこと、知られたくなかったから。
――「聖音。遅かったな。調子でも悪い?大丈夫??」
天也はこんな時も優しいんだね。
せっかく止まったのに、また涙があふれそう。
でも、泣いちゃダメ。
ちゃんとお別れしなきゃ。
「・・・天也、話があるの。」
「そんな深刻そうな顔して、どうした?」
「・・・別れよう、天也。」
「今日エイプリルフールじゃねぇよな?んな冗談やめようぜ。」
「冗談じゃない。本気よ。私、天也のこと嫌いになったの。」
「は?何言って・・・。」
「だから、東京も行かない。じゃあね。バイバイ、天也。」
「聖音ッ。待てよッ!!」
顔を見てるのが辛くなって、私はリビングを飛び出して、自分の部屋に駆け込んだ。
鍵をしっかり閉めて。
天也を拒絶するかのように。
「なあ、嘘だって言えよ・・。何があった?」
「何もない・・・!天也が嫌いになっただけ。冷めただけ!!」
「なら俺の顔を見て言えよ。」
「もういいでしょ!帰って。私の気持ちは伝えたから。」
「聖音・・・。」
しばらくして階段を下りる音がした。
もう・・終わりなんだ。
天也・・・。
こんなにも会いたい。
追いかけたい。
抱きしめたい。
抱きしめて欲しい。
でも、できない。
私が裏切ったから。
そう、天也を裏切った。
ごめんね、ごめんね。
天也を傷つけた。
ごめんね。
どんなに謝っても許されない。
もうあの笑顔に癒されることもない。
窓から見下ろした天也の背中は。
とても淋しそうで。
胸が締め付けられた。
ごめんね。
天也。
ごめんね・・・。
ほんとは嫌いになんかなってない。
大好きだよ。
だから苦しくて、そばにいれないの。
ごめんね。
ごめんね。
ごめんね。
天也・・・。