第十話 決意
告知から3日間、
天也は私の所に来てくれなかった。
なんとなく来づらいんだと思う。
あんな事言っちゃったし、
私も来てって言えない。
一人になるのが怖いけど、
傍に居てって言えない。
それに、
次会った時は病気のこと言わなくちゃいけない気がして。
余計言えない。
こんな時に限ってママは、いない。
私から逃げるみたいに、友達と旅行。
前からの約束だけど、
今寂しがり屋の聖音ちゃんは卑屈なの。
病気の不安と孤独感が耐えられない。
――4日目の朝、やっと天也は来てくれた。
「ごめんな。ちょっと忙しくてさ。」
ごまかすように笑った。
嘘だってわかるよ。
来づらかったんだよね。
私が酷い事言ったから。
「ううん、大丈夫。
来てくれてありがとね!」
天也に合わせるように私も笑った。
ホントは大丈夫じゃないってバレないように。
「それより天也。私ね・・・。」
「言いたくなかったら言わなくていいよ。」
天也は私の言葉をさえぎり、続けた。
「聖音が言いたくなったら言えばいい。
一人で抱えきれなくなったら、
俺も一緒に背負うから。」
「天也・・・。」
「今すぐ言えとも、
絶対言うなとも言わない。
聖音は独りじゃないから。
一人で苦しむなよ。それだけ。」
ずっと堪えていた涙があふれ出した。
3日間の葛藤が。
ずっとどこかにあった孤独感が。
病気への不安が。
雫となって零れ落ちる。
あぁ、私、独りじゃないんだって。
天也と一緒だったら、病気も乗り越えられる。
ぐっと拳に力を入れた。
この人なら、私の愛する人は、
ちゃんと受け止めてくれる。
「天也、ちゃんと聞いてね。」
「ああ・・・。」
天也も私の決意を感じたのか、
真剣な顔をして私を見ている。
「私の病気は・・・白血病なの。」
「・・・・・。」
驚いた顔してるけど、黙ったまま。
「正式には、急性骨髄性白血病というの。
でも、骨髄移植っていうのをすれば治るんだって。」
天也の顔が青ざめていっている。
そうだよね。
治るってわかっても、白血病だもんね。
今でもすべての人が完治している訳じゃない。
わずかでも、死ぬ可能性もある。
でも、怖いけど、戦うしかない。
けど1人じゃないから大丈夫。
そう思いつつ下を向いた時―。
ガタンッと大きな音を立てて、天也の椅子が倒れた。
はっと天也の方を見ると。
天也が私を抱きしめてくれた。
「た・・・天也ッ!」
「俺、聖音を失うのだけは嫌だからなっ。」
天也は、涙を浮かべてた。
滅多に泣いたりしない明るい天也が。
私のために泣いてくれた。
「死んだりなんかしたら、
赦さないからなッ!!」
さっきよりもずっと強く抱きしめてくれた。
私も返すように、天也を抱きしめた。
そして、真っ白なベッドの上で、キスを交わした。
――これから始まる、過酷な戦いを勝つために。
病気には負けない。
絶対絶対負けない。
どんなに辛くたって。
きっと未来には良いことが待ってるから―。